変化の術(技術)

L:変化の術

L:変化の術(技術)={
 t:名称 = 変化の術(技術)
 t:要点 = 口にくわえる巻物,手印,真言(マントラ)
 t:周辺環境 = 煙
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *変化の術の技術カテゴリ = 組織技術として扱う。
  *変化の術は、忍者系職業しか使うことができない。
  *変化の術は、AR0消費で変装を行なう事が出来、侵入判定を外見+8でおこなえるようになる。
 }
 t:→次のアイドレス = 新世界忍者(職業),世界忍法華嵐(技術),忍者専用機の開発(イベント),忍者都市(施設)

変化の術を使う世界忍者(イラスト:優羽カヲリ)

概要

 変化の術は、世界忍者ロイ・ケイリンから世界忍者国の世界忍者たちに直伝されたという忍術である。秘伝の文様が描かれた巻物を口に咥え、真言(マントラ)による呪文を手で印を結ぶことで術が発動する。成功するともくもくと煙があがり、目的とする対象の服装に衣装が入れ替わる。

 衣装を奪って変装するのとどう違うのかとも言われるが、攻撃によるリスクと衣装交換の時間は圧倒的にこちらが小さく、便利さは言うまでもない。また、なぜか素顔をさらしていても正体がばれないという「変身もののお約束」が適用されているともまことしやかに語られているが、 実際のところは、そこまで有名じゃなければ大きな組織ではばれないというだけの話である。潜入後の成功は、演技力と妙な説得力にかかっていると言っても過言ではない。そのため外見が大事ということで日々のお手入れが欠かせないとされている。たまに女装に使うものもいるが、大抵阿鼻叫喚に終わるので推奨されない。

 なお、秘伝の巻物は定期的に書き直し、活性化しないと効力が失われるという。 (設定文作成:結城由羅)

 

技術的考察

 本技術は、世界忍者ロイ・ケイリンからの直伝となっているため、その原理については推測に頼るのみである。合併に伴い、魔法使いの知識・技術の多くが失われてしまったため、魔法使いとして現存するハンターキラウイッチが解析を試みたものの、詳細は判明しなかった。ただ、巻物に書かれた文様が術の根幹であること、その発動には真言(マントラ)による呪文が必須であることは実験により追認された。真言(マントラ)は、第7世界日本のものに酷似しているようだが、かなりの変形が加えられているため、完全な解読は不可能ということであった。

 なお、手で印を結ぶ必要は必ずしもなく、口頭での詠唱でも代用が効くとの研究結果も得られた。口にくわえ、手印を使うのは、隠密行動のためであろうということであった。ちなみに、この研究結果を聞いて、なぜかソーニャが小躍りしていたという。

技術的解析を試みる魔女たち(イラスト:優羽カヲリ)

 藩王が星見司としての見地から絶技・ドレス創造との酷似性を指摘したため、TLOとしての側面を危惧する向きもあった。しかし、使用できるものが忍者に限られ、また特定の手続きを厳密に実施しなければ発動しないという非常に限定された用法であるため、危険性は低いであろうと報告された。特に、巻物の文様については、特定の儀式下での描画が必須であり、さらに、1ヶ月を過ぎると薄れ消えてしまうという性質があるため、流出の危険性も低くなっている。なお、儀式については隠れ里において秘匿されており、一般人には開示されていない。(設定文作成:結城由羅)

 

伝承

 実は世界忍者国では派手な忍術を使う者がかなり少ない。

 元々の忍者は、人の心の隙を突いて任務を達成する方法を忍術として伝承していたという。現在流布されている変身や召喚の術は、隠れ里に於いて読み聞かせられていた童話や民話を集めた民俗学者の編纂した本に拠る所が大きい。そんな、この国に残るひとつの昔話をここに記そう。

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 魔法の基本は思い込みである。強い信念と言い換えてもいい。

『魔女が魔法を使えるなら、忍者も忍術が使える筈だ』

 …かつて、そう考えた一人の若者がいた。

 若者は頭に葉っぱを乗せて、変身した自分の姿を思い浮かべ続けた。 この時点で大きく間違えているのだが、間違いを正してやる相手は誰もいなかった。

 若者は来る日も来る日もその試みを続け、そして、なんとついに若者は変化の術を身につけたのである。

 だがーー


隙間からの侵入の為にネズミに化けてみれば、
飼い猫に狙われ、
牛に化けたら背中が痒くても掻けない。
いっそ強く逞しい虎、
・・・・・・は漁師に射掛けられた。
可愛い兎に化けたところ、
拾ってくれたのは微少女ではなくて淋しい中年だった。
伝説の生き物に、
・・・・と龍やツチノコに化けてみれば、
カメラ小僧に追いかけられ、
足の速い馬に化けたら、
何故か世界忍者に追い越されて自信を失い、
羊に化けた途端に毛を刈られた。
ついでに元に戻った時にもツルツルだった。
森国の中を自由に遊びまわろうと猿に化けたところ、
ボスザルに喧嘩を売られた。当然負けた。
空を飛ぶスズメに憧れて変化すると鷹に襲われ、
普通に犬に化けてみたら、
狂犬病の予防接種に連れて行かれ(痛い)
逞しい猪になったら、
角を曲がれなくて木にぶつかった。

 ……一つも楽しくないのである。そして、若者は気付いた。

――変化の術はできないのではなく、やらなかったのだ、

と。

 森の中で動物に化けても危険が大きい。そして、狭い村の中で知人に化ければ、誰が化けているのかすぐに分かってしまう。 そして見知らぬ土地で他人に化けても、ボロが出て任務に失敗する可能性は非常に高い。

 そして、誰にも読めない巻物の中には、かの若者の警告(変化の濫用の禁止)と教え(格好いい変身と登場の仕方)が書かれているという専らの噂である。

このように、変化の術についての伝承は、戒めのような形で結ばれている。(設定文章:桂林怜夜)

 

SS「使用上の注意」

 この変化の術を見て、早速コ・レ・ダ! と反応した人物が居た。

 

 ソーニャである。

 

 美少年ハンターマジカルスターチス――彼女は、常日頃から魔法少女キャラで、美少年がらみの事件を解決して回る、極めて限定的な正義のヒロインである。(当然ながら本人はその正体を隠しているが、実は一番隠したいエミリオにはモロバレであった)

 だが、彼女には重大な悩みがあった。彼女が活動する時に身に纏っている衣装は魔法少女としてはあたりまえの、変身ドレスではなく、ただのコスプレなのだった…。毎回家の物置でコッソリ着替えているのが正直辛いのである。

「どうせならアニメみたいにもっと可愛く変身したい!」

 この、いささか不純な動機から、彼女は秘伝とされて来たこの技術の解明に名乗り出た。

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 早速、自室で変化の術を試すソーニャ。

「えーと、まずは巻物を【口にくわえる】………太巻きみたいで美味しそうです。はむっ」

 ソーニャは巻物を縦笛か、節分の太巻きの様にくわえた。

 

 エミリオがソーニャの所へやって来たのは、丁度そんなときだった。

「ねぇ、ソーニャ、僕がこの前読んでた本しらな………」

 エミリオが固まる、そこには変なポーズで巻物をくわえたソーニャが居た。毎度の事ながら今度はまた一体何を………ずっこけそうになりつつもエミリオは、様子を見守る事にした。

 

「もごもご(えー、と次は【手印】を組む………うーん【手印】って何だろう?)」

 左右の人差し指を立てて交差気味に前に突き出してみる、……確か変身もののキャラはこんな感じでポーズをとってた!

「ふがふが(そして、【真言】マントラを唱える………変身するときのかけ声かな? そうすると、【煙に包まれて】変化すると)」

 

 エミリオは見守っている。

 

「ふもふも(口にくわえてるから言いづらいなぁ)」  静寂………ソーニャは一度目をつぶり呼吸を整えると、カッと目を見開いて【真言】を唱えた!

「ふぁふぃふゃるふひゃーふぇふぁふぉるふぉーへ(マジカルスターチス、メタモルフォーゼ!)」

 しーーーーーーーん。何もおこらなかった。首をかしげるソーニャ。

野望に燃えるソーニャ(イラスト:ソーニャ)

 その一部始終を眺めていたエミリオは何も見なかった事にしようと心に決めて立ち去ろうとした。

「おっかしいなぁ………これでイケルとおもったのに。ちょっと休憩」

 不意に振り返ったソーニャは、ドアの前で固まっていたエミリオと目が合った。

「………!!!!」

「や、やぁ」

 エミリオ、あちゃーという顔でぎこちなく挨拶する。

「み、見てた………?」

「う、うん」

 …赤面して立ち尽くす二人。その日は会話にならず、二人してがっくりでした。

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 その後、事情を知ったエミリオの主導のもと、ハンターキラウイッチたちによって、技術の解明が進みました。具体的には、術の発動に関する制約等です。

 

発動条件

・忍者である事
・巻物は横向きに中央部をくわえること
・真言は忍者語であり、変化するものによってその口上はかわる。

注意点

・太巻きを食べる様に巻物をくわえてはならない。
・真言は忍者のみが知るもので、忍者以外は使う事が出来ない。
・真言は手印によって描かれるので詠唱はしなくてよい。むしろしないこと。
・煙は、発動時に発生するが色はおおむね灰色である。まれに、色が変わる場合もあるようだが詳細は不明。

禁止事項

・技術の部外流出を禁ずる
・忍者語の完全解読を禁ずる
・私的な使用を禁ずる

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 この結果、公的な目的のみに使用される技術となったため、ソーニャが夢みた変身ヒロインへの道は果てしなく遠ざかり、数日がっくりとうなだれていたそうです。一方、エミリオはといえば、対称的にホッとしていたようです。(設定文章:ソーニャ)

 

SS「とある忍術講習会」

 空の上では雲雀が鳴き声を響かせながら羽ばたくもとで、 珍しく世界忍者国の国民が集まって講習を受けていた。

 

「…ということで、今回は世界忍法みんなにレクチャーするでござるよ」

 そう言いながら世界忍者ロイ・ケイリンは、世界忍者国の精鋭を見渡すとコホンと軽く咳払いをした。

「この術は忍者にとって必須な侵入行為を有利にするための術でござる。まずは見本を…」

 そう言いながらロイは懐から巻物を取り出すと、軽く口に咥えて指で印を作った。

「ドロン…ッパ!」

 すると、みんなの目の前でロイの足元から煙がモクモクと噴出してロイの全身を見えなくした。その、まるで手品のような煙に皆が注目して見ていると、煙は徐々に晴れてきて

…そこに現れたのはロイではなく、そのパートナーである桂林怜夜であった!

「な、なんじゃこりゃー!!ロイ殿が怜夜団長にかわっとるぅ!!というか、団長が二人!」
「ど、どんな忍術つかったらこうなるんじゃー!」

 あまりの驚きに久堂と神崎は某塾生のような声をあげてリアクションしてしまうと、その後ろから冷静な声が響いた。

「あ、あれは…世界忍法・変化の術!まだ使い手が残っていたとは…」

「「なにー!知っているのか鐘音大臣!」」

「…っていうか、ロイが世界忍者の祖なんだから当たり前のような…」

お約束の掛け合いをしている三人に対して、冷静なくぅのツッコミが入ってるが他に気にする者はいなかった。 興味は団長の姿をしたロイに向いている。

「どうでござるか? 拙者の変化の術は。まるでそのものでござろう?」

ロイが扮した怜夜がそう言いながらお色気ポーズを取ると、真っ先に突っ込んでくる影があった。 団長を弄る事に関しては国一番といわれる結城由羅の行動はすばやかった。

「どれどれ、それじゃ~タッ~~~チ!…ふむふむ、意外と…」

 あまりの光景に、辺りにいた面々は呆然としてしまった。 いくら変化したとはいえ、団長の姿をしているロイ胸めがけて両手でタッチしているのである。

「どうでござろう?拙者の再現力はすごいでござろう? いやいや、今のところここまで精緻なのは、彼女だけしか出来ないのでござるが…っは、殺気!!」

「藩王さま~~~~~~、ロイ~~~~~~……貴方たちはっ!!」

 そこには顔を真っ赤にしながら、まるでオーガのように立っている桂林怜夜その人の姿があった。手には力強く粉砕バットを持っている。 その姿を見た周辺にいた面子は我先にと逃げ出している、触らぬ神にたたり無しである。

「二人とも覚悟はできてるんでしょうねぇ…陛下、意外となんですか?」

 オーガの姿をしながらも微笑みつつバットを構えると、恐怖で固まっている二人めがけて突撃を開始した。

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 10分後……

 

 その後ずたぼろになった二人から、犯罪防止のためにマイナーダウンした変化の術を伝授するということが発表された。 その10分で何があったかは、決して語られることのない黒歴史と現在でもされている。

 

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「ということで、この忍術を教える前に一つ言っておくことがあるでござるよ」

 会議室を利用した講義が始まると、咳を一つしてボロボロの姿のままのロイは静かな声で語りはじめた。

「みんなに知っていてほしいのは…『手裏剣は凶器、忍術は殺人術』というのは本当でござる。 でも、ここの人たちは忍術を国民のために使おうとしているでござる。 これは世間から言えば、甘っちょろい戯言かもしれないけど…拙者はこの戯言の方が好きでござるよ。」

 みんなの視線を浴び恥ずかしがって視線を外すロイを、その場にいた全員が拍手で称えた。

「…さ、さて…講義に移るでござるが、この忍術は実は簡単なんでござるよ。コツはでござるね…」

 ロイの言葉に耳を傾けて椅子に座っていた9割が、コツを聞いた瞬間に盛大にこけた。

「なんですか!それはっ!」
「ちゃんと説明してください!」

 何人からかブーイングが来るが、言った本人は至ってまじめな顔で

「いや、だから…コツは…いわゆる一つの、指をビュッ!って組んでギュッとやって、キュッってするんでござるよ~」

 本人の素な説明に、次第に真面目に言ってるのだとわかると騒然とし始めた。

ざわ…ざわざわ…

「さっきのアレ…意味わかる?カヲリさん」
「流石の私もちょっと…その調子だとソーニャさんもですよね?」

 顔を見合わせながらコソコソと話をしている二人とは対照的に、某編集部のように解説役の2人は盛り上がっていた。

「あの言葉は…ま、まさかN言語だとっ!今の時代に使える人物がいたとは…恐るべし世界忍者!恐るべしロイ・ケイリン!!」

「N言語…本当か!摂政!」

「古の英雄の名前より名づけられたN言語!擬音の中には複雑な暗号で凄まじい情報が封印されているという… たった一度の聞き取りで全てを理解するものは、天より愛された者の証という…。まさか、うちの面子に理解できる者がいるというのか!」

 誰のためなのか詳しい説明をしながら盛り上がる二人とは更に違った意味で対照的に、 最前列で講義を受けていた二人は不思議そうな顔をしてお互いを見ていた。

「…ねぇ、おねぇちゃん…今の超わかりやすかったよね?」
「おねぇちゃん言うな。でも、判りやすいよな?駄犬…」

 藩王結城由羅と人狼領主大神重信、世界忍者国が誇る2TOPであった。

 

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 あまりにも人によって難解なこのコツは、その後全員が学ぶのに最大の壁となったのであった。 そのため、強力版の方はそもそも学ぶのが不可能であったのではなかろうか、そういうまことしやかな噂も伝わっている。 (設定文章:久堂尋軌)