紆余曲折 ( No.1 ) |
- 日時: 2007/12/24 20:09
- 名前: 結城由羅@世界忍者国
- 世界忍者国藩王、結城由羅はため息をついて手元を見た。クリスマスプレゼントが贈れると聞いて、慌てて編み始めた赤い毛糸のマフラーが、今10cmほど。どう考えても間に合いそうに、ない。
「編成とか、お歳暮企画、とか忙しかったからなぁ」
いや、そもそも2日じゃ間に合わないだろう、とはたと気がつく。
「はんおーさま、どうされたんですかー?」
お歳暮企画でロビーに設置された須田さん用の箱をチェックしていたひろき摂政が、そんな藩王の様子を見咎めて、声をかけた。慌ててマフラー…の残骸を袋に突っ込む藩王。ちょっと頬が赤い。袋からはみ出した編み針を見て、にやりと笑った。
「はんおーさま、乙女ですねぇ」
「な、なんのことだ!」
こほんと咳払いをすると、由羅藩王はごまかした。
「たまに指の運動をだな…」
「まあそういうことにしておきましょう」
ひろき摂政は、にやにや笑いながら肩をすくめた。むう、と由羅藩王が苦虫を噛み潰したような顔をする。そして、ひろき摂政の手元を見てふと尋ねた。
「それは?」
「ああ、これですか?」
ひょい、と手に持った酒瓶を見せる。ラベルは「大吟醸 美青年」。藩国の穀倉で取れた米ろじゃあこから作り上げた珠玉の一品である。
「先日、藩王さまが須田さんに、とおっしゃっていたので取り寄せました」
「おお、そうだった」
弓尾透騎士がばたばたと走ってきて、ロジャー用の箱を抱えた。
「す、すみません。もうすぐお出かけなので、とりまとめ今日中にやってしまわないといけなくて」
「そうかー 忙しいところややこしいこと頼んで悪かった」
「いえいえ、慌しくてすみません えと藩王さまからはないのでしょうか」
「あー…」
ちら、と手元の袋に目を落とす。
「うーん、そうだな。これを」
首から世界忍者で世界貴族な赤いマフラーをするりと抜き取って、箱に入れる。脇に積んであったメッセージカードにさらさらとペンを走らせる。
『替えのマフラーにでもどうぞ』
そして、ちょっと考えて付け足す。
『困ってたらいつでも遠慮なく言って下さいね』
そのカードを、にっこりと笑って弓尾透騎士に渡す。
「配達よろしく頼む」
「はいっ!」
弓尾透騎士は、勢い良く返事をすると、箱にリボンをかけ、抱えあげてばたばたと走っていった。
「ひー 最終便が出ちゃうー」
由羅藩王は、その背中を見送ってそっと微笑んだ。さて、個人用はまた別に考えないと。かりかり、と頭を掻くと、横で様子を眺めていたひろき摂政を振り返って声をかけた。
「その酒、もう一本用意できないかな」
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