【公共工事】EV69バトルレポート
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- 日時: 2007/04/08 20:16
- 名前: 川流鐘音@世界忍者国
- EV69バトルレポート
”一人の過ちは10人の血であがなわれる。”
この言葉の通りに、キノウツン藩国では戦闘事務官が目をぐるぐるさせながら編成に奔走していた。 次々と援軍に訪れるにゃんにゃん共和国の兵たち。 戦力が増えるのはいいが、それをまとめるのは大変だった。 「順次来ないで、いっぺんに来てくれ〜」 文字通り、血を吐きながら戦闘事務官は編成を急いでいた。 事実、指揮官からの報告によればすでに戦闘団Bチームは、すでに作戦を開始したとの連絡が入っていた。 その連絡を受けて、戦闘事務官達はさらなる血を吐きながら編成を急いだ。
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一方その頃、戦闘団Bチームの戦団長、海法は部隊を見ながら、落ち着いた様子で呟いた。 「I=D部隊待機(トモエしかいないんだもん)」 圧倒的な行動力を有するトモエリバーをあえて遊ばせて置くことにした。 この判断力の高さには天才との声もある。 待機後。続いて命令を出す。 「全歩兵、近距離移動。偵察開始。」 さらに冷静に指示をだす。 「砂漠なのでチルの群れなら比較的遠距離から見えるだろう。こちらは散開して、砂に紛れて隠密移動。」 戦闘団Bチームはその命令通りに動き、見事な動きで命令をこなす。付け入る隙の無い見事な動きだった。 そして、彼らが見たものは隠しようも無いチル1000体であった。 身を隠しながら本部へと連絡をとる。 連絡を受けた海法はほほうと顔を崩しながら呟いた。 「おお、大神参謀長の予測が当たった」 そして、背中に組んだ指で魔よけのまじないをしながら気楽に言う。 「まぁ、チル本隊叩くのは俺らじゃないしー」 その頃、同じ連絡を受けたアシタスナオは悲鳴を上げていた。 「チル1000体。うがあ」 そんなアシタスナオを尻目に海法はのんびりと現場へと連絡をとった。 「青森さんはどこかな?」 現場からの返答が来る。 「言 成が保護しました。現在、我々と共に行動しております」 海法は了解、了解と頷き、思案を巡らせる。 「さぁて、ここで城門開いて、一気に挟撃、と、行きたいところだが……」 そこで言葉を区切ると、どうしたものかと悩みながら呟いた。 「アシタスナオはどうしてるかな?」
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所変わって戦闘団Aチームの戦団長。アシタスナオは追加でもたらされた情報に絶望していた。 敵戦力内にアラダ1体が確認されたのである。 がっくりと肩を落とし、弱気な言葉を吐く。 「ボクオワタ」 一方で同じ報告を受けた海法はのほほんとしていた。 「なんだ一人か。なめられたものだ」 そして、強気な発言をしながら心で祈りを捧げる。 (なんまんだぶなんまんだぶ) 海法は戦闘団Aチームに連絡とり、アシタスナオに声を掛けた。 「まあ、恐れることはない。チル1000体にアラダ1体増えても大した差はない。」 絶望していたアシタスナオはその言葉を聞き、顔を上げる。 「なるほど」 海法の言葉を理解するとアシタスナオは冷静を取り戻し、矢継ぎ早に指示を与えた。 「根源力の足りない者はアラダを直視できない。まずはアラダを見れる者が位置特定せよ。」 その言葉を聞き海法はうんうんと頷いた。 「全力攻撃で挟撃を狙いたいところだね。奇襲の一撃目なら、根源力不足もカバーできるだろう。」 両戦闘団はしばらく現場からの情報を収集し、敵戦力の割り出し自分達の戦力との比較、分析を行なった。 その分析が終わり、現状があきらかになるとアシタスナオはくやしそうに顔を歪めた。 「想定していた敵戦力500で編成していたが足りない・・・くそう。それ以上は資源がつきる・・・」 同じ分析結果を見ていた海法氏は考えをまとめ、顔を上げて断言する。 「ID部隊、敵陣地へ移動。待機して歩兵、I=Dで攻撃。同時にA班とも攻撃。包囲・挟撃による難易度低下と奇襲効果を狙う。そして、敵はこの際、チルとアラダ全部狙う。」 分析結果を見ていたアシタスナオは、はっと顔を上げて表情を引き締めた。 「我々も移動、攻撃を開始。チル、アラダへの同時射撃に移る。」
こうして、戦闘団A・Bチームの総攻撃が始まった。
兵士達の絶叫と共に、惜しむことなく吐き出される火力は敵を瞬く間に飲み込み粉砕した。 アシオスナオも叫んでいた。 「よし、撃って撃って撃ちまくれガガッガー!」 編隊の遅れがややあったものの、敵は完全に沈黙した。
互いに合流し、その様子を見ていた海法とアシタスナオはお互いに顔を見合わせ、ほっとした様子で呟いた。 「……ふぅ。ちょうどいい時に間に合わせてくれる」 海法が溜め息を吐き出した。 「かなり手間取ってしまいましたが、何とかなったか・・・ガガッガー?」 アシタスナオも壊れ気味にそれに答えた。 観測班からも詳細が伝えられる。敵戦力は全滅。アラダも含めて完全に殲滅した。 海法は実に落ち着いた様子で感想を述べる。 「……まぁ情報収集もできればよかったんだが、さすがにそれを望むには時間がなかった。罠は次にでもしかけよう」 アシタスナオは海法の感想を聞くと、ほっとした表情でそれに答えた。 「完全勝利、ということですか・・・助かったぁ」 ほっと胸を撫で下ろし、ふとある事に気付いて一言。 「名無しオーマ、ゴットスピード 」 そして、ぼんやりと考えを巡らせた。 (あ、ゲートあるとかいってたような) (それと、打って出る方法とかあればいいんだがねえ。)
同じ様に考えを巡らせていた海法はその時、違和感を感じた。 「……簡単すぎる?」 ぼつりと呟いた直後、海法の視界になんか、ちっこいのが通り過ぎた気がした。 あわてて手を伸ばす。 その様子を見たアシタスナオは周囲をうかがった。 そして、蚊みたいなのを見つけ、これを捕まえた。 「・・・なんだ、これ」 海法がアシタスナオの手を覗き込む。 「鑑識に回そう」
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「で、コレは一体ナンなのか、わかりましたか?」 アシタスナオが海法に問いかけた。 海法はうむと頷きながら、届いたばかりの鑑識から回ってきたレポートをアシタスナオに渡した。 アシタスナオは興味津々で レポートを読む。
−鑑識結果要約− この蟲は別の世界の蟲であり、限定された式神であると判断される。 使用目的としては、メッセージ伝えるのに使用されると考えられる。
要約を斜め読みして、その結果を見たアシタスナオが驚きのあまり思わず叫んだ。 「第6か・・・!」 同じ様に要約を読み終えた海法は、ふむふむと頷きながらさてさてという顔をした。 「なるほど。問題は何を誰に伝えるかだなぁ」 考えを口に出しながら、さらに考えを進める。 (たいして秘密にするようなことはしてないわけだし) アシタスナオもレポートを読み直しながら、考えをまとる。 「こちらの世界からのメッセージか、逆か・・・」
二人が互いにレポートを何度も読み直しぶつぶつ呟いている所に、鑑識より新しいレポートが持ち込まれた。 奪い取る様に受け取ると、新しいレポートを貪る様に読み始めた。
−「白にして秩序」よりの解読結果− この式神は魔力の流れにそってゲートを通っている。 かなり狡猾な経由がされており、次はFEGにいっている。 そして、FEGからさらに先も続いている。 おそらく、ゲートトレーサー(*1)封じであり、 人を探しているようだ。 内容は、「ドイツ語で。お前を必ず殺してやる。」 と書かれている。
レポートを読み顔を上げた海法はなるほどと頷いた。 「単純に最終目的地=本拠地をばらさないように、あちこち経由してるわけですな。」 (しかし、この最後の一文は・・・) 海法は頭を抱えた。頭が痛かった。
アシタスナオも読み終え、似た様な反応をしていた。 「ふむ・・・ゲートトレーサー」 そして、やはり最後の一文で頭を抱えていた。 (ドイツ …ふみこさーん? もしくはソレがらみ。ウギャー) チル1000体とアラダ1体を倒し、青森恭平を保護し、完全勝利した2人の戦闘団のリーダーはひたすら頭を抱え続けた。
追記 捕まえた蟲は死に、アシタスナオは嫌な匂いがとれないと、数日手を洗うことになる。 勝利の代償はそれだった。
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一方、保護された青森恭平。
海法とアシタスナオはいくら頭を抱えても結論は出ないので、鑑識のレポートはひとまず切り上げ、保護した青森恭平と会う事にした。 2人は青森歓迎組によるパーティが開かれている会場へと急いだ。 そして、大勢のファンに囲まれている青森恭平を引っ張り出し、ファンにぶーぶー言われながらも青森恭平を捕まえた。 海法は挨拶もそこそこに青森恭平に矢継ぎ早に、暖めていた質問する。 「誰に聞いて助けに来てくれたのか?」 「どの世界からどのルートで来てくれたのか?」 「敵の正体について?」 矢継ぎ早の質問に驚きながらも、青森恭平は焦って急いでいること。キノウツンは経由地だったことを伝えた。 そして、行き先はヒロシマで、依頼人の兄がいるとのことを付け加えた。 その答えに、海法は頷き、アシタスナオは悩んだ。 (ドコのヒロシマだ・・・どっちだ) 悩むアシタスナオを横目にして、海法は純真そうな顔に微笑を浮かべながら青森恭平に声を掛ける。 「広島なら我々も友人を助けに向かうところです。よろしければルートをお知らせください」 アシタスナオも悩むのを止めて、提案をする。 「むしろ、広島行きの部隊を同行させるのは?」
2人の言葉に青森恭平は、にわかに出来た仲間と、好かれている人々に囲まれて狐につままれた顔をした。 そして、ただ、頭をかいた後、笑って、「んじゃ、厄介になりますか」と言った。
<了>
*1 ゲートトレーサー ワールドタイムゲートを通じて通った情報がどこへ行くのか知覚する能力を持つ特殊能力者。セプテントリオンにおいては、追跡担当部署フィンガーワーカーの異称でもある。 女子の本懐において異世界に飛ばされた小村佳々子を追跡するのにポイズン・レイディが使用していた。 また、パラダイスタイフーンにおいては、大蝦天号はゲートトレーサーでニーギ・ゴージャスブルーによるゲート移動の反応を捉えている。 Aの魔法陣プレイヤーキャラクターの高山千恵子がこの能力を持つ「先天的ゲートトレーサー」。第3世界の先祖から遺伝した心臓によるものだという。審神能力と関連がある模様。
以下の情報は未確認: ゲートトレーサーを無視して通信できるのはクロス時のみ
情報集積場「世界の謎」より転載
<著>世界忍者国 川流鐘音

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