ドランジを求めて ( No.1 ) |
- 日時: 2007/03/25 20:57
- 名前: 結城由羅@藩王
- 榊朱利―――彼女は、ドランジのファンだった。誰もが知るような熱烈なファンだった。
その彼女がなぜか世界忍者ロジャーを追い求める世界忍者国にいた。移民の機会がなかったわけではない。藩王直々に呼び出され、
「うちでドランジを招聘することは難しい。他の国に移ってもいい」
もしかしたら彼と敵対するかもしれないとさえ藩王は言った。
その言葉を聞いたとき、彼女はうずくまって吐血した。それは苦悩が色となり、言葉の変わりに口から漏れた彼女の思いその物だった。数瞬の後、彼女の口からは、吐いた血よりも赤い色をした言葉が、紡がれた。
「……好きな男は、そりゃ大事だ。しかし、もっと大事なもんってのがあるだろ」
彼女は乱暴に口をぬぐい、立ち上がり、叫んだ。
「そうだ、引けない時ってのがあるんだ! それが私の道だ! 私は、女王陛下にこの身を捧げた! 私はついていくよ! 私は貴女の国民だっ!!」
力強く、その目には炎を燃やしていた。藩王は深く頭をたれ礼を言った。
「ありがとう…ありがとう」
と。
/ * /
一瞬のようで長い時が流れ、世界忍者国で大きな戦いがあった。その中でロジャーは死に、ドランジは姿を消した。ロジャーの復讐のために。
それを知っても、彼女は涙するしかできなかった。しかし、藩王は彼女を見つけ、声をかけた。
「行きたいなら行ってもいい。いやむしろ、行ってくれ」 「探しに行っても、いいのですか」 「もちろんだ」
愛する男を失う悲しみを良く知る藩王に、否の言葉もあろうか。彼女は滂沱の涙を流すとただ感謝の言葉を述べた。
「ありがとう、ございます」
と。
今彼女は、舞踏子のアイドレスを纏い、愛する男を追い求める。何かをせずにはいられない。たとえ失敗に終わっても、やるだけのことはやったと言いたいから。
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