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【SS】友誼の名の下に
日時: 2007/03/25 23:05
名前: 結城由羅@藩王 

わが国からドランジ捜索に駆けつける国民の様子です。

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脱藩前 ( No.1 )
日時: 2007/03/25 23:07
名前: 結城由羅@藩王 

世界忍者国の国是は「友誼」である。友のために身を投げ出しても義を貫く、それは理想と仰ぐ世界忍者ロジャーの生き様であり、絶対のものであった。バカと言われようがなんだろうが、友誼のためならば全てをかける。そして、今友は苦難にあった。

「ロジャーを助けに走ってくれたドランジを見捨てるわけにもいくまい。友誼はわが国の国是。行って来てくれ」

結城由羅藩王からいきなり呼び出されて目を丸くしていた環月怜夜赤の騎士団団長は、ふっと微笑んだ。

「お役に立てるならもちろん」
「そう言ってくれると思ってたよ」

藩王も微笑む。

「榊朱利宮廷技手が先発している。合流してやってくれ」
「わかりました。彼女はドランジのことが好きですからね。彼女の手助けにもなれるなら嬉しいです」
「そうだな」

と頷く。そこへドアをバーンと開けて月代歌姫が飛び込んできた。

「ドランジ探しがあるって聞きました!」

彼女は、ドランジがいなくなった後、泣きながらレンジャー連邦へ詫びに行ったのだった。もちろん、レンジャー連邦の皆は彼女を暖かく迎え、むしろ慰めてくれた。それが、とても心に痛かった。

「ああ、ちょうどよいところに」

藩王は頷いて彼女を手招きした。何か言いたそうにしている月代歌姫を制し、言葉を継ぐ。

「友誼はわが国の国是。ドランジの友誼には友誼をもって報う。行って来てくれるか?」

微笑みながら言う藩王に、月代歌姫は大きく頷いた後、敬礼した。

「御意。

 あの時、彼女達は気にするなと言いましたが…
 私自身の矜持と友宜の為、行って参ります。」
「頼む」

そして、ふと扉のところでもじもじしているカヲリ宮廷技手に気が付いた。

「あの…!」

カヲリ宮廷技手が、藩王に問うような視線を向けられ、顔を真っ赤にしながら叫んだ。

「わ、私も、行っていいですか?!」

藩王は一瞬目を丸くし、そして大きく破顔した。

「もちろんだとも」

さらにその影に小さな人影がいるのに気が付いて声をかける。

「飛乃姫…か?」

藩王に声をかけられるのに慣れてない少女は、ちょっと小さくなった後、思い切ったように姿を見せた。

「私も…行きたいです」

その言葉に、藩王は一瞬躊躇を見せた。この少女は14歳、戦場に送るには幼すぎはしないか。

「私も、この国の国民です。そして、この国の「友達を見捨てない」という信念を信じています」
「なるほど…」

それでも、藩王は迷った。そんなに甘いゲームとは思えない。だが、ここで彼女の願いを無碍にするわけにもいかない…。

「わかった…だが、決して環月団長たちから離れないこと。分かったね?」

しばらくの逡巡の後、ため息とともに許可を出した。

「はい!」

少女の瞳がきらきらと輝いた。困ったようにそれを見つめて、団長らに目を移す。

「この子を頼む」
「はい」
「もちろんです」
「わかりました」

三人ともちょっと困ったような顔をしながら頷いた。デスペナルティのゲームがこれから彼らを待っているのだった。それでも友誼のために、友を助けるために、彼らは行くのだ。
出立前 ( No.2 )
日時: 2007/03/25 23:29
名前: 結城由羅@藩王 

「では、レンジャーの皆によろしく言ってくれ」

王宮の前で脱藩者を見送る藩王の言葉に、環月怜夜団長は頷いた。

「ええ、蝶子藩王や、ミサゴ摂政に伝えます」

そう、彼らは藩王や団長の古い友でもあった。かつて長い戦いを共に戦ってきた仲間だった。

「豊国 ミロ…さんや浅葱空さんたちにもな」
「ええ、我らの妹に久々に会えます。藩王のお言葉はちゃんと伝えますよ」

今は国を違えども一度は姉妹と呼んだ彼らのことは決して忘れたことはなかった。

「では、行ってまいります」

軽く手を振ると、団長は黙って様子を見ていた仲間に頷きかけ、きびすを返した。急いでレンジャー連邦へ行かなければならない。

「待って!」

その背に、切迫した声がかけられた。驚いて振り返る、と、逢瀬みなお騎士が息を切らせながら走ってきていた。

「わたしも…私も連れて行ってください」

ぜいぜい、と肩で息をしながら、藩王を見る。

「戦場で何もできなかったことが…悔しかったんです。もっと、何とかできたんじゃないか、と。ずっとそればかり考えていました。お願いです。もう、後悔したくない。行かせてください」

一気に決壊したかのように苦悩を吐き出す。ああ、と藩王は頷いた。

「こちらから頼みたいくらいだ。行ってきてくれ」

ぽむ、とその肩に手を置く。

「ありがとう…」

はらり、と逢瀬みなお騎士の目から涙がこぼれる。一瞬後、慌ててそれを拭うと、逢瀬みなお騎士は敬礼した。

「いえ、ありがとうと言うのは私の方です。世界忍者国の名に恥じぬ働きをしてくることを誓います」

藩王はただ頷くと、団長の方を仰いだ。

「というわけで、彼女も頼んだ」
「ええ、もちろんです」

逢瀬みなお騎士は、もう一度無言で敬礼をすると、自分を待つ仲間の下へ走っていった。

「生きて帰ってきてくれ…」

遠ざかる彼らの背を見送りながら、藩王が呟く。その願いの篭った言葉は一陣の風に攫われていった。

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