【SS】人狼領地建国前夜
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- 日時: 2006/12/13 02:36
- 名前: 十五夜@藩王
- 時系列的には、鐘音騎士の苦悩の前あたりになります。
※※注意※※
この作品はフィクションです。リアルPLとは関係ありませんのでご注意ください。 ----- 「頑固なお方だ…」
大神軍師、いやもはや元軍師だが――は、くっくと笑いながら宮廷の廊下を渡っていた。柱の影から濃紺狼牙元情報局長がその前へすっと姿を現す。彼はとうに大神元軍師についてわんわん帝国へ行くことになっていた。悩まなかった…わけではないが、この男の作る未来が見たいと思った。
「無理だと言ったろう」
それへにやりと狼のように(それは形容でもなく真実であったのだが)、笑いかける大神元軍師。
「何事もやってみなければ始まるまい」 「酔狂なことだ」
濃紺元情報局長は、しかし何も…と言いかけて肩をすくめた。廊下の端から人影が現れたからである。
「環月怜夜騎士団長」
その人影にゆっくりと礼をしてみせる大神元軍師。
「その呼び名はやめていただきたい。私は何もしていないのですから」
藩王に無理やり押し付けられた肩書きに居心地悪そうに身じろぎをする、怜夜。
「このたび、私めは職を辞して、わんわん帝国で一旗上げようと思います。人狼領地、という国を作る手配が済んでおります。いかがですか、私と共においでになりませんか?」
言いながら手を取ろうとするのを、さりげなく払いながら、怜夜は微笑んでみせた。
「お誘いはとても嬉しいのですが、私はろにゃーと命運を共にすることに決めております」 「それは残念。しかし、お心がお変わりになったら、いつでもおいでください」
言いながら素早く怜夜の手を取るとその甲にキスをする。一瞬遅れて平手が飛ぶのを、大神元軍師はからからと笑いながら避けた。
「…ただの女好きか」
濃紺元情報局長がぼそりと呟く。
「言ったろう?何事もやってみなければわからん、と」
まったく、と飽きれた顔をする怜夜に最後の挨拶と手を振ると、大神元軍師――いまや若き人狼領地の藩王となった大神重信は、宮廷の入口で自分を待つ仲間、鯵屋槌史元宮廷画家とあ〜やん元騎士の元へ歩いていった。自分を待つ、新しい未来へと。
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