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EV70用SS「帰るから」
日時: 2007/04/07 19:56
名前: 緋乃江戌人 

 アラダ、数4000.その前から囚われの国民たちを助け出す特殊作戦、亜細亜の曙。世界忍者国の作戦参加者は二名、可銀、緋乃江戌人の両筆頭マルチフィクサー。紅葉国と共に部隊の医療を担う。
作戦が始まるまでの束の間を、彼等はそれぞれに過ごしていた。

 整備工場長こと可銀はなじみ親しんだ整備工場で夜空さんやバウニャンと戯れていた。整備員達は、工場長が危険な作戦に出撃するということを聞いて今にももう工場長をぐるぐる巻きにしてどこかに隠しておきたいとでも言うような心配そうな面持ちでいた。声をかけたいが、可銀の幸せそうな姿に声をかけられず、タイミングを見計らおうとちらちらと様子を伺っていた。もしかしたら、これが最後になるかも、とうるうるしているものも多い。馬鹿、泣くなっ。だって・・・。そんな小声のやり取りが聞こえてくる。
 「僕は、幸せものだねぇ。」
ぽつり、夜空さんとばうにゃんをいっぺんに両手に抱えて抱きしめながらつぶやく可銀。
 そうだ、夜空さんに変な事をしないよう釘をさしてこなくては。整備員達が声をかけるタイミングを得ぬまま、可銀はとことこと外へ出て行こうとして。
ゴチンッ。
頭を機材にぶつけてしゃがみこんだ。そして、また、つぶやく
「大丈夫だよ。待っててね。」

 病院長こと緋乃江戌人は院長室で、書類を改めていた。既に患者の引継ぎは戦闘前に済ませてある。後は、事前に準備した病院の経営や院長のすべきことなどを記した数々の書類を確認、まとめなおしておくだけだ。病院勤めの騎士たちの顔を思い浮かべるまでもなく、病院がその後も、いや今以上にしっかりと運営されていくのが分かる。まとめた書類を、机の引き出しにしまい、鍵をかける。其の侭立ち上がって院長室を出、中庭は茶室へと向かう。予め、伝えてある鍵の隠し場所。茶室にたどり着くと、其の侭茶をたて始める。湯が、茶碗に注がれる音。シャカシャカと茶せんの立てる音。静寂の中に響くそれらの音が、心を静める。そういえば、この茶室。私が使わなければ誰が使うのでしょうね。と疑問が頭にわいた。それを思った瞬間、気配を感じてふと振り向く。
 「・・・・・・・・・」
誰も居ない。いない、が。かつて其処にあった姿が、彼には見えたような気がした。目を閉じて、深呼吸。其の侭、茶杓をとって茶をいれ、点てる。点てたのは、二杯。その一つをあの人が座った位置の前に差し出して、元居た場所に戻り、茶碗を持って微笑む。
 「帰ってこないと、お茶、誰も入れて差し上げられませんものね。さ、そろそろ行きますか。」

 『必ず、帰るから。』
メンテ

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