天翔る彼女たち
○テクニカルリードアウト1
人類が地球を捨てて逃げ出してから七百年、地球放棄暦七二八年。
バリアフィールド、人工重力、マイクロブラックホール、平面宇宙航法技術はあるけれど、人が人の姿を捨てるのはまだちょっと早い。そんな時代。
地球を捨てた人類は、銀河帝国と絶え間ない戦いを続けていた。
彼女は人類により、銀河帝国と戦うために軍艦として建造された。
人類の中でも日本系と呼ばれる勢力により産み出され、名を与えられた。
その名を、護衛艦”はるな”という。
銀河帝国と戦いながら資源を拾い集め、逃げて行く。そういう人類の実情が彼女を産み出した。
”はるな”は、人類そのものである艦隊を直衛するために生まれた。
速力などは重要視されず、航続距離もない。艦内の居住性は切り詰められた。
その分、単純な戦闘力と、強力なバリアフィールド展開力を与えられた。
”はるな”はかつて、人類の盾として華々しい立ち位置だったが、そのうち、遠距離での防衛策がとられるようになると彼女の出番はなくなっていった。今や艦隊のお荷物である。
彼女は強靱なダメージコントロール能力と、徹底した区画防御、強力なバリアフィールド生成能力を持って生まれた。最後の最後まで戦い続ける。そういう戦乙女である。
他艦すら守れるほどの大きなバリアフィールドの展開力は彼女から始まった。
主要装備は大口径三連装ビーム砲塔五基、対空レーザー二連装砲塔一二基、超大型バリアフィールド生成器である。
艦中央に重要区画、バリアフィールド生成装置を配置し、後部に機関部、前部に武装を配置している。
上面に大口径三連装ビーム砲塔三基、下面に二基を装備する。上面は凸型配置である。
機関は強力なものの一つしかなく、今では時代遅れとされている。いわゆる鈍足艦である。
その大きさは三〇〇mほど。この時代の大型艦としては普通だ。
彼女に問題はなかったが、前述した戦略背景の変更にともなって、出番がなくなってしまった。
彼女と一緒に企画された艦として、補給艦、連絡艇がある。いずれも本艦と艦隊本体を繋ぐための機材だった。
艦齢は一〇〇年を遙かに超える。
彼女やその姉妹は人類がもっとも厳しい時代に作られ、即実戦投入された。
半数の姉妹を失いつつ、からくも防衛に成功、以後直衛距離での戦闘はなくなった。
この三〇年は戦闘記録もなく、予算削減から半数が退役に至った。
これは人類が多少なりとも押し返し、民間被害を無くすところまで来れたのが大きい。
彼女たちは七〇年もすると問題に直面した。維持費の高さである。老齢に加えて、元々維持費を考えて作られていなかったのだ。
彼女の半数は退役し、改装を受けて殿艦となった。詰まるところ時間稼ぎの捨て駒だ。
しかし、民間での人気が高いことから実際にはその運用はされず、地方の防衛艦として運用された。武装は協力だが鈍足のため嫌われており、主として拠点防衛艦として使われた。
例外的に”はるな”だけは武装を減じつつ飛行甲板を装備、機関を改装され、練習艦として運用された。
乗員は原型が三〇名である。
”はるな”は練習艦になってから砲塔部跡地に円形の部屋が二基作られてそこに一〇〇名が住めるようになった。
”はるな”は乗員を徹底して守った。たとえ居住性を犠牲にしてもだ。
”はるな”の艦構造上、乗員は常時顔を合わせることになってアットホームな感じになった。それ以外では長続きしない、ともいう。後期では家族、一族で運営されることもあった。
また本艦型では居住区域が狭く、気が滅入るので意味もなく艦外活動することが定常化した。一人になりたい時は誰にでもある。
データ:
艦船 レベル4(本体の成功要素数 16)
乗員 レベル5(乗員の成功要素数 32)