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【SS】団長の婿探し
日時: 2007/03/25 16:42
名前: 環月怜夜 

ー全てが終わったあの戦闘一昼夜。
応援に来ていたにゃんにゃん共和国の各国は既に兵を引き上げ、残されたのは重傷者と世界忍者国の国民だけとなった。

「一人1個担当持ってください」
 戦前から外交に奔走していたみはえる摂政に代わり、普段はうっかりと評される氷野凍矢摂政が国内の復興を指揮している。
「手は空いてます。作業内容さえ分ればお手伝いできます」
と弓尾透騎士。
「陣地の撤収終わりました。事後処理開始してきます。後ほど確認おねがいします 」
医師として整備士としてその名の通りマルチフィクサーとして活躍する可銀工場長。

猫忍者とマルチフィクサーは二人以上で行動し、負傷者の救済に回っていた。
「しっぽアンテナー♪」
月代騎士の澄んだ声が響き渡り、小さな山彦となって返って来ると、月代騎士はぶるぶるっと尻尾を振るわせた。
「この辺にはもう負傷者はいないみたい。じゃありんくさん次だ次」
「陣地終了。つぎいきます」
てきぱきと扇りんく騎士が南方に向かう。
「医師とはなんと・・・」
救援要員として付き添っていた松永騎士が、『救助終了』で埋まっていく地図を眺めて感嘆を漏らす。
わんわん帝国から亡命してきた彼にとって医師は珍しい存在だったが、戦時の有効性は目を見張るものがあった。

そんな三人の横を、とたとたと走る一人の女性が追い抜いていった。
「あれ?杏。どこへ?」
月代騎士が訊ねる。
「オイラ畑(´・ω・`) 」
「ちょっアウムドラの処理がまだ」
扇りんく騎士が地図を見、未だ確認の済んでいない地域だと指差すものの、ファーマーこと結城杏騎士はふるふると首を振って「農業は一日でも手入れを怠ると駄目だ」等と主張するばかりだった。
「杏黙れ(笑)」
「オイラのもろこしが・・」
「ポップコーンになってしまいますね・・・もろこし 」
ぼそっと松永騎士。
「まだとうもろこしの苗は成長中なんだあああああ」
離れた場所から耳に挟んだ鐘音騎士が、呟く。
「畑は吹っ飛んだな」
「Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)」
「とうもろこし・・・!w」
「あー・・・ふっとんだな、これは;;」
りんく騎士と月代騎士が、空を見上げながら、一言。
「むない・・オイラ日記毎日つけてたのに 」
しょんぼりしだした結城杏騎士を慰めるように松永騎士が肩を叩いた。
「雷が落ちた畑は作物が育つから、でっかいもろこしになったりして」
「でっかくなっちゃった?」
嬉しそうに結城杏騎士が顔を上げると、既に月代騎士と扇りんく騎士は鐘音騎士と共に相談事をしていた。
ぽつん、と松永騎士と二人取り残されて、更に落ち込む結城杏騎士。

「ああ、王城破壊ということはきっと寮も消えるんだろうなぁ。お家がなくなる・・・」
「建て直しだねぇwwりんくさん」
「また建てればよいのですよ、多分。まずは多忙な今を生き残りましょう」
「そうですね、鐘音さん。耐震構造計算はしっかりやりましょうね。ところで、新しいおうちの計画なんですけど」
「お風呂二つ?これはしっかり摂政が認めてくれないですよ」
「そこを鐘音さんの力でなんとか」
「月代は防音室が欲しいですにゃー」
「お、おいらだってベランダにワンルーム農園を作りたい!」
「それなら私だって吏族用演算室を!!!」
「白狼の異名に相応しく、部屋の備品は白を基調に!!」

なんだかんだで、世界忍者国は復興へと向かっていた。
・・・・・・・・・・・・一部を除いては。
メンテ

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団長の婿探し2 ( No.1 )
日時: 2007/03/25 17:47
名前: Lei 

 塹壕を片付けて、城内の修復はあらかた済んでも、
柱に残った弾痕のように戦争の傷は癒えることはなかった。
 ロイの追っかけとして国内では有名な4名だが、急患で戦場に間に合わなかったイヌヒト病院長以上に、傍にいたにも関わらずアラダに対して手も足も出なかった由羅女王の悲しみは大きかった。

「そーいうわけで、ここは新しい恋を見つけるのが解決策なんですよ!!!」
 ダンッ!と環月怜夜団長が休憩している摂政と女王の前で机を叩いた。
『はぁ・・・・・・』
「いや、失恋じゃないから」
赤く染まった目は見せないように、薄く色が入った黒縁メガネを二本の指で押さえつつ、藩王。
「でも、このままじゃ女王様が潰れちゃいますよ。昨日だってお城を抜け出して・・・・」
「そんなことをしたんですか?藩王?」
冷たい視線で藩王を見るみはえる摂政。すると、関係ない筈の凍矢摂政まで視線を逸らしている。よく見ると目が赤い。どうやら、昨夜は3人か4人で泣き明かしたようだ。
「・・・・・分かりました。それで団長の気が済むならどうぞ」
「みはえる摂政!!」
抗議する二人に目配せして黙らせ、みはえる摂政は続ける。
「但し、相手の意にそぐわないことをしてはいけませんよ。本当に藩王を大事にしてくれる人を選びなさい」
「は、はい!!」
嬉しそうに環月怜夜団長は部屋を駆け出して行った。

「・・・・・・いいんですか?」
心配そうな凍矢摂政と不満げな藩王を見て、みはえる摂政は軽くため息をついて口を開く。
「彼女も精神的に限界なんですよ。打ち込めるものがあったらそちらに熱中して気分転換した方がいい」
「なるほど・・・・・・」
「それに」
藩王が続ける。
「いい男が増えるのは大歓迎」
「藩王・・・・・・・・」
「まあ、これで根源力3万の婿でも連れてきてくれれば、いい戦力になりますしね」
凍矢摂政がくすっと笑う。

ーーー半刻後。
「見て下さい!国内のいい男マップができました!」
「よし、観光資源に」
「何言ってるんですか、しっかり摂政。婿ですよ!!!」
 忙しくてつい忘れていたが、先程の計画を団長は本気で実行するつもりらしい。
「どれどれ・・・・」
ひょいと覗き込もうとする藩王を制して、環月怜夜団長が誇らしげに胸をそらした。
「まずは戦勝パレードの時から人気急上昇中の凍矢摂政!」
「俺?」
「却下」
「眼鏡ファンから・・・・・え?」
メモを読み上げようとする団長を制止し、由羅藩王は執務室の机の上にぴょんと飛び乗って足を組んで座る。
「年下は好みじゃない」
「(ほっ)」
こそっと肩を竦める凍矢摂政。
「・・・・・・・・え、えーと、次。やっぱり密かに人気。ダイスを振るたびに貴方を想う!みはえ・・・・」
「だから、年下は・・・・」
「でも、女王様って24では?釣り合いが取れますよ」
「・・・・・・ふふーん♪」
にっこりと笑った由羅藩王の雰囲気が恐ろしく、環月怜夜団長はそれ以上追求するのを止めた。
「あ、あの。藩王の年齢って・・・・」
「ばかっ。国家機密だ。自称を信じろ!」
背後でひそひそ囁く摂政二人の間を羽ペンが飛んでいった。二人の頬に血ならぬインクが一本線を引く。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「仕事、しましょうか」
「そうだな」
わいわい騒ぐ女性二人を尻目に、摂政二人は黙々と仕事を片付けていくのだった。
メンテ
団長の婿探し3 ( No.2 )
日時: 2007/03/25 18:27
名前: Lei 

「それでですね、白金優士副団長なんですけど」
「彼ねぇ・・・・・・」
ぶらぶらと机に座って足を揺らしつつ、由羅女王がため息をつく。
「もうちょっと情熱的ないい男はいないの?」
「それなら任せてください!!可銀さんです!!」
「可銀さんの情熱は夜空さんに向かってるねう・・・・」
「ま、まあ。蜘蛛から生まれるラブストーリーってロマンチックじゃないですか?」
「白にして雲から生まれるならねぇ・・・・・」
近くにあった飴玉を舐めながら、藩王は片手で手を振った。
「次は・・・」
ぺらぺらと紙をめくる団長。
「カヲリさん、逢瀬みなおさん、檮原朱樹さんは女性だし」
「女性なら君がいればいいよ」
「冗談はやめて下さい!!」
きっと睨む団長にへらへら笑って、由羅藩王は机に寝そべって頬杖をついている。摂政二人はどこからかちゃぶ台を持ち出して、二人で仕事を続けていた。
「よし、ここはイケメンにしてオトメン!本命の緋乃江戌人病院長!!情熱もバッチリです!!」
「眺めたいいい男と抱かれたいいい男は違・・・・・・痛い!」
「そういう発言は控えて下さい!」
ペン、と持っていた書類で女王を叩くと、みはえる摂政は無言でサインをするよう藩王に促した。
「後は・・・・久堂尋軌さん、春日彼方さん、怪獣さん、風巻隆景さん・・・・」
「あのさあ、君」
足で器用に執務室の引き出しを開け、中からおやつを取り出してパリポリと食べつつ、由羅藩王が言った。
「彼らに私の相手が務まると思う?」
「う・・・・・・・・・・・・・・・っ」
「ねぇ?」
「ぶ、ブギーさんが」
「月代さんのお気に入りの子に無体なことはできんよ」
「いっそ、飛乃姫を玉座につけて、ご自分はいい男探しに出かけたら・・・・・」
「そうしたいねぇ」
「駄目です!!!」
ちゃぶ台の前で仕事をしている凍矢摂政がぴしゃりと言った。
「うう・・・・・・・」
「もう、終わり?」
にやにやと笑う藩王を背に、環月怜夜団長は泣きながら走っていった。

だが、これで終わりではなかったのだ。

数日後。
「じょーおうさまー」
パタパタと走る音がして、バンっと威勢よくドアが開かれた。
「あー、団長」
うとうとと仕事から目覚めると(寝ていたのではない、休息も仕事のうちとは藩王の言)、嬉しそうな環月怜夜団長が立っていた。
「御覧下さい!婿です!!」
「はぁ・・・・・・・」
「自国が駄目なら他国から!!真の漢の国とか売約済みのFEGからは断られましたが、賭けで見事旦那を勝ち取りましたーーー!」
要約すると、酒場で賭けの代償に貰ってきたらしい。本当は藩王好みそうな髪が長くて顔にハートマークの痣のある身なりの良い男性を狙っていたそうだが、そちらは失敗したらしい。
「ふーーーん・・・・・・・」
ぽりぽりと頬を掻きながら、取り敢えず背筋を伸ばして、花婿を眺めてみようと由羅藩王はドアを見つめた。
「ふふふ、自信ありますよ♪実力は折り紙つきですし、結構資格も持ってますし、根源力は26300.どうです?!」
団長に促されてゆっくりと入ってきた背の高いその人物を見て、藩王の目が丸くなった。
「蓮田屋さんでーーーーす!!!」
一拍置いて、由羅藩王の声が国中に響き渡った。

「羅幻の摂政だーーー!!!返してらっしゃーーーーーーいっ!!!!!!!」

藩王の春は遠い。

(尚、団長が今回道に迷わなかったのは、酔っていて方向感覚がおかしくなったかららしい。)
メンテ

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