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【SS】あるクリスマスの風景
日時: 2008/01/31 19:26
名前: 久堂尋軌@世界忍者国 

文族の春投稿作品です。

いつものようにあちこちに色んなネタを散らばしてみました。
まぁ、楽しんでいただけるかどうかわかりませんが、よろしくおねがいします。
イメージとしてはガンモバに壁紙であります。
メンテ

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【SS】あるクリスマスの風景 ( No.1 )
日時: 2008/01/31 19:27
名前: 久堂尋軌@世界忍者国 

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12月24日…クリスマス・イブである。
それは万国共通というわけではないが、世界忍者国にもクリスマスというイベントは文明の発達に伴い広まっていった。
そして、真っ白な粉雪が降り始めたイブの夜。物語は幕を開く…。

世界忍者国の王宮はクリスマス・イブだというのにひっそりとしていた。
ド派手なパーティーをするわけではないが、数時間前に勝利で終わった戦勝会を有志によって行われていたのであった。
シャンパンの代わりに日本酒が振舞われ、コタツでヌクヌクとしながら鍋をつついて、いつものように馬鹿話をしながら盛り上がっていった。
しかし、それも2時間前のこと。程よく盛り上がったところで一次会は解散となって、二次会に赴く者や明日に備えて先に寝るものと分かれていった。

「『中には誰もいませんよ……完』っと……よしっ!これで原稿は終了っと〜長かった〜。」

椅子から立ち上がって背伸びをしながら、結城由羅は独り言のように呟いてた。いつもなら二次会はおろか三次会にまで参加して飲み捲くるこの人物、今日に限っては一次会で宴会を切り上げて自室へと帰ると原稿用紙に向かって頭を捻りながらペンを動かしていた。

実は、副業である藩発行の雑誌に掲載するBL小説の締め切りが翌日の朝にまで迫っている状況で今の今まで原稿を書いていたのだ。
数時間前に行われていた戦闘において、優しき死神と世界貴族のツーショットを見て触発されたのか今まで書いていた原稿を編集長の目の前で破棄。新しく1から書き始めたのである。

「あとは、コレを編集長に送るだけっと…たしか、編集長は夜勤だったはず…」

そうハイテンションのまま呟きながら原稿を封筒に入れて、簡易式瞑想通信で夜勤をしている摂政であり雑誌の編集長をしている久堂尋軌へと連絡をつなげ始めた。

「もしもし?ひろきしゃん、原稿出来上がったんだけど取りに来てくれない?いやぁ、今回は傑作ができたと思うねぅ。あの二人には感謝感謝感謝だね。」

簡易式で声しか伝わらないが、いつもの調子の飄々とした久堂の声が聞こえてきた。

「おつかれさまです、随分と私の憶測よりも早いですね。でも、ちょうどよかったです。陛下にお客様が今お見えになったんですよ。原稿を取りに行くついでにご案内しますね。」

「ん?誰だろ…って、わかった。待ってますねぅ」

こんな時間に誰だろと思いながらも原稿が完成したので気が緩み、カップにあらかじめ作っていた温かいコーンポタージュを注いで飲んで一息ついていく。
少しの時間が経つと扉がコンコンとノックする音が聞こえてきた。由羅は扉へと歩いていくとドアノブを掴かみ扉を開けると、予想もしていない物が視界一杯に広がっていった。

「ほら、ちゃんと受け取れ。」

その視界に広がったのは真っ白な袋らしきもので、勢いよく自分の方へと迫ってくるのに反応すると瞬間的に両手を差し出して受け取ってしまう。手触りを確認しながらも声の主を探そうとしてみるが、袋の向こうには誰も見えない。見えるのは更に奥の壁に寄りかかっている摂政兼編集長の久堂の姿だった。

「ねぅ?あれ?…声はすれでも姿は見えず…?」

「何を言っている。俺はここだここ…まったく…。」

大きな白い袋を抱えながら首を捻っていると更に聞こえてくる声に気づき、抱えた袋を横へとずらすと其処に声の主を見つけた。

「あ…こ、こんばんは…お姿は遠くからよく見させていただいてます。ハードボイルドぺ…」

現れたゲストの姿に背筋を伸ばしながら挨拶しようと言葉を紡いでいく時に、その言葉を遮るようにゲストの声が響いた。

「サンタだ。」

「へ?」

「だから、サンタだと言っているだろうが。見て判らないのか?今日の俺はサンタだ。」

やってきたゲストの姿を由羅が改めて見ていくと、足から嘴の先まで赤と白ツートンの服を着ているサンタであった。珍しいといえば、それを着ているのがペンギンという事だけではあるのだが、ペンギンから聞こえる当たり前と言わんばかりの声に由羅は頷くしかなかった。

「えっと…で、ぺン…いや、サンタさんが今日はどういった用事でうちの国に?」

不思議そうな顔をしながら視線を少し見下ろすようにして、胸を張るハードボイルドなサンタに由羅は問いかけると更に当たり前の返事が返ってきた。

「何を言ってるんだ。サンタの仕事と言ったらプレゼントを配る事に決まっているだろうが、とっとと魔法使いになってその服を着ろ。トナカイにしなかっただけありがたいと思え、今は砂時計の流れる一粒はエメラルドよりも貴重だ。」

言い切ったペンギンサンタに半分納得しながらも、最初に渡された袋を開けると中にはサンタが着ているのと同じものが入っていた。

「えっと…大体の予想はできてきましたけど、魔法使いに着替えるってことは…もしかして、コメットですか?」

「よくわかってるじゃないか。そうだ、トナカイの代わりにコメットに乗ってプレゼントを配達するぞ。ささっと着替えろ」

サンタは褒めながらも急かすように藩王室の扉を閉めて、由羅を部屋へと閉じ込めた。今のうちに着替えろという意味らしい。
由羅は魔法使いに着替えながら袋から衣装を取り出すと、服を更に着始めていって扉の向こうにいるハードボイルドサンタへと問いかけた。

「えっと…プレゼントを配るのは判りましたけど…誰にプレゼントあげるんですか?大体の国民は立派な成人なんですけど…」

「何を言っているんだ、それでもお前は藩王か?国と言うのは国民だけで成り立っているのか?じゃぁ、聞くが食料は誰が作っている?お前たちだけで生産ができると思ってるならおめでたいがな」

扉に寄りかかるようにしてサンタは由羅の問いに答えると、由羅も思いついたのか納得するようにして手早く着替えていった。

「ほむ、猫士のみんなにプレゼントを配るのですね。たしかに…猫士のみんなも国民ですものね。失念しておりました。で、サンタさん
プレゼントを持ってきてくれたんですか?私は失念していただけあって用意してないんですけど…」

語尾が弱くなりながらも、大魔法使いに着替えてその上からサンタの服を着終わると扉を開けてサンタの背中に問いかけた。

「気にするな、とりあえずは『金さえ積めばヴェルサイユさえも引っ張ってくるぜ』って普段から豪語している奴から買ってきた。もちろん請求書は世界忍者国宛てに回してあるからきちんと払っておいてくれ」

「え〜って、仕方ないですね。経費で落としておきますからその位はご心配なく。それで時間がないって言ってましたけど、もしかして他の国もまわるんですか?」

コメットの発着場へと移動しながら由羅がサンタへと質問していくと、目の前に現れた白い袋が備え付けられている特別仕様のコメットにくらっとしながらもコメットに跨って感触を確かめていく。

「あぁ、まだまだ行かなきゃ行けないところが他にもあってな。さすがに俺1人では廻りきれないから助っ人が出てる。とりあえずは次はFEGだ。」

感触を確かめている由羅の後ろにサンタが乗ると、さっき渡された原稿を持った久堂が空の状況を確認している。極秘裏に話があった段階で夜勤に志願したのもコメットを特別仕様にしたのも久堂だった。

「とりあえず雪という条件つきですがオールグリーンです。未確認飛行物体扱いにしますので、気をつけて飛んでくださいね。それではサンタさん、陛下と猫士のみんなをよろしくお願いします。」

親指を立ててグッドラックと管制官の役割を務めると、飛び立とうとしているコメットに対して後ずさりしていく。

「は〜い、それじゃ行ってきまーす!って、対空アメショーで狙い打たないでよね!」

「その時は何とかするさ。ほら、サンタになって空を飛んでプレゼントを届けるなんて一生あるかないかだぞ?もっと喜べ」

まるで芸人のようなノリツッコミをする由羅とハードボイルドなサンタはプレゼントを届けるため雪空へと上がっていった。

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追記:世界忍者国の空に現れた未確認飛行物体に対しての後の公式発表は「クリスマスなんだから、サンタクロースなんじゃないの?」である。

追記2:未確認飛行物体が現れた翌朝、世界忍者国の全猫士の枕元には色とりどりの手袋がソックスに入れられて置かれていた。

追記3:その数日後、結城由羅藩王は筋肉痛でダウン。その報に事情を知らない国民が「なんで筋肉痛?」と首を捻る人が続出した。
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