このフォームからは投稿できません。
name
e-mail
url
subject
comment
トップページ > 過去ログ > 記事閲覧
【SS】鐘音騎士の苦悩
日時: 2006/12/12 19:58
名前: 十五夜@藩王 

鐘音騎士の行動が面白かったので小説にしてみました。
続くかどうかわかりませんが(笑)。

※※注意※※

本記述はフィクションであり、「アプローの涙」の設定に準拠し、多分に脚色されております。PLがこういう発言をしたわけでは決してありませんので誤解しないでください。

Page: 1 |

鐘音騎士の決意 ( No.1 )
日時: 2006/12/12 20:01
名前: 十五夜@藩王 

芥辺境国防衛戦が、よくわからないうちに勝利を迎えた後の頃である。出撃から帰還した川流鐘音騎士は、その胸を痛めていた。藩王がその執務室でうなだれているのを見たのである。

「金が無い…紅葉国と羅幻王国にどうやって金を返すか…」

芥辺境国防衛戦の出撃のために借金をしてまで出兵したために、資金が底をついたのである。いまや、属国扱い。次の出兵も危ぶまれる状況である。

鐘音騎士は非常に熱心な国民であり、国土防衛にあたっては不得手な筆と格闘しつつ防衛施設を設計し、作戦立案にあたっては現有データの収集・分析をおこなうなど、八面六臂の大活躍をしている。馬鹿と称される藩王に対してもったいない人材である。

その鐘音騎士は、しばらく悩んだあと顔をあげて決意した。

「国力増強のためにわんわん帝国へ行こう」

『探さないでください』という書置きとともに彼がいなくなったのは、翌日であった。書置きを見て、藩王はそっと微笑んだ。大神軍師もわんわん帝国に旅立った。新天地で国を作るという。

/ * /

「弱小国を死地に追いやりのうのうとしているような共和国のやり方にはついていけません」
「あのとき、あれはあれなりの理由があったのだ。近く戦闘があることも見えていた以上、多くの戦力は裂けなかったのだよ」

憤懣やるかたない、というように大神軍師は首を振った。それにしても、と唇を噛む。

「…藩王、一緒に行きませんか?共和国はもう先が無い。来ていただければ、優遇いたしますよ?」

藩王はただ笑った。

「申し出はありがく受け取っておくよ」

大神軍師は、何か言いたげに口を開いたが、結局何も言えずに頷いた。

「お待ちしております」
「ああ、そのときは頼む。新天地で達者でな」

名残惜しげに振り返るのへ、笑って手を振る。本来国民を死ぬと分かっている戦場へ追いやるような人間に王の資格は無い。しかし、紅葉国と羅幻王国の借りもある。そして、それでもなお国を愛していた。

/ * /

愛想をつかされても仕方がないと思う。だから、手紙を見てただ笑った。
鐘音騎士の修行 ( No.2 )
日時: 2006/12/12 20:18
名前: 十五夜@藩王 

わが国のために、世界忍者国のために、戦力を増強しなくては。そう、固く心を決めた鐘音騎士が行き着いたのは、わんわん帝国のとあるバトルメイド養成機関であった。

「修行はつらいですよ?」

髪の両側が巻き上げられ、ビン底の眼鏡を掛けた、執事然とした老人にそう言われて、鐘音騎士は即答した。

「構いません。耐えてみせます!」

その言葉どおり、彼は短期間の血の滲む様な修行に耐えてみせた。バトルメイド養成ノウハウを獲得し、無事一名のバトルメイドを獲得する。

「742 鐘音 1100 0 2 2 2 2 2 10 BM」

養成機関長が番号を読み上げる。自分の名前が呼ばれたとき、鐘音騎士の頬には涙が一筋伝わった。いけない、泣くなんて、とあわてて拭う。No.742の振られたバトルメイド「ミーコさん」は、その犬をつれて鐘音騎士の前にとまり、軽やかに一礼した。

「ご主人様、いつでも戦闘可能です」「わん!」

酷使でぼろぼろになった体を引き起こし、それでも鐘音騎士は誇らかに笑ってみせた。

「ええ、わが国に帰りましょう。わが世界忍者国へ」

犬の補給もなく、壊れれば終わりの1台きりのバトルメイド、それでも国にとっては貴重な戦力になるはずだった。帰ろう、私の国へ。わずかばかりの荷物を取りまとめ、世話になった養成機関長に挨拶をすると、にゃんにゃん共和国への道を戻り始めた。

----
参考資料:上級者向け・世界間設定掲示板 No.742 鐘音さん投稿記事

・バトルメード
ミーコさん

全長 1.7m
重量 65kg

眼鏡(伊達)をかけた目のきつい(結構気にしてる)バトルメード。
口数は少ないが、細かい事に気が付く為、掃除した後のホコリを見つけ出すのが上手。
それを無言で掃除した者に突きつけ、イジメる事に快感を覚えている。
しかし、泣き出されたりすると、とたんにオロオロし泣いている相手をぎゅーする。
その後はいつものお店に行き、二人で杏仁豆腐を食べる事となる。(彼女のおごり)
格闘術に長けており、射線を見切りながら相手に肉薄する。
その為服は余分な部分をパージして、可能な限りの軽量化と空気抵抗の軽減を計られている。
そして、速度を得る為に加速ブースターを背負い、ブーツには車輪が設けられている。
獲物は超硬度ホウキ刀で、相手をすれ違い様に切り捨てる。
イヌミミセンサーは前方の敵を捕らえる事に特化させており、狭い場所では有効だが、広い場所ではその機能が発揮させ難い。
なお、彼女はかくれんぼの達人であり最高14日間もの間隠れ続けた実績をもつ。
ただし、14日に空腹の余り昏倒して見つかった事は公然の秘密となっている。(勿論かくれんぼは1日目に終了している)
鐘音騎士の選択 ( No.3 )
日時: 2006/12/16 13:35
名前: 十五夜@藩王 

鐘音騎士がそのニュースを聞いたのは、亡命方法を探してわんわん帝国の街をうろついているときだった。

「戦争だってさ」
「シロ宰相が大盤振る舞いで、各藩国に5億出して募ってるそうだぜ」
「それで、何のためなんだい?」
「瀧川、とかいう人物を助けるためらしい」
「誰だい、それ?知らないなぁ」
「えらい人の考えることがわかるもんかい」
「各国が参加表明をこぞって出してるが、戦況は厳しいらしい」
「へえ、大盤振る舞いでもきついのかねぇ」
「急な召集だしな。対応できない国もあるらしい」

戦争…そして瀧川、その名前には聞き覚えがあった。いや、その名は彼にとって守るべき人物のひとりであった。萌えを守るために戦うと、彼は誓ったのだ。彼の故国で。戦力が足りない…足りなければ負けてしまうかもしれない。

「どうしよう…」

彼は物思わし気に、傍らのバトルメードを見た。伊達眼鏡のバトルメードが首を傾げる。

「どうされましたか?ご主人様」
「ミーコさん…」

自由戦士として出撃することは、できる。しかし、一度出撃してしまえば、ミーコさんは動かなくなる。わんわん、とその足元で犬のばうわん(仮名)が鳴く。そう、このばうわん(仮名)も失われてしまう。永遠に。

目を上げて、路肩の電子掲示板を見る。現状での戦力比が表示されていた。足りない。鐘音元騎士は、首を垂れじっと考えていた。そして、顔をあげる。

「ミーコさん、出撃してくれるかな?」
「もちろんです、ご主人様、よろこんで」

ミーコさんはにっこりと笑った。ろい=ばうわんが、尻尾を振って、わんわん、と吼えた。涙が、こぼれそうになった。
鐘音騎士の帰還 ( No.4 )
日時: 2007/01/07 06:04
名前: 十五夜@藩王 

その日、結城由羅藩王は、空を見ていた。わけもわからないまま敵に追われ、第5世界へ国ごと逃亡してきた。国土も作り変えられ、空の有様も変わった。見上げる星空も、第7世界で見ていたものとは異なる。

「それでも、輝きは同じか…夜が深ければ深いほど、燦然と輝く希望の光は変わらない…」

冬でも穏やかな森の空気がしっとりと頬を撫でる。ふと、ベランダから下に目をやって、王宮へ向かう道に誰かがいることに気がついた。目を細め、身を翻す。

階段を駆け下り、入り口から出ると、入りあぐねていた人影を見つけた。驚いた人影が荷物を取り落とす。

「陛下…!」

鐘音騎士が、その場で立ちすくんでいた。黙って出奔したあげく、結局何も持ち帰れなかった。その事実が鐘音騎士を打ちのめして、入るのをためらわせていたのだった。

何度か口を開いて言葉を出そうとするも失敗して、唇を噛んでうなだれる。その様子を見て、藩王は微笑んだ。前に進んで、鐘音騎士の手を取る。

「お帰りなさい、友よ」

鐘音騎士が、驚いて顔を上げた。

「陛下、私は…!」

ひざまづこうとするのを、笑っておしとどめる。

「長い旅行だったね。疲れただろう?」
「りょ、こう…」

戸惑うのへ微笑を深める。

「うちの国も大騒ぎでね。知ってると思うけど、ひどい戦いで、わんわんもにゃんにゃんもごちゃまぜになって逃げてきてね。元に誰がどこにいたとかさっぱりわからない状況らしいよ」
「そう、なんですか」

途方に暮れたように呟く鐘音騎士。

「だから、まあ、堅苦しいことは抜きにして、無事の帰還を祝おうじゃないか」
「は、はあ…」

釈然としない顔の鐘音騎士へ、はははと笑う。

「共和国は過去は気にしない、そうだろう?共に和して自由の旗に栄光を与える者なら、それは仲間であり友だ」

鐘音騎士はようやく笑った。

「そう、ですね…」

そして、ほろ苦く微笑む。

「色々とお話したいことがあるんですが、聞いていただけますか?」
「もちろん。…いいワインがあるんだけど、飲むかな?」
「ええ」

荷物を拾って、王宮の入り口をくぐる。くぐりながら、鐘音騎士はそっと口の中で呟いた。

(ただいま…)

ようやく、彼は帰ってきたのだった。彼の故郷へ。

/* Fin */

Page: 1 |