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【SS】明日への誓い
日時: 2007/03/19 20:38
名前: 結城由羅@藩王 

イベント59の戦闘後、チャットより切り出して編集。

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戦いの傷跡 ( No.1 )
日時: 2007/03/19 20:39
名前: 結城由羅@藩王 

世界忍者国の王宮は、見るも無残な状況になっていた。場内乱戦で死に物狂いで戦った結果、あちこちの部屋で天井は落ち、壁には生々しい弾痕がいくつもいくつも穿たれていた。

王宮ロビーに立っていたロイ像にも弾痕が穿たれ、倒れされ、瓦礫がその上に乗っていた。

世界忍者国の歌姫と名高い月代騎士が、トモエリバーから降り立ち、王宮に駆け込んでそれを目にして泣き崩れた。

「ふえー・・・」

鐘音騎士らぐったりと座り込んでいた歩兵部隊の国民が、それに気がつき立ち上がった。無言で瓦礫を取り除き、ロイ像を立て直す。

「はいはい、泣かない泣かない」

尋軌騎士が月代騎士の頭を撫でる。泣き声がいっそう大きくなって、尋軌騎士は途方に暮れたように撫で続けた。

同じくトモエリバーから降り立ち、ゆっくりと歩いてきたみはえる摂政が、そんな国民の様子を見てぐっと唇を引き締めた。鐘音騎士が、彼に気がついて、ぽつりと呟く。

「ロジャーが死にました」

そして顔を隠すように項垂れる。涙がぽたりと床の瓦礫に落ちた。

「状況は確認している。藩王をはじめ、みなの心中察するに余りある」

沈痛な声でそれへ声をかけるみはえる摂政。言葉を切り、息を吸い込んで続けた。

「それでも、言わせて欲しい。…生き残ってくれて、ありがとう」

鐘音騎士が顔を上げ、そして顔を歪めるようにして笑った。

「ありがとう、摂政」
「摂政…」

それまで、涙を見せなかった尋軌騎士が言葉に詰まり、目元を拭った。

「大丈夫だ。手はいくらでもある。またロジャーに会いに行こう。みんなでね」

絶望の底から立ち上がる希望の響きを声に乗せて力強く言う。

「ですね」

みはえる摂政の影に隠れるように立っていた凍矢摂政が頷きつつも、自分の手に顔をうずめた。

「頭と心がばらばらなんですよ。頭では勝つことしか考えてないんですけど、さすがに凹んだだけですよ」

「そうですね」

マルチフィクサー筆頭として防衛戦における技術指揮を一手に引き受けていた可銀整備工場長が、疲れた顔をあげて頷いた。

「藩王にも申し上げたい」

それらへ頷き返したあと、心配げに藩王の姿を探す。ロジャーが死んだら生きてはいけないと言っていた藩王のことが一番心配だった。
明日への誓い ( No.2 )
日時: 2007/03/19 20:45
名前: 結城由羅@藩王 

「聞いている。ありがとう」

ロビーの奥から声が響き、藩王がふらりと現れた。疲労の影が色濃く浮いているが、その目の光はまだ消えてはいなかった。

「あきらめる気は無い」

濃い灰に近い黒髪をかき上げる。頬には涙の跡があった。

「今はまだ涙も乾かないが、それでも顔を上げていこうと思う」

自分に言い聞かせるように言う。みはえる摂政は、藩王の前で膝をついた。

「この身尽き果てるまで、どこまでもお供いたします」

それに倣うようにして、可銀整備工場長が跪く。

「次のオーマ戦はお供いたします」

鐘音騎士がそれに続いた。

「く。次こそは負けません」

「ありがとう。何よりもみなのその気持ちが嬉しい」

藩王がほろ苦く微笑みながら、彼らの手を取って立ち上がらせる。入り口に立っていたリワマヒ国からの援軍、東 恭一郎騎士、ダース騎士、シコウ騎士らが、その光景を見てもらい泣きをしていた。

(いい話や・・・(涙)) と東 恭一郎。

(うん(ほろり)) とシコウ。

落ちた天井から、眩しいほどの青空が覗いていた。

「青空の下の誓いだな」

それを見上げてみはえる摂政が笑った。しくしくと泣きじゃくる月代歌姫を振り返る。

「月代、その涙は再会の為に取っておけ」

「月代さーん」鐘音騎士が月代騎士の肩を抱いた。

「ぴー」

月代騎士は紙を取り出して目元を拭った。空を見上げ、藩王が拳を握り締める。

「必ず、ロジャーは取り戻す」

「御意」

みはえる摂政が胸に手をそえて頭を下げる。

「了解です。 ロジャーと友の為に!」

可銀整備工場長が元気付けるように言った。

「御意です陛下ー」

ぐすぐすと月代歌姫が鼻をすすりあげる。

「ええ、私は陛下の剣であり盾にございます。お好きにお使い下さい」

鐘音騎士はいつもの調子を取り戻したように熱く声をあげた。

「ロジャーのためならなんだろうと惜しみませんよ」

凍矢摂政が獰猛に笑った。顔を戻し、彼らを見回して、頷く。

「では、泣いてる暇は無いな。復興を。国民を助け、強くなろう」

「ええ」みはえる摂政。

「ロジャーのために」藩王が頷く。

「では早速復興計画の段取りを……」みはえる摂政が笑った。

「はい……で、さしあたって今回の戦いのオツカレサマでしたメッセージを国営放送で流そうかと思うのですが…」

月代騎士がぐずぐずと泣きながらもけなげに言う。

「皆、復興だー。剣よりもまず鍬をとれー」鐘音騎士。

「まずは、ロジャー像と王城そして畑ですね。」可銀整備工場が言って、はたと城を見回す。

「王宮も、建て直しのついでに増強しないとですね」ため息をつく。

尋軌騎士が頭をかいた。

「あ、すいません。俺と可銀さんで天井穴あけちゃって」

「とうもろこし飛んじゃっただろうしねぇ・・」

月代歌姫が杏騎士のことを思いながら涙ぐんだ。今頃、とうもろこし畑の前で途方に暮れてるかもしれない。

「忙しくなるな」藩王がほろ苦く微笑んで、頷いた。

「ですね」可銀整備工場長も苦笑した。

「ええ、この身が擦り切れるまで」鐘音騎士はにこりと笑う。

「月代不器用なので体力勝負してます」ぐずぐずと月代歌姫。

「田辺ちゃんにあやかっててるてる坊主でもつくろうかな・・」ぐすっと鼻をすすった。

「仕事に追われている間は、暗い考えを持つ暇も無くなりましょう。というか、そんな暇は与えない」

昂然と顔をあげるみはえる摂政。

「さあ諸君、会議を始めようか」

その様子を見て、藩王が声をあげて笑った。

「ははは、しっかり摂政は心強いな」

そして、笑いを止め、真面目な顔になる。

「立ち上がろう明日のために」

「ええ、明日のために」みはえる摂政が唱和した。

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