Lデータ †
L:燃料工場 = {
t:名称 = 燃料工場(施設)
t:要点 = 複雑に組み合わさったパイプ,陽光,タンク
t:周辺環境 = 湾岸
t:評価 = なし
t:特殊 = {
*燃料工場の施設カテゴリ = ,,国家施設。
*燃料工場の位置づけ = ,,生産施設。
*燃料工場の面積 = ,,4000m2。
*燃料工場の燃料生産 = ,,(生産フェイズごとに)燃料+15万t。
}
t:→次のアイドレス = 燃料分離(技術),高精製燃料(技術),代用燃料(技術),固形燃料(技術)
}
(参考:燃料工場@アイドレスWiki)
旧設定文 †
合併以前、人狼領地はテラに置いては数少ない軍事国家であった。藩王兼参謀一級の大神と兵器工場、歩兵、戦車兵、パイロットに整備兵とまさに戦争する為だけに作られたような軍備施設が揃えられていた。しかし、先の戦争ではさしたる活躍も無く、EV103に置いて行った砲撃も最終的には無かったことになる(時間をさかのぼって倒してしまったため)など不遇であった。
原因は極めて単純にしてシンプルである。生産力不足から航空機及び装甲戦力を動かせなかったのだ。軍事国家としては悲しいほどによく有る問題だった。油田そのものは一応持っているものの、藩国のライフラインの維持を超えるほどのものでもなかった。 特に前期は帝国各国共に燃料・資源に関しては枯渇気味であったために援助も受けられなかったということも大きい。
そこで、現状を打破するべく、自国の食料に目をつけることとなった。
国民生産である食料に加えて、国有の食料生産地。 この大量の食料を利用すべく、当時摂政であった濃紺は当初歩兵中心の戦力の作成を提案していたが残念ながらソレは聞き入れられず。結果として人狼にはかなりの食料があり、今後も余り続けると予想された。ココから捻出される食料を燃料に変換しようというわけだ。
原案は今は亡き故さちひこ王の独自兵器バイオエタノール工場計画である。トウモロコシ、サトウキビ等からバイオエタノールを作り、石油から副生されるイソブテンと合成することによりバイオETBEを生成、コレをガソリンを混ぜると言うものだった。確かに、この方法さえ使うことが出来れば燃料は混ぜる分増える。
が、混合率が8,3%であり、そう増えるわけでもない。更に言えば出来れば完全に自給できるようにしたい、と言うのが国の実情であった。
当時の人狼では本件を最優先として各地から研究者を招聘、研究を開始すこととなった。 参加者は以外にも多かった、政情は不安定ではあったものの、国を思う気持ちは皆同じだったのだろう。
さまざまな試行錯誤の結果、バイオディーゼル由来の軽油型燃料の生成に成功する。 特に人狼は寒冷地でもあり、バイオディーゼル最大の問題であったスラッジ(固まり)には特に配慮がなされており、非常に扱いやすくなっている。
コレは非常に大きな成果であった。軽油であれば高出力であるため船舶やトラック、戦車、I=Dなどの大型機械への使用が可能である。また、重油への混合もされるため、非常に汎用性が高い。この成果を受けて国は海岸地帯に大規模な燃料工場の建設を開始した。
本工場は主生産となる軽油型燃料に加え、追加研究こそされなかったもののいくばくか効果のあるバイオETBEの二つのブロック。更に継続して研究していたスタッフから工場建設中にもたらされた軽油区分から灯油への精製技術により追加された施設の計3区画からなる。この予想外の僥倖のお陰で工場の設計は急遽変更、一部パイプが複雑に絡み合う事態となる。
工場は可能な限り外気温の影響を避けるべく精製の為のタンク及びパイプを内部及び地下に設置、結果として外見上はかなりスマートな形になっているが内部はかなり複雑で、メンテナンスの際には見取り図を携帯することとなる。
もともと船での輸送を考えた海岸設置であったが、海岸と言うこともあり潮風と日当たりのいい立地により外はなかなか過ごしやすく、労働環境は意外と悪くないようだ。
合併後もこの工場地帯はそのまま、人狼領地に移設された。そして、世界忍者国本国の食糧生産地からの穀物供給が増えたため、その生産量も増大した。
イラスト:鯵屋 |
(文章:濃紺+結城由羅:合併時加筆)
生産効率化計画始動 †
世界忍者国の数多い弱点のひとつに燃料の消費があげられる。
現状において、戦闘に参加できる人数は14人を数え、共和国内でもそこそこのランクと言えよう。其の上で、主な戦闘アイドレスは世界忍者であった。この世界忍者は優秀ではあるのだが、その見返りとしての燃料消費は多い。
さらにクルーズでの調査の結果、大人の人口減を補うための機械化での燃料消費が問題となっていることもわかった。
このような燃料消費問題を解決するために、世界忍者国では燃料生産できる燃料工場のほかにも代用燃料という独自の技術を持ち始めた。そして、さらに燃料工場の改良を目指すことにしたのだった。
「みんな集まってもらったのは他でもない。
今回、燃料工場の移築ならびにバージョンアップを仕掛けたいとおもう。」
関係者全員を集めた大会議において、珍しくシリアス顔の藩王結城由羅がそう言った。
「陛下、移築・燃料増産するのはわかりましたが、
主にどういう計画でするのですか?」
会議において、まるで決まっていたかのような質問をする摂政の濃紺。
「うむ、まず燃料工場を代用燃料技術の傍に移築。
それにともない、各部品の再吟味と配管のしなおしにより増産の効率化をめざす。
現状の20%UP、
それが今回の目標なので、各自少しでも効率が上がる方法を考えてくれてくれ。
あ、ちなみに出来るだけ公害は無しの方向でだ・・・
まぁ、公害を起こしてまで国を潤すのは皆の意見にはないと思うが…」
その言葉を聴いた何人かは、腕を組んで唸っていた。現状においても結構厳しい中で操業している。これを20%となると難しいものとわかっているからだ。
「とりあえず、予定地は現行の海岸地帯からさらに海寄りとし、
海水を取り入れた水冷式の装置を追加する。
そして、今の技術において部品作成でどこまで効率化ができるか、
部品作成の者と検討してほしい」
ここから、燃料工場の増産にともなう移築計画が開始された。効率化の再計算を行うと、予想以上の回答がでてきた。
それは、燃料工場設立時では人狼領地の技術のみで作られたために、現在の技術で使われる素材に対して約50%もの硬さに差がでたのだ。50%もの差が出るという事は、其の分部品を軽くしたり消耗部品においては長期間長持ちすることができる。
そして、全体をその素材で補えば代用燃料の技術にも発展性が見えるというものだった。
(文章:久堂尋軌)
謎の二人組と恋の香り †
「さて、次の仕事はっと・・・って、おや?」
藩王としての仕事をこなしながら由羅が王宮の廊下を歩いていると、開きっ放しになっている部屋があった。気になりチラッと顔を覗かせてみると中では一組の男女が机の上の何かを見ながら話し合っているのがみえる。
「ねぇ、君たち何してるのかなぁ〜?もしかして、ラブラブとか?」
わけのわからない下世話な事をいいながらも、興味を持って二人に話しかけると部屋の中に入っていく。
「え、は・・・藩王様!そ、そんなじゃありませんよ!」
「あ、こんにちは藩王様。
えっと、新燃料工場の【パイプ】ラインの配管図を眺めていました」
男女の反応の違いにくすくすと笑いつつも、二人の顔を眺めながら名前を思い出す。たしか、可銀の下で働いている技術者で今回は設計に携わっている二人であった。
「ほ〜新しい配管図かぁ〜。どう、効率よくなりそう?」
由羅が顔を覗きこんで配管図を眺めると、先ほどから真っ赤な顔をしていた女性があわてて髪を整えながらも図に指をさして説明をしはじめていく。
「えっと、【複雑に組み合わさったパイプ】の設計を解析するのが難しく、
最初は難航していたんですが、
久堂摂政からアドバイザーを紹介していただきまして。
そのおかげで前のよりも効率のいい配管が可能になりました。
大体配管だけで5%は効率が上がる計算になります」
「へぇーアドバイザーねぇ・・・初めて聞いた気がするYO」
「そうなんですか?
先ほども二人でこの図をみて指導いただきまして。
赤と緑のオーバーオールの兄弟の方なんですが・・・」
さすがに藩王が知らないというのに不思議そうなリアクションをしながら、男が二人組の容姿を説明してみせる。すると、由羅は唖然としながらも、男の方に確認をするかのように自分の指を鼻の下においてみて。
「………もしかして、二人とも髭はやしてた?ちょび髭ぽいの」
「はい、はやしてました。やっぱりお知り合いだったんですか?」
「ま、まぁね…(いいのかなぁ…あの二人なんか連れてきて…)」
微妙な表情をさせながらも、図面の説明をうけると時計をチラッと眺めて
「おっと、もうこんな時間か。じゃぁ、後は頼むよ二人とも」
そういって二人の肩をたたくと、女の方に近づいて耳打ちするように囁いて
「お邪魔虫は退散するねぅ。
ちゃんとゲットしないと後悔するねぅよ。
ガンバってね」
藩王よりの耳打ちに顔をさらに真っ赤にさせて湯気まで噴き出す女性にクスクスと笑ってしまいながら、次の仕事に向かうために部屋を出て行くのであった。
イラスト:優羽カヲリ |
(文章:久堂尋軌)
代替燃料と恋の行方 †
代替燃料の更なる増加。これが今の技術者達の課題だった。
食料が燃料になる施設はNWでも珍しかったが、トウモロコシ1食分を燃料に換算すると、農作ロボットにゃんばいんが一人分のトウモロコシを作るエネルギーよりやや多い程度。
せめて食料に対して得られる燃料は3倍くらいにはしたいところ。
そういうわけで、技術者たちは顔を突き合わせて、効率的な燃料工場について考えていたのだった。
考えられる方法は幾つか。
- 圧搾機を多重にして、油かすからも油を搾り取る方法
- 蒸留装置の改良
- トウモロコシそのものの品種改良
- 油の多いトウモロコシの作出
- 成長の速いトウモロコシを作って増産
- トウモロコシ以外の作物を探し出す
「どの方法もコストがかかるんですよね・・・・・」
緑色の髪の女性が溜息をついた。
「機械の方は友好国にも相談すれば、増産はできそうだね。
しかし、材料の方は色々と試しているけど、
トウモコロシ以上のものは見つけにくいかな」
理知的な男性が苦笑交じりに続ける。
『・・・・・・・・・』
「気分転換におやつにしましょうか?
私、お菓子を作ってきたんです」
女性の方が棚から綺麗にラッピングした箱を取り出した。
朝、すれ違った藩王に『お、勝負仕様だね。ひゅーひゅー』とからかわれたり、摂政に『結婚はいいものだとじいは思うんですじゃ』としみじみと冷やかされたり、色々と苦労していたのだ。
「これは犬型のクッキーだね。猫もあるんだ」
「以前、抜型を練習で作ってみたんです。
ADフィクサーになりたての頃なんですけどね」
「型から手作りなんだ。凄いね。
それに美味しいよ」
美味しそうに食べるのを見ると、作った女性も嬉しい。ちなみに試食を頼んだ優羽カヲリのじーーーーーーーーーっと羨ましそうな視線に負けて、わんこ型の抜型をいろいろと作ってしまった。
「これは・・・・・ロイ像?」
「ええ。藩王様に頼まれて・・・・団長にプレゼントするんですって」
『・・・・・・・・』
ちょっと微妙な表情で、手裏剣型のクッキーを黙々と食べ続ける二人。
「あ、そうだ。ドーナッツもあるんですよ」
「随分作ったね・・・・・仕事は大丈夫なのかい?」
「あ、あの、両方とも焼いたり、揚げるだけでとっても簡単なんです!」
「・・・・」
「あ、でも、手を抜いたわけじゃなくて、
粉の配分とかはかなり気を使ったんです!!」
「・・・・・・・」
「バターと砂糖を混ぜるときにふんわりさせるのがコツで、え、えと」
「・・・・・・・・・・・っ」
真面目な顔をしているのも限界になって、ついつい吹き出す。
「・・・君が手抜きをしないことくらい分かってるよ」
「もう、からかわないでください!」
二人してくすくす笑っていたら、少しだけ、ここ数日の頭痛が和らいだ気がした。
「でも、揚げものって誰かの為じゃないと作る気がしないんです」
「ほう」
「あ、そうじゃなくて、油の処理が大変で」
「・・・・・・・」
「あ、も、もちろん、誰かのために作るのも嬉しいんですけど!!」
「・・・・・違う」
「へ?」
「・・・・・・・・・その、揚げ物の油はどうしているんだい?」
「え?固めて捨てていますけど」
「でも、それも油には変わりない!
それも上質のだ!上手く再利用すれば・・・・・」
「あ、最終的には食用油の一部も燃料になりますね!!」
「よし、
うまくいけば、他国でゴミになっている油も回収できるかもしれないぞ?」
「はい!!」
二人が廃油を精製する技術を完成させるのはまだ先のことだが、藩王はのちにこう語る。
「あの時彼女の肩を押しといて良かった」
と。
実際はからかっていただけだったりするが、『恋の叶う揚げ物』物語として、しばらく揚げ物づくりがはやったという。
(文章:桂林怜夜)
藩王様は筋肉がお好き †
ここは世界忍者国の燃料工場敷地内。
蝉の声がまだ聞こえる残暑の中、屈強な男たちがテントで大休憩をしていると
帽子を被った一人の女性がちょっと大きめのジャグを持って現れた。
現在、燃料工場では移築の為の解体作業に入っている。
これは燃料を少しでも増産するための効率化の一環として行われる、<理解・解体・再構築>の三段階の2段階目に当たる。
女性の姿に気がついた新人の屈強な男が、女性に声をかける。
「ようよう姉ちゃん、
ここは解体中で立ち入り禁止だぜ?
もし、誰かに会いに来たんだったら俺が相手に…」
下世話な事を言おうとした時に、女性は男の顔を見あげてニッコリと笑って空いていた片手で男の手を握る。
「お、話がわかるねえちゃ…っ!!
ぐはっ!」
男の視界はいつのまにか女性の顔から地面へと変わっていた。これを第三者からみれば、男の身体が一回転して地面に伏せられることがわかるであろう。
周りでみていた仲間がおぉ〜という声でヤンヤヤンヤと囃したてる。
「な、何しやがる!このアマ!」
真っ赤な顔で怒り狂う男を女性はチラッと見て片手で抑えつけてると、ジョグを置いて帽子をとった。
「余の顔、見忘れたか!
…なんちってなんちって♪」
「げげっ…その顔は…藩王さま…っ!」
男の顔がサッと青くなっていくのが、周りで煽っている仲間からもわかった。しかし、それすらも楽しんでいるようだった。
「仕事に熱心になるのはいいけど、
女の子を口説く時はもう少し紳士的になったほうがいいかな」
ニカっといい笑顔で、抑えつけるのをほどくと男が立つの手伝って再び帽子をかぶると、周りで働いてる男たちに声をかける。
「はーい、みんなお疲れ様!
栄養満点のベマーラジュース(スポーツドリンク風)
差し入れにもってきたよー!」
おぉ〜という声とともに休憩中の男たちが藩王のもとへと集まってくる。由羅は配置されていたテーブルの上にジャグを置くと紙コップを用意して集まった男たちに配っていった。
/*/
男たちが汗ばんだ作業着を脱いで半裸状態でジュースを飲んでいるのを、眼福とばかりに由羅が見ていると作業小屋から中年の男が紙の束をもって由羅の傍へとやってきた。
「どうも、藩王さま。
いつも差し入れありがとうございます。
新しい作業員が失礼なことをして申し訳ありませんでした。
しかし、お見事な”駆瑠流(くるる)”でしたね」
そういいながら、頭をさげる中年の男。彼の名前は本城といい、DC建設の部長で今回の燃料工場の解体を指揮していた。彼が話していた駆瑠流とは、忍法の体術一つであり関節を決めて投げ飛ばす忍法である。
「いやいや、
こういう作業してるんだからこういうこともあるって。
私的には楽しいからいいけどね。
あの人には気にしないでって言っておいてあげて〜」
視線をたくましい男たちへと流しつつ、本城の話を聞いていると左手を求めるように伸ばした。
「この間はこの間で、
ケンカの仲裁に”蹴露呂”(けろろ)で軽く双方とも吹っ飛ばしていたじゃないですか。
あぁ…えっと、
これが解体の時に判った各部品の磨耗率と交換時の効率のリストになります。
現在、机上の計算ではありますが、かなりの能率UPが見込めますね」
本城が紙の束を由羅へと渡すと、簡単に自分の感想を口にした。この男は、人狼領地出身で燃料工場の設計にも携わった家系の出だ。それがさらに世界忍者国の良質な金属を得ることでよい部品が効率化できることを口にしていた。
「ふむ…なるほど、
じゃぁとりあえずこの資料は貰っていくね。
差し入れも丁度無くなったみたいだし、また覗きくるね〜」
チラッと資料を流し目すれば立ちあがり、もう一度汗を吹く屈強な男たちを眺めてニヤニヤすると本城に軽く手を振って解体現場を後にするのだった…。
ちなみに、わざわざ屈強な男たちが見れるのを選んで視察を行ってるという噂ではあるが…信じるかどうかは聞き手次第と言われている。
イラスト:結城由羅 |
(文章:久堂尋軌)
持つべきものは友 †
「さって、資料をもらってきたけど、どうすっかな」
作業現場でたっぷり実用的な筋肉を堪能してから執務室に戻った藩王結城由羅は、俯いたはずみにはらりと垂れてきた黒い髪を掻きあげた。もう一方の手には、DC建設の部長、本城から受け取ったレポートがある。
それをぱらぱらとめくり、ふむ、と首を傾げた。確かに昔は趣味で怪人号開発などもしていたが、すでに最新技術から離れて久しい。
「餅は餅屋と言うしな」
由羅はレポートを机の上に置くと、藩国間通信回路を開いた。相手先は、聯合国羅幻王国。
世界忍者国と羅幻王国の付き合いは古く長い。同じ東京都にある両国の縁は、アイドレス1期の建国時にまで遡り、これまで何度も聯合を更新してきた。(参考:同盟国他リンク、藩国の要点内「○ターンごとの記録」)
独自兵器コメットの試案に至っては、羅幻王国摂政の蓮田屋藤乃の提案によるものだ
(参考:国内イベント/15)。そして、近年の編成時には連続して海軍兵站技術の供与を受けていた(参考:編成/T16/藩国部隊)。技術協力の下地は十分できている。
羅幻王国の海軍兵站技術は、共和国を支える海運の基盤となるものだけに、NW屈指の優れた技術となっている。その効率化率は、なんと80%もの燃料を削減する。つまり、羅幻王国の持つその優れた海軍兵站技術を今回の燃料工場へ応用できれば…。
数回の呼び出しの後現れた怜悧な美貌の羅幻王国摂政に、形式ばった挨拶もそこそこに由羅は要件を切りだした。
「…というわけで、こちらへ技術供与をお願いしたいのだが」
「他でもない、世界忍者国さまのためでしたら、もちろん構いませんよ。
技術者を派遣いたしますわ。
…その代わりと言ってはなんですが、
別途、食料関係についてご相談させて頂いても宜しいでしょうか?」
共和国でも切れ者と名高い蓮田屋藤乃は、にっこりと笑って提案した。由羅は慌てて頷く。
「それは、もちろん。
別途トウモロコシ畑の改良・強化による食糧増産計画も進んでいるので、
こちらからも色々と提供できると思う」
そこから細かく業務提携として話が詰められていった。
切れ者の名の通り数日後には、技術者が世界忍者国を訪れた。共和国環状線から降り立った彼は、立ち並ぶロイ像に目を白黒させながら、由羅本人の手によって研究室へと案内された。
「…ここのところが…」
「もう少し、調整してみるか」
研究室では、緑色の髪の女性と、理知的な男性のペアが、いつものように顔を突き合わせて、実験結果を検討していた。
「はーい、いつもお疲れ様〜」
由羅がやはりいつものように声をかけると、彼らは姿勢を正して迎え入れた。
「今日は羅幻王国さんからのお客様を紹介するのねう。
共和国でもいちにを争う燃料節約のための海軍兵站技術が、
今回の燃料工場の効率化に応用できないか、相談に乗って下さるんですって」
じゃーん、と口で効果音をかけられつつ紹介されたその技術者――商売人の雰囲気を漂わせつつもつなぎを着た整備士は、戸惑いながら二人にお辞儀をした。
「私ごときが何ができるかはわかりませんが…よろしくお願いします」
少し禿げかけた頭を撫でながら言うのに、女性技術者が慌てる。
「わ、わ、わざわざありがとうございます!」
「本当に助かります」
その横で、男性技術者がゆったりと礼を返した。
その様子を満足げに見ていた由羅が思い出したように、胸元に入れていた書類を取り出す。
「そうそう、これは本城くんから受け取ったレポートねう。
君らなら活用できるだろうからお願いねう」
幾分生温かいそれを女性技術者に渡すと、彼女はぱっと顔を輝かせた。
「こ、これは、すごい緻密なデータです!!!
ありがとうございます!」
「礼は本城くんに言うといいのねう」
私はただ届けただけだから〜とひらひらと手を振ると、由羅はにっこりと笑った。
後は技術者の出番だ。
ま、管理職なんて適材適所をするだけよね〜と、彼女は歩き去った。
そして、後に残った技術者たちは、新しいデータと新しい知見を元に嬉しそうな議論を始めたのだった。
(文章:結城由羅)
そして完成†
「おー絶景かな絶景かな♪随分と立派にできあがったものだねぇ〜」
ここは、湾から少し離れた高台にある公園。そこから見えるのは新しく移築された燃料工場であった。
藩王の宣言通りに、新しく建てられた燃料工場は従来の工場に比べて23%もの効率アップが果たされた。
その報告書を見た藩王は大満足しながら関係者各位に金一封を与えたのだが、藩財政を司る金庫番の鐘音は黙認した。何せ、関係者全員よりも23%の効率アップの方が藩国としては重要であるのが明白なのである。
「ゴホン…えっと取りあえず、お手元の資料をご覧ください」
冒頭のご機嫌のセリフをいいながら藩王である由羅が新燃料工場に目を輝かせていると、妖精の父親アイドレスを着た摂政の尋軌が資料に目を通して説明をしていく。
「えー今回の移築ならびに部品交換により、かなりの効率アップができたことは資料をみればおわかりだと思うので省きます。今回は、さらに工場の周りの説明になりますので、周りをごらんください」
久堂の言葉に、集められた政府関係者は資料から新しい工場へと視線を変えていく。
「まず、新しい燃料工場なのですが此方は代用燃料の変換装置も隣接させました。それに伴い二つあった施設が繋がって省スペースを可能に。さらに空いたスペースを港として運行し、燃料を運ぶためのタンカーや漁船なども停泊できるように作りかえました」
その説明をした直後に、ボーっと汽笛の音が響くとタイミングの良さにクスクスと笑ってしまう者も出てくる始末。
「コホン…で、その港を守る為に更に色々と手を加えました。安全面に関しては妥協することなく予算を組みました。こちらに関してはご了承ください。まず、湾内に高波や津波・高潮がこないように湾の出口において、緊急時には消波できるようにシステムを導入してあります。最悪の場合は湾内を閉鎖して燃料が漏れることも防ぐのにも使いたいと思ってます」
そう言いながら、資料の使用想像図をご覧くださいというと更に説明を続けていく。
そんな真面目な説明会を既に準備の段階で聞いていて、こそこそと抜けだした由羅は公園の柵に寄りかかるようにして海風を浴びながら、【陽光】の中に佇む新燃料工場を目を細めて見ていた。そして、
「この燃料工場がこれからも人々の為に動きますように…」と呟くのだった。
イラスト:くぅ |
(文章:久堂尋軌)