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【SS】あの晴れた空に…
日時: 2007/06/01 13:46
名前: 双葉さくら 

広島での戦いはひと段落着いたと知った。
だが私は途中からの記憶がない。私は長い間目を瞑って居たようだ。

「…っ」
体の彼方此方が痛い。声もあまり出ない。
私が瞑っていた目を開き最初に見た画は…同じく彼方此方に傷を負ったしっかり摂政ことみはえる摂政の姿だった。

「…摂政…?」

体を起こし摂政の姿を見て次の私は言葉を失った。
みはえる摂政は何かを必死に堪えていたのだ。すぐにそれが涙だというのは解った。

私はその場でもう一人の摂政、凍矢摂政を目で探すが見当たらない。
どたばたと忙しそうにしている医療班の一人に声をかける。

「あの…さ…私の仲間のところへ…案内…して」

一人で立つことも本当は無理。でも事実を確認しに行かなければならない。
その気持ちだけで立っているのだ。

医療班の人に案内されて私は目を疑う光景が広がっていた。
彼方此方に無数の傷を負った凍矢摂政が横になっていて彼の周りには小さな花が置いてあり、そばに居る人々は涙していた。

私は彼に近づき、そして触れた。

「……凍矢摂政いつまで寝てるんですか?またうっかり発動…ですか?」

わかってはいたんだ…みはえる摂政の涙を堪える姿とあのぽっかりと空いた何かで…。一人欠けているという事に…。

「…凍矢摂政生きてるよ…。ほら、生きてるでしょ?!ねっ?!」

私はそう言って医療班の人に凍矢摂政の手を持たせるが…医療班の人は俯きながら首を横に振るだけ。

私はその場から離れ再び横になり目を瞑った。

しばらくして太陽の光が目を開けといわんばかりに眩しく輝く。
ゆっくりと目を開けて、体を起こし、状況を把握しようと話を聞きに行った。

−青の方々と合流したことにより士気が上がり敵を倒し追い返したこと。
 そして、この戦いで尊い命が幾つも奪われたこと。

まただ…またなんだ…私はちっぽけでなにも出来なかった…
あの時から変わってない…でも私は泣けない。
あの時心に決めた私の誓いだ…
涙は悲しみを呼ぶ…だから泣けない。

「みはえる摂政、陛下と連絡取れましたか?」
「ああ、いま先程な…」
「そうでしたか…」

小さな沈黙のあと私は言った。

「あ、そういえば…みはえる摂政…知ってますか?」
「何をだ?」
「凍矢摂政は生きてますよ。そして見てるんです、私達の事。私達の目には映ってないのかもしれないだけで…きっと見てます」
「…」
「だから私泣きません。泣いたら凍矢摂政心配しちゃいます…だから…笑顔忘れたくないんです」

みはえる摂政はそうだな…と漏らしどこか遠くを見つめた。

「……強いな」

晴れた空に広がる雲と太陽を見つめながらみはえる摂政は言う。

「だってうっかり摂政ですから。うっかり戻ってきますよ?」

私は笑って言う。本当の笑顔ではないけれど…。


あの日あの時の事を私は一生忘れない…。
メンテ

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