Re: 【SS】羅幻王国からの婿入り ( No.1 ) |
- 日時: 2007/05/07 14:15
- 名前: 結城由羅@世界忍者国
- それはとある酒の席のことだった。カードゲームの罰ゲームに、負けた人はわが国にということを言い出した人間がいた。そして、その場にいた帝国宰相が、その国の女性藩王に婿入り、と言い出した。わんわんの宰相がにゃんにゃんの藩王らとなぜ飲み会をしてたのかはおいておく。
ともかく、羅幻王国の摂政、蓮田屋 藤乃はその席で負けた。死に物狂いの宰相に、負けた。
そして今、彼女はその国――世界忍者国にいる。王宮ロビーのソファーでお茶を供されながら、口を開いた。
「しかし、私は女なのですが」
約束は約束、と暗澹たる表情で彼女は言った。西国人+整備士+整備士+名整備士+吏族のアイドレスをまとう彼女は、食事により外見+5を持つ美女名整備士である。
「大丈夫です。うちの藩王は両方いけますから」
極めて真面目に宣言する環月怜夜騎士団団長に、藤乃は口に含んだ紅茶を吹きそうになってむせた。
「げほ、ごほ、がほ」
涙目で、言われた当人――結城由羅藩王を見てみる。と、彼女はにやにやしながら怜夜団長に抱きついているところだった。
「イヤダナァ、女性は君だけだよ(はぁと)」 「うぎゃー、抱きつかないでくださいーーーーー」
げしげしげしげし、と殴られてあうあうあうあうとうめく由羅藩王。藤乃は目をぐるぐるさせた。
「あの、彼女がいなくなると困るのでご勘弁ください」
付き添いか心配してか共に表敬訪問に訪れた、羅幻雅貴――獅子心王とも呼ばれる少年の姿をした伯爵夫人は、その名に反して優しく懇願した。きゃっきゃと喜んでいた由羅藩王が、こほんと咳払いして真面目な顔になる。
「ああ、いやいや、他国の摂政を無理やり頂くなんてことはできませんですよ」
雅貴藩王は明らかにほっとした顔で礼を述べた。
「ありがとうございます」 「ええ、酒の席での冗談ってことで。代わりというわけではないですが、整備にご協力いただければ助かります」 「ええ、それはもちろん聯合国としてぜひご協力させていただきたいと思います」 「ありがとうございます」
笑う由羅藩王の隣で、怜夜団長が不満そうに呟く。
「お婿さん欲しい…」
由羅藩王が振り返って、突っ込む。
「自分の婿を先に探しなさいよ」 「いえ、私は神殿で神の嫁になりますから」 「うちの神殿の神はロジャーだよ。ロジャーの嫁になるんだね」 「…ロジャーは神じゃないもん」
口を尖らせた怜夜団長を眺めて、同席しながらひっそり紅茶を飲んでいた戌人病院長が微笑んだ。
「ロジャーは神だと思いますよ」 「うんうん」
うっかり摂政こと凍矢摂政は神殿長としてロジャーを祭っているので当然のように同意した。
「団長ならロジャーのお嫁さんにぴったりですよ」 「ちがーう!!!」
絶叫する怜夜団長を眺めながら藤乃は苦笑した。少なくとも楽しい滞在にはなりそうだった。
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