ロジャーのいる夜 ( No.1 ) |
- 日時: 2007/01/26 03:43
- 名前: 結城由羅@藩王
- 「…で、どうして君がここにいるのかな?」
結城由羅藩王は、自分の寝室の床に毛布と枕を置いて寝支度を整えている環月怜夜団長を眺めつつ、尋ねた。
「見張りです」
一言返す団長に、かりかりと頭を掻く藩王。
「えーっと、何の?」
きっと睨みつけられた。
「夜這いしないようにに決まってるでしょう!!!」 「あー」
ぽむ、と手を叩いた。王宮の貴賓室に泊まっているロジャーの元へ、夜這い。
「それは気がつかなかった。ナイスアイデア」 「ナイスアイデアじゃありません!!!」
枕を投げつけられるのをひょい、と避ける。
「はっはっは、冗談に決まってるじゃないか」 「あなたが言うと冗談に聞こえないんです!」 「えー、ひどいなぁ」
にやにやしながら言う藩王。だから信用できないんです、と今度は毛布が投げつけられた。
「で、見張りで床に? どうせなら一緒に寝ればいいのに。広いよ、このベッド」
そう、無駄に広い。いわゆるキングサイズというやつだ。ついでにウォーターベッドだったりする。ぽんぽん、と叩くと、たぷたぷと揺れた。
「いーやーでーすー」 「ちぇ、可愛がってあげるのに」 「そういうこと言うからでしょうが!!!」
今度はサイドボードに置いてあった時計が飛んできた。
「うおっと」
目の前で受け取って、ぽんぽんとお手玉にする。
「危ないなあ」
ひょい、とサイドボードに戻すと、ふらりと部屋を出ようとした。
「どこ行くんですか」 「トイレー」 「私も一緒に行きます」 「つれしょん? 好きだねぇ」 「見張りしてるって言ってるでしょう!!!」
はっはっはっは、と笑いながら藩王は歩き出し、トイレへ向かった。数分後、出ながら団長が呟く。
「…ほんとにトイレだったんですね」 「他になんだと。…まあいいや、ついでにちょっと覗いていかない?」 「どこを?」 「ロジャーの お 部 屋 」 「あなたは!だから夜這いはだめって言ってるでしょう!!!」 「いいじゃん、ちょっと寝てる姿を見るくらい。ロジャーの寝姿、見たくない?」 「……………」
団長は考え込んだ。
「ちょっと見るだけですよ?」 「もちろん」
にやり、と藩王が笑った。そっと忍び足で貴賓室に近づく藩王を、真っ赤になりながら追う。
「ちょっと覗くだけですからね!?」 「しぃ」
きぃ、とドアが開いた。二人の目がその中の情景に点になる。
ロジャー…とその横に男二人。氷野凍矢摂政と、緋乃江戌人病院長。やはりキングサイズのベッドの中央に、何が悲しくてか男三人が密集して眠っていた。
「ううん、ううん、苦しいでござる…」
中央で、ロジャーがうなされていた。
「なんで…また」
こめかみを押さえる藩王。おずおずと団長が説明した。
「藩王が夜這いしないように、みんなで見張りましょうって。で、二人はこちらに…こんなことになってるなんて」 「まあ、確かに夜這いどころじゃないわな」
藩王はげらげらと笑うと、ぽんと団長の頭を叩いて促した。ロジャーの横で丸くなって寝る二人の顔は幸せそうだった。そんな夜があってもいいだろう、と、窓から覗く夜空を見ながら、藩王は呟いた。
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