: ( No.1 ) |
- 日時: 2007/05/30 22:49
- 名前: 緋乃江戌人@世界忍者国
- 国の者達は皆家族だ。何処の国にもあるように、そんな意識は世界忍者国にもある。
むしろ、その意識は贔屓目に見て他の国よりも断然強い。 しかしながら、その世界忍者国の家族達の中に、とりわけ、 それぞれを「姉さん」「兄さん」等と家族の呼称を用いて呼ぶ者達がいた。 二女二男で構成されるその者達は通称、ロイフリークス四姉弟。 血ではなく、萌えで繋がった者達。 だからその意味で、彼女、環月怜夜は、後方待機で戦闘後に他の国民から知らされたのであっても、 彼の訃報を聞いた最初の「家族」だった。
彼女は、末弟たる氷野凍の遺骸に抱きつきながら、 崩れ落ちるようにその場に座り込み声にならない嗚咽を上げた。 嫌な予感はしていた。その前から突然、弟の叫び声を聞いたような気がして、 胸が苦しくてたまらなかった。あまりにそれが酷いので医務室で横になっていた彼女が、 耳に挟んだ情報―――『サターン他一名死亡。詳細不明』。 元々白い彼女の顔から、一層血の気が引く。
サターンさんがいたのは確か、弟や、仲間達がいる部隊ではなかったか。
布団から跳ね起きようとするも、身体が鉛のように重い。 まるで、仲間の痛みが彼女にもそのまま伝わっているかのように。 そして、そのまま気を失った彼女が次に目覚めたとき、 彼女は、頭の中で否定し続けていた可能性を、目の当たりにしたのだった。
「―――――――」
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思いは、届く。 アイドレスの唯一の法則。 そして、それは世界が断絶されていても、悲しい思いであっても、もしかしたら。 それはそれほどまでに、深く深く、身を切り裂くような心の痛みだったから。
団長の―――妹の泣き声が聞こえた気がした。
飲みかけていたお茶に、水滴が落ちる。どこから?と思って探ってみたら、 自分が泣いているのだと、長女たる結城由羅は知る。 自分が泣いていることを意識したら、急に、胸にぽっかりと穴が開いたような、 悲しい気持ちが溢れてきた。
(続く)
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: ( No.2 ) |
- 日時: 2007/05/31 00:18
- 名前: 緋乃江戌人@世界忍者国
- (あれ、おかしいな・・・)
藩王たるもの、人前で涙するなど。しかも、突然。 傍にいるのが弟だけだからいいものを、とそんな思考を片隅でしながらも、 よく分からない悲しみに涙は止まらない。 彼女はいま、中央病院の院長室に休憩に来ていた。 その部屋の主たる弟、緋乃江戌人は、今彼女が据わっているソファの 後ろにある自分の机で、書類整理をしている。 ばれていたら気恥ずかしいなと思いながら、そっと後ろを伺ったのだが――――
「イヌヒト・・・・・・泣いているの?」
由羅は、驚いて、声をかけた。 弟は、わけが分からないという困惑の混じった悲しげな表情で、涙を流していたのだ。 はっとした表情で彼が顔をあげ、その細目が驚愕に見開かれる。
「今、怜夜姉さんの声が・・・・・・・・・姉さんこそ、何故―――」
そして、お互いの瞳を見た瞬間、息を呑む
「「――――!!!!!!!!」」
本来、知るはずもない、そして知ってはいけない事。 認めてはいけない事。 考えてはいけない事。 それを二人は、漠然と、「家族」の直感で悟ってしまっていた。 そして、それはお互いの表情にも見られて、だからそれはもはや『確信』とまでもいえるような。
末弟に、何かがあったのだ。
喉が、心が、悲鳴をあげる。 二人は否定する。 否定する。 否定する。 そんなはずはない、そんなことがあってはならないと。 お互いの涙にぬれた顔を見つめながら、彼らはそう否定し続ける。
いつの間にか降り出した雨とともに、雷が、静寂に響く。
リンクゲートが開いた時、現実は無常にも最悪の形で彼女達に訪れる事になるのだった・・・。
(続く、かもしれない)
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