【SS】決戦前夜
|
- 日時: 2007/03/18 00:05
- 名前: 久堂尋軌
- 「2000に作戦準備室へ全員集合せよ」
夜になってこの命令を受け、任務に疲れて眠そうな目をこすりながら新人のシコウ・東・ダースの三人は覚えたての作戦準備室の前に集まっていた。 「何するんだろう…こんな時間に…」とシコウが二人に話そうとした瞬間に明るい声がさらに後ろから聞こえてきた。 「ほらほら、新人の三人も中に入った入った。これから大事な話があるんだからね」 そう言って、三人を押し入れるように部屋へと入れたのは戦時中にも関わらずに手広く趣味の時間を満喫しているうっかり摂政こと凍矢であった。
摂政に押し入れられる形で三人は部屋へと入ってみると揃って驚いた顔に変わっていった。 一つの豪華な椅子の前に向かい合う形で多くの影が規則正しい列の椅子に座っている姿が見て取れたのだ。 摂政の手が後ろに空いていた三つの席に三人を促すと後ろの空席はなくなり、摂政は一つの豪華な椅子の隣に空いていた席に座ると一言。 「陛下、準備ができました。全員集合です。」
その言葉と共に上手から藩王である結城由羅が姿を現した瞬間にどよめきが発生した。 普段は気さくで世界忍者の服装を着ている藩王が、滅多に見せない指揮官用星見吏族仕様の戦闘服をきていた所為であった。 だが、それだけではない。 顔の表情はいつもの温厚な顔とはちがい、凛と引き締まりまさしく(戦の乙女)ワルキューレの名が相応しい姿だった。
「みんな、今日はよく集まってくれた。いよいよ明日はわが国の存亡をかけた大防衛戦の幕開けだ。だが、君たち一人一人の命に比べれば国家の存亡など些細なことでしかない。だからこそ勝たねばならぬ。しかし、今回の我々は今までにないほどの生命の危機的立場にある。そこで…今から一分間私は目を瞑る。その間にいなくなっても私は処分など考えない…君たちの判断に任せるので…自由にしてくれ」 その言葉と共に藩王は静かに目を閉じたのだった。
…一分後…
静かに開けた藩王の瞳に映ったものは25人誰一人欠けることなく座っている騎士団である。 静かに頭を下げた藩王の瞳にはうっすらと光るものがあったが誰も何も言わなかった。
「陛下、今のこんな美味しい状態で逃げるような人はここにはいませんよ。ロジャーを守るんでしょう?」 「そうですよ。だから絶対にこの戦い勝ちましょうね」 そう言って騎士団長である怜夜と腹心の月代が声をあげた。
「ほら、私の言ったとおりじゃないですか。だから枚数は変更してないですからね」 そう言ってしっかり摂政こと、みはえるが傍に用意してあった風呂敷を広げた。 そこには人数分の小さな白皿と神酒の入った徳利があった。
端の列からカヲリがすっと立ち上がると、白い皿をみんなに配っていく。全員がその白皿をもつと、今度は藩王自ら徳利をもち、一人一人に少量ずつ注いで回っていった。そして全員に注ぎ終わると元の椅子に座り、カヲリから皿を受け取り、凍矢摂政よりお神酒をもらうと顔がさらに引き締まり、叫ぶようにして
「諸君!みんなの命は私が預かった!この国の未来のため!この戦は絶対勝つ!!一心不乱の友情のために!」 『一心不乱の友情のために!!』 そう言って藩王が一気にお神酒を飲み干すと騎士団全員も一斉に叫んでお神酒を飲み干した途端、部屋にいた全員が白皿を床にたたきつけた。
「全員、第一種戦闘配置につけ!通商局担当は12時間以内に隠し里の住人全員を北の端にまで運ぶこと!時間はないぞ!」 「はっ!わかりました!お先に!」
そう言って尋軌が立ち上がるとあっという間に部屋を出て行った。 しかし、外に出た瞬間にあるものを見た尋軌は思わず声を漏らしてしまった。 「あ…ロジャーさん…」
そこには尋軌に濡れた頬を見せないように みんなの様子を伺っているロジャーの姿であった。
|
|