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アイドレス/観光地

アイドレス/観光地

取得時期:アイドレス1 イベント/21。Ver.0.75にデータ更新。

配置:第4層 4-C

要点など

名前:・観光地(施設)
要点:・観光地
周辺環境:・おみやげ物屋・ガイド

詳細データ:IDWIKI:観光地
派生元:アイドレス/森国人+忍者+猫妖精
参考:既存アイドレスの変更と置き換え(1)イベント21 藩国改造(旧)

ガイド・世界忍者国の歩き方

<世界忍者国の歩き方>
 まずは、数あるガイドブックの中から本書を購入頂いた事にお礼を述べたい。
「ありがとう」
(立ち読みしてる人、迷ってる人。買いなさいというか買って、お願いプリーズ)
 こほん、少々おみぐるしい所をお見せしてしまった。
「申し訳ない」
(私にも生活という厳しい現実があるのだよ)

 では、気を取り直して「世界忍者国の歩き方」をご説明しよう

温泉&温泉街

onsen.jpg
イラスト:結城由羅榊朱利環月怜夜
要点:観光地
周辺環境:おみやげ物屋

 この国の国民の代表的なレジャーの一つとして、温泉がある。独特の医療が発展した現在においても、湯治は依然としてポピュラーな民間医療として残り続けるほど国民は温泉好きである。その御国柄は、伝説に起因するのかもしれない。
 その昔、世界忍者国の人々のルーツたる父なる猫が、母なる猿が病に苦しんでいるのをみて零した涙が温泉となって、それに浸かった母なる猿が病を癒したという伝説が存在するのだ。その伝説の温泉を謳う温泉は多いため、実在するか否か、実在するとしたらどこなのかというのは専門家を悩ませている。
 主に、左記の温泉を謳っているのは塩泉であるが、森が多い土壌からか、主流はアルカリ温泉である。前者は父なる猫の涙由来にせよなんにせよ、更年期障害に実際効果があるとかで、母なる猿が如く、ご年配のご婦人方に人気である。


Nextボタンを押してみてね!
イラスト:くぅ結城由羅,フラッシュ作成:結城由羅

   これらの温泉を持つわが国最大の温泉地には、みやげ物として忍者饅頭を売る店が立ち並んでいる。その店先では、遠景に望むロイ像を眺めながら、お茶を一服することができる。


(説明文:緋乃江戌人)


・温泉街
 この国の人々はじつに温泉好きである。温泉街では様々な温泉が軒を連ねており、全部入るだけで一日が終わるだろう。美容に健康といったスタンダードなものから、不老長寿、頭脳明晰、文武両道、美人薄命といった訳の分からないものまで、そのジャンルは広い。
 温泉街では、浴衣に草履を着て、旅館などの宿泊施設で手渡された割符を持っていれば様々なサービスを受けられる。人気絶頂。その長蛇の列を見ただけで、お腹がいっぱいになると言われている葉雨万堂の世界忍者饅頭をこっそりもらえたり。世界忍者グッズ一式をもらえるチャンスゲームにチャレンジ出来たりと、実に観光客を飽きさせないサプライズに満ちている。
 これのサービスは非公開で、泊まった場所によっても受けられるサービスが変わる。しかも、定期的にサービスは変更されている。すべてのサービス内容を知る事は困難を極めるだろう。

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イラスト:可銀
要点:観光地
周辺環境:おみやげ物屋,ガイド



・ロイ像
 この国を最も端的に、そして実に分かりやすく象徴している。温泉街にある最も巨大なものから、土産物のミニチュアサイズまで多種多様無数にある。何せこの国で、ロイ像を視界から追い出すのは、ちょっと苦労するほどなのだから。
 中でも瞑想通信の中央塔、通称「暗黒舞踏塔」に安置されている純銀製のロイ像は必見だ。ふんどし姿(校正:USA柄のビキニ水着が本物である)に忍者刀を持ち、均整の取れた半裸のデザインに「ふしだらだ」との批判の声も聞いていたが、実物を見て驚いた。
 まずは目だ。挑みかかるような、こちらを見透かすような視線。心を丸裸にされる様な気分を味わった。そして、問題のふんどし半裸姿。ふしだらというよりも、何かこう覚悟の様なものを感じた。そう、秘めた悲壮な覚悟を感じたのだ。ふざけた装いは、秘めた覚悟を他者に悟られない為のフェイク。
 私にはそう感じられた。
 作者不明。作成年月不明。と限りなくその出自も怪しいながらも、この国の本尊として祭られているのが良く分かった。
 観光で迷ったらまずはここにいくべきだろう。ただし、地下に収められており、開陳時間は限られるため、予め確認しておくことをお勧めする。
 なお、各ロイ像でスタンプ台が設置されており、スタンプを全部集めるとミニロイ像が無料で進呈される。ただし、中にはひどく意地悪な隠し方をされているスタンプ台がある事を付け加えておく。

ロイ像

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(イラスト:榊朱利)
要点:観光地

 この国の【観光地】に足を踏み入れて、まず目に付くのはひときわ巨大にそびえ立つ男性の像である。温泉街にある最大のものは全長約11m、クロムメッキ製で、晴天の日ともなれば目映いほどに銀色の輝きを放つ。
 この像は通称「ロイ像」と呼ばれており、そのモデルは、建国の際に初代藩王がこの地に奉ったといわれるご神体である。その実物は純銀製で、この国の各所に配置された瞑想通信を司る塔の中でも最大規模の中央塔の地下に安置されている。
 ロイ像はこの国の象徴ともいえる存在で、国内各所にその姿を見ることができる。大きなものでは藩国の中央機関である王宮のロビーに温泉街と同等のサイズのものが飾られており、最近では中央病院の中庭にも設置された。また水源にあるロイ像は、足元のガマガエルの口から水が滾々と湧き出るという凝った仕掛けになっている。
 縮小版のロイ像となると、藩国のあちこちに飾られており、そのすべてを把握するのはなかなかに難しい。その特質を生かし、近年ではロイ像の下にスタンプ台が設置されて、「ロイ像スタンプラリー」が行われている。これに参加してすべてのロイ像を見つけることができた者には、記念として「ミニロイ像」という手のひらサイズのレプリカが贈られる。
 ロイ像の足元には大抵、ベンチや休憩所に類する施設が置かれ、国民や観光客はそこで足を休め、あるいは話に花を咲かせる。国民にとっても観光客にとっても、憩いの場と言える。
 (説明文:逢瀬みなお)

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イラスト:カヲリ



・世界忍者屋敷
 この国の「世界忍者パーク」で私が、最も楽しいと思われたアトラクションをご紹介しよう。

 「世界忍者屋敷」

 …実にありがちである。名前からしていきなり外れを引いた感じである。私も仕事でなかったら外していただろう。世界忍者テーマパークには、他にも楽しそうなアトラクションが数多くあったのだから。(最近はアニメ番組とタイアップして「世界忍者ガールショー」もあっている。この版になって追加した取材コラムをぜひ読んでほしい)
 所詮、忍者屋敷に世界のテイストを入れただけ、な陳腐なものを想像していた。しかし、しかしである…。見事に私の期待を裏切ってくれた。以下はその実況である。

 入っていきなり黒装束の忍者に袋を被せられ拉致された。そして、いきなり床に放り出され自分が座敷牢にいる事に気付いた。
 何事かとは思ったものの、大丈夫。何かのイベントだよ。と自分に言い聞かせた。周りに誰もいない事が不安な気持ちにさせてくれる。
 しばらくすると、突然床がガタガタと動き、色鮮やかな衣装をまとった忍者らしき人が現れた。
「しぃ」
と唇に指を当てて私に静かにする様、指示して来る忍者。そして、私に近づき小さな声で話しかけてきた。
「すまない。どうやら手違いがあったらしい。君は他国のスパイと勘違いされている。」
「しかも、諜報保安局。通称、黒服と呼ばれる連中にだ。」
「やつらは完全な独立機関でね。命令を取り消すのには時間が掛かるんだ。」
「急がないと君が拷問を受けると聞いてね、助けに来たんだ。」
 私はいきなりの展開について行けなかった。
「嘘だろう。ドッキリじゃないのか。でも本当だったら、拷問って何だ」
などと、ひどく混乱していたのを覚えている。
 そして、この後は彼について行った。他に選択肢がなかったのだ。…これ以上詳しく書くと、長編小説になってしまうので割愛するが、大冒険をしたとだけ言って置こう。

〜世界忍者国のガイドブックの中でも最も売れている「世界忍者国の歩き方」の一部紹介〜
 興味が出た方は、是非、ご覧になりご購入下さいませ。

GuideBook.jpg
イラスト:可銀
要点:観光地
周辺環境:おみやげ物屋,ガイド


〜亜流絵素書店の販促POPより〜


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世界忍者パークでしか入手できなかったあの曲が、一般市場でついに販売!!
アニメ 世界忍者ガール
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要注意!! 一時間聞いたら、一時間は休憩しましょう。

当店でもご予約承っております。詳しくはレジにてお申し込み下さい。
亜流絵素書店 CD販売担当:<ここは希望者募る!>
(説明文:川流鐘音)

設定文 SS1(作者:結城由羅)

エドさん、スタンプラリーをする〜観光地編〜

 エド・戒−−彼女は世界忍者国に最近入国した新人さんである。さすらいの美少年ハンター(だった)ソーニャの書いた物語に惹かれ、政情不安な世界忍者国へ単身飛び込んできた奇特な少女であった。

 その憧れるソーニャはしかし、ここしばらく体調を崩しふさぎこみがちであった。

 理由はその愛する少年、エミリオの不在である。

 皇帝へ謁見するため帝國に向かい、ソーニャの交渉案を握りつぶした後、責任を感じたか姿を消してしまった。そして、詩歌藩国で発見されたものの、ソーニャの姿を見て逃げ出してしまった。

 元々体調のよくなかったソーニャは、ショックを受け、それ以来自分の家に篭ってしまっている。

(せめて何かできれば)

 こまめに家に通ったりして励ましてはいるものの、ソーニャは儚げに笑うばかりでやはりエミリオの不在は埋めがたいものがあった。しかし、自分ではエミリオを探しに行くこともできない。胸を痛めるエドだったが、城下町の喫茶店でパフェを食べているときに、ふと噂を小耳に挟んだ。

「観光地のロイ像をひとりだけで全部回ると願い事がひとつ叶うらしい」

 嘘じゃないのという突っ込みに、笑いながらほんとだって、と会話が続く。が、藁にもすがりたい気分のエドは、その話が妙に気になった。

 スタンプラリー自体は騎士の義務だからということで、無理のないスケジュールで回りましょう、とかで定期的にツアーが出て数個ずつクリアしていっている。観光地もいくつかすでに回ってみた。

「観光地は一応一般客の避難経路も兼ねてますから、ほとんどはマップに載ってるんですよ」

 初回連れて行かれたとき、騎士団長こと桂林怜夜が、観光地ガイド付属の地図を見せながら説明してくれていた。

「ただし、特別に隠しロイ像がいくつか設置されてるんだけどね。まー最近はあらかた発見されて情報も流れてるらしいけど。君たちは見つけきれるかなー?」

 結城由羅藩王がにやにやとそんなコメントを追加していた。観光地だけで36個のロイ像があるらしい。

「ランクCが20個、ランクBが12個、ランクAがなくてランクSが4個ってところだね」

 そのランクが何を意味してるのかちんぷんかんぷんだったが、Sが4つですかーという団長の嫌そうな顔を見ると楽しくないことのようだった。その日はランクCを半分くらい回ったところで終わって、次はまたということになった。

 嘘か本当かわからないけど、ソーニャさんのために観光地のロイ像をひとりでクリアしてみよう。パフェのスプーンを握り締めてひとり決意するエドであった。

/*/

「ひ、非常口ってどこですか?」

 エドは、マップを握り締め、観光地のど真ん中で涙目になっていた。次のロイ像は、忍者屋敷裏手非常口そばにあるらしい。忍者屋敷と言っても実は複数個ある。裏口を覗いたりしてもロイ像を発見できなかったエドは頭を抱えた。前に回って看板を確認してみる。

「えっとえっと、忍者屋敷・ホラーコース…あれ、ここ違う!?」

2つ目の忍者屋敷で途方に暮れたエドは、仕方ないので人に道を聞くことにした。ちょうど一人の小柄な女性が、忍者屋敷・ホラーコースの出口から出てくるところであった。

「あ、あの、すみません!」

 真知子巻き(※注1)でサングラス、下はボーイッシュな半袖シャツに短パンといういでたちのその女性は、エドの呼びかけに怪訝そうに首をかしげた。

「その、ロイ像を探していて…この忍者屋敷というのがここだと思ったのですが、違ったみたいで…えとえと」

 女性はおたおたしているエドの手元のマップを覗き込むと、ああと呟いた。

「それなら、あそこだね」

 木々の隙間から覗く瓦屋根を指差し、答えたその声は女性としては幾分低かった。野太くはないが、そう声変わりが始まったか始まらないくらいの少年の声…少年? あっとエドはその女性が少年であることに気がついた。サングラスをかけたその顔があまりに整いすぎていて女性に見誤ってしまっていたのだった。

「あ、う…ありがとうございます!」

 誤解していたことにうろたえて、思わず上ずった声をあげてしまったエドに、その女性−−少年はふん、と冷笑を投げかけた。

「こんなとこでどうやったら迷えるんだろうね」

 え、え、と目が点になるエド。とほほと情けないのは確かだが、そういう口調にはちょっと懐かしいものを感じる。

「しかたないな。天才のこの僕が一緒に探してやろう」

 えっへん、と胸を張る少年。よくよく見ると女性にしては確かに胸がなさすぎる…というのは置いておいて、エドはわたわたと慌てた。

「あ、その。お申し出はとても嬉しいんですが…あの、実は願掛けの途中でして。ひとりで回らないといけないんです」

「ふうん? こんなところで迷ってるのに?」

「う。うう…」

 エドが凹んでいるのを見て、少年は口をへの字にした。

「まあ、それじゃ仕方ないな。せいぜい頑張ってくれたまえ」

 少年は肩をすくめるとあっさりとそう言って立ち去った。残されたエドはしばらく呆然としたが、ぱちんと頬を打って気合を入れた。

「ソーニャさんのために頑張らないと!」

 えいえいおー、握りこぶしを上げる。心機一転教えられた忍者屋敷を目指すエドを、見送る影があった。

注1:真知子巻きとは、首から頭にかけてショールを巻くスタイルの一種のこと。「真知子」はラジオドラマ『君の名は』のヒロイン名に由来している。

/*/

 何度も道に迷いながら、それでもエドはあきらめなかった。

「今日で三日目…ランクBまでなんとか終わりました!」

 しかし、残りはランクS。ランクSって一体どんなものなんですか?と聞いたエドに、桂林怜夜団長は遠い目をした。

「悪いことは言わないから、ランクSにはひとりで行かないでね?」 「え、なぜですか?」 「ランクSロイ像は、避難経路というよりは、迷宮のセーブポイントだから…」 「迷宮!?」

「中級者コースがB〜A、上級者コースがA〜Sになってるねう」

ロビーでお茶を飲んでいた藩王が何故か楽しそうにコメントしていた。

「Aコースすごかったなぁ…」

会話を聞いた久堂尋軌摂政が遠い目をして呟く。

「当時私は新米でねぇ〜ギアナ高地も真っ青の壁を登り…「ぶっちゃけ、ありえなーい!!」って叫んだものです(ぇ」

「ああ、Aだと崖の途中とかにあったりするよねー」

と藩王。エドは目を白黒させた。

「だ…誰がそんなところに設置…(設置したひとも怖かっただろうなぁ…)」

「最悪落ち延びた場合の避難経路だからねぇ…崖の途中の高台とかに横穴掘って設置してある」

お茶を飲み干す藩王、に摂政が甲斐甲斐しくお茶を注ぐ。

「全部クリアすると自然と忍者の能力が身に着くのですよ」

「たまに迷子になって遭難するやつがいるけどな」

「うう…」

 苦虫を噛み潰したような顔をする桂林怜夜団長をひゃひゃひゃとからかう藩王。

「設置には猫忍者を総動員してね…まあ、それよりあの迷宮の方が(遠い目)」

「まぁ、迷宮なんてよほどでないと行きませんけどねぇ…」

 黙り込むエドの周りで、話は他の方向へ流れて言った。

 そんな会話を思い返し、目の前の洞窟を覗き込み、くらくらと貧血を起こしそうになる。

「ずいぶん前に羅幻王国の方から地下迷宮をくぐって敵が攻めてくるという話があってね。そいつの出口が困ったことに観光地にあるっていうから、警報機能やら結界機能やらのついたロイ像をいくつか洞窟内部に設置したらしいよ。ランクSロイ像ってのはそいつらのことだね」

 ランクSのある場所を尋ねるエドに、土産物屋のおじさんがそう説明してくれた。

「悪いことは言わないから行かないほうがいいよ。外までは出てこないけど中では化け物も出てくると言うよ」

「うう、でも行かないといけないんです…」

「なにか事情があるんだね…でも無理はしないで、危なそうだったら逃げたほうがいいよ。ほら、これをあげるよ」

 おじさんが心配そうにお守りを渡してくれた。

「あ、ありがとうございます!」

 そのお守りを大事に胸に抱くと、エドは深々と頭を下げた。人の情けが身に染みる。

「あまりご利益はないかもしれないけどね…本当に気をつけてね」

「はい!」

 そのまま立ち去ったエドは、彼女を追うように立ち上がった真知子巻きの少年と、それに頷きかける土産物屋のおやじの様子には気がつかなかった。

 そして、再び回想から戻って、もらったお守りを握り締める。

(行かなくちゃ。ソーニャさんのために!)

 ひとつ武者震いをして洞窟へと足を踏み入れたのだった。

/*/

 洞窟内部は案外静かだった。ただやはり暗い。20mも進むと真っ暗になった。

(暗いです。怖いです!)

 慌てて土産物屋で勧められて買ったランタンに灯をともす。ぼうっと揺らめく炎に洞窟内部が照らし出された。壁の凹凸にゆらゆらと影が躍って、何か出てきそうな気がしてびくびくする。

(なんだかもっと怖い気もするのは気のせいでしょうか!?)

 ううう、と涙目になりながらそろそろと進んでいく。十字路が現れた。

(どっちでしょう…)

 覗き込んでもわからない…とりあえず直進することにした。今度はT字路、右へ…突き当たり、左へ…うろうろするうちに案の定道に迷ってしまった。

(はううううう)

 すでに出口の方向もわからない。ぐるぐるしながら歩くエドの目の前に、ぽつんとロイ像が現れた。

「あった!」

 大喜びで駆け寄ると。例によってスタンプ台と、おめでとう!と書かれた冊子が数冊積まれていた。1冊持って行って良いと書かれている。とりあえずスタンプを押してから、その冊子を手に取ってみた。

「えーっと…、最初のロイ像発見おめでとう。ご褒美に洞窟の地図をあげよう。4Pを見てね。この洞窟にあるロイ像は残り3つ。全部発見できたら、天文台政庁へごー。特別プレゼントがあるからお楽しみにね☆」

 地図は助かるかも…とエドはその地図を眺めてみた。ただし、ロイ像の位置は書いてない。しらみつぶしにするしかなさそうだ。持ってきたバックパックから水と食料を取り出して、補給をすると、また探索の旅に出ることにしよう。ロイ像の周りには小規模な結界が張ってあって化け物が近づかないので安心していい、とも書かれていた。

(そっか、だからセーブポイント…)

 安心すると疲れが出たのか、すっとまぶたが落ちた。ロイ像の足元のベンチにもたれ、エドはうとうとと眠りに落ちた。

 ひぎあああああ、と遠くもなくさりとてそう近くもないどこかで悲鳴が上がり、エドは飛び起きた。なになに!?ときょろきょろし、慌てて荷物を担ぐ。耳を澄まして、音を聞くが、それ以上何も聞こえない。どくどくと高鳴る胸を押さえてじっと身構えていたが、数分後力を緩めた。

 じっとしていても仕方ない、怖いけど行かなくちゃ。立ち上がるとエドは奥へと進んでいった。

/*/

 その後の探索はしかし、力が抜けるほどあっけなかった。何度か迷ったので時間はかかったが、残り3つのロイ像を見つけ出すことが出来た。

 ただ、不思議なことに、真新しい血痕や戦闘の痕がところどころにあった。また、まれにそう遠くないところで、激しい音と悲鳴がすることもあった。そのたびに身をすくめ、近くの岩陰に隠れて音が止むのを待ったりもした。しかし、エド自身はそうした音の原因に出くわすことはなかった。

(お守りのおかげかしら)

 エドは首からかけたお守りをそっとまた握り締めた。土産物屋のおじさんにはまたお礼を言っておかなくちゃ…、そう思いながらエドは洞窟を後にした。出る瞬間、また悲鳴を聞いた気がしたが、外の木々をわたる風の音かも知れなかった。

/*/

 エドが洞窟の前の道を下り姿を消した後、ひょっこりと洞窟から姿を現したのは、真知子巻きの少年であった。手には不釣合いな大きさの刀を下げ、その刃には先ほどエドを背後から襲おうとしたゴブリンの血糊がべっとりとついていた。手にした受信機を眺め、発信源−−お守りが徐々に遠ざかっていっているのを確認する。

 ふん、と小ばかにしたように鼻を鳴らすと、布を半ズボンのポケットから取り出して刀を拭った。鞘に収め、背中にからう。

 ぱちぱちぱち、とその背に拍手が投げかけられ、はっと少年は振り返った。

「やあ、案外やるじゃないか。女の子のナイトかい?」

 背の高い、ちょっと砕けた感じの青年が気にもたれかかってにやにやしていた。垂れ目で端正な顔立ちをしている。

「あんたには関係ない」

 むっと顔をしかめる少年の様子に、青年の笑みが深まる。

「つれないねぇ。観光に来てみればいつの間にかいなくなるから、心配してたんだぞ?」

「単独行動については謝る。用事は終わったから帰る。心配するようなことはなかった」

「それで、キスくらいはした?」

 パンチが飛ぶ。おーこわこわと青年はひらひらと避けた。

「そんなんじゃない! ただ…ただ、ちょっと気まぐれで手伝っただけだ」

「姿も現さずに、ね。青春だねぇ」

「…!」

 はっはっはと笑う青年と、それを殴ろうと追い掛け回す少年。ひとしきりじゃれた後、青年はふっと優しい目をした。

「名前くらい言っておいたらよかったんじゃないか?」

「…いいんだ。多分二度と会うこともないだろうから」

 遠い目をする少年に、そうか、と青年は呟くとそれ以上は何も言わなかった。

 最後、洞窟の前を去ろうと言う時に、少年はもう一度だけ振り返った。少女が下っていった道を遠く見やり、そっと手を振る。そして、後は振り返らずに仲間たちの所へ戻っていった。

/*/

 エドが土産物屋のところまで戻っておやじにお守りの礼を言うと、実は…とおやじが話し出した。

「いや、実はあのお守りは、とあるお客さんが渡してくれと頼んだものだったんですよ」

「え、え?」

 明かされる事実に戸惑うエド。

「えっと、そのお客さんと言うのは?」

「初めて見るお客さんで、名前も知らないんですけどね。こう、ショールを頭から肩にこう、巻いた、一瞬女性かと見まがう美少年でしたねぇ。あ、目はサングラスで見えなかったんですけどね」

 あの人だ…あの、忍者屋敷の前であった、どこか懐かしい少年。エドは改めて、お守りを見てみた。黄色と青の布地に黒猫の刺繍…そして数字が縫い取ってある。

「5121…」

 エドは呆然としながらその数字を読み上げるのだった。

/*/

 ともあれ、観光地すべてのロイ像はめぐった。どこでどう願うのかわからないけど、願いを聞くのが神様なら、神殿がいいかもしれない。観光地にある一番大きな神殿−−教会みたいな建物だったが−−へ行くと、玄関先で掃き掃除をしていた神官が軽く会釈をした。会釈を返し中へ入ると、ミサ用のベンチが並んでおり、ちらほらと礼拝客がいた。

 前の方へ行き、膝をついて祈る。

(ソーニャさんの元へエミリオが早く帰ってきますように)

 強く強く、集めたスタンプラリーのカードを握り締めて祈る。神が聞き届けたかどうかはわからなかったが、今できることはこれくらいしかないから、とただひたすら祈った。

 外が暗くなる頃、神官がやってきて肩をそっと叩いた。大丈夫ですか?と優しい笑顔でお茶を差し出す。それをありがたく戴くとちょっと涙がこぼれた。きっと願い事は叶いますよ、と神官は微笑んだ。はい、とエドは頷くしかなかった。

/*/

「心配をかけてごめんなさいねう」

 エドが王宮に帰ってみると、ソーニャが照れ笑いをして待っていた。エドがソーニャのためにスタンプ集めをしていたという噂がどこからともなく伝わり、心を打たれたソーニャががんばって出てきたのであった。

「ソーニャさん!」

 感極まって抱きつくエドと、それをうんうんと抱きしめるソーニャ。それを見る周囲は皆感動の涙を流していた。

「いつまでも落ち込んでいても仕方ないのねう。頑張ってエミリオを連れ戻しに行くのねう」

「はい!」

 神がいるかどうかはわからないが、人の努力を他の人は見ているものだ。ただの人の努力こそが結局一番大事なのかもしれなかった…。


Fin.

設定文 SS2(作者:久堂尋軌)

世界忍者国の新事業〜映画産業編〜

「他に観光地の目玉欲しいよねぇ〜」

「そうですねぇ〜映画でも作って映画祭でも開催してみますか?」

「そ・れ・だ!映画を見に行く環境なら経済効果もでるわけだし!」

 こんな他愛もない会話から始まった世界忍者国の映画事業は瞬く間に進められていった。

「失礼します。陛下……、あの映画はなんですか!あの映画は!!」

 藩王の執務室に勢いよく乗り込んできて第一声を叫んだのは、世界忍者国で1、2を争うほどの人気者になっている桂林怜夜だった。

「ん?いや、言ってる事がわからないけど…どうかしたの団長?」

 罰金返済による貧乏財政に頭を悩ませながらも、藩王の机の前に仁王立ちしている騎士団長に不思議そうな顔をしながら結城由羅は質問してみた。

「映画ですよ映画!観光地に遊びに行ってびっくりしましたよ!あれ、私じゃないですか!!『冬の彼方』って映画の看板!」

「あぁ〜『冬カナ』のことね。アレはすごく今国民に人気あるんだよねぇ〜。現在、観客動員数の記録を更新続けてるんだなコレが…いやぁ、さすが団長とロイはいい演技してるよね。私も見に行ったし」

「……へぇ…その言い方じゃ、まるで製作に関わってない言い方ですね。それじゃ、撮影の指揮は誰が取ってたんですか?」

 藩王のとぼけた言い方に、こめかみをヒクヒクとさせながら言葉を選ぶと責任者は誰なんですかと問い詰めた。

「娯楽に関することは…ほら、摂政のひろきしゃんに任せてるから…ね?ひろきしゃん」

「へっ?え…えぇぇ!!いや、私は許可だしただけですから!あの映画はレッドフルムーンとブラックシューティングスターの合同製作で作られたって聞いてますよ?」

 名前が出されて摂政である久堂尋軌は、執務室の隅のほうで書類を書きながら顔をあげると藩王と同じようにと焦りながらもぼけた様子で。

「へぇ…そうなんですか。それじゃ、その二人に会えるのはいつなんでしょうねぇ…っていうか、何で私が映画になってるのか凄く不思議なんですけど。納得いく説明…二人はしてくれるのでしょうね?」

 言葉に怒りを込めながらも、とぼけた二人に怜夜は質問してみれば来客用のソファにドンと腰を下ろしてみて硬い意思を表明して見せた。

「あれ?団長ってもしかしてACEと記憶リンクしてなかったの?前に団長ぼやいてたじゃない?『PLACEは私と違ってまっとうな性格になっているはずですから』って。だから、まっとうだから藩王として正式に出演依頼が来てるからどう?って薦めただけだけど?」

 怜夜は藩王の言葉を聞いているうちに怒りというよりも徐々に呆れた表情へと変わっていって、一枚上手な相手に降伏とばかりに頭を垂れた。

「あ、呆れましたよ…。あの時の一言を逆手に取るなんて…ロイもロイですよ。忍者なのに…まったく…」

「いや、ロイさんは別に気にしてないでノリノリで団長との演技楽しんでいましたよ?ほら、パンフレットのインタビューにも書いてあるし…。でも、おかげで助かりましたよ。この映画の撮影場所である旧世界忍者国と旧人狼領地をめぐろうという観光ツアーが増えてますし、何よりも両エリアの交流にすごく役立ってもらっています。」

 久堂は怜夜の呟きに引き出しから劇場用パンフレットと観光用ガイドを取り出して、怜夜の前に差し出してみせた。

「そ、そんな企画まで…はぁ…まぁ、知らなかったとはいえ藩国の役に立ってるならこれ以上怒るわけにもいきませんけど…。」

「あ、そうそう…それでね。映画会社なんだけど、今の映画会社映忍だけだと独占状態でつまらなくなるから団長も会社起こしてみない?もちろん、それなりにうまみはあると思うんだけどな〜」

 そう言いながら、新しい会社を興すための書類を団長の目の前に藩王は置くと興味ありありで怜夜の顔を覗き込んでみて。

「わ、私よりももっと適任者いるじゃないですか。ほら、摂政の濃紺さんとか大神さんとか…」

「あっちはあっちで、別な会社を立ち上げてもらう予定なのよ。国民向けの軍事民間会社作るのに…あぁいうのは専門家に限るから」

はぁ…、と藩王から書類を受け取った怜夜はパラパラと資料に目を通してみせて。

「うまみって…どういう風な旨みがあるんですか?」

「えっとなぁ…もちろん映画の観客動員によってなんだろうけど、【おみやげ物屋】でのグッズ展開でその利益はでるし…もちろん、【ガイド】を作って宣伝すれば更に利益も…。作品が多くなれば【観光地】のビッグイベントで映画祭もできるってわけ。ひろきしゃん、今のところ映忍の利益ってどうなってる?」

「そうですね。おみやげ物屋のグッズではストラップとかお饅頭とか凄い売り上げですね。あとは映画とコラボの観光ガイドとか…結構副業にしては純利益が随分多いですね。」

「わかりました。少々時間をいただいて書類作成させてもらいますね。私としてもアクションものとか作ってみたいなと思いましたし、お言葉に甘えさせていただきます。」

 そう言いながら書類を持った怜夜はソファから立ち上がると、自分の部屋へと戻ろうとしてドアへと向かうと、ふと気づいたように立ち止まって振り向いてみせた。

「今度、『冬の彼方』の続編を取るときはACEの私じゃなくて、直接私に言ってくださいね。私もロイといい映画を撮りたいので…あ、次回の撮影はすぐに始めましょう。えぇ、そうしましょう」

 そう二人へと言うと、想像するだけで嬉しくなったのか怜夜はニコニコと軽い足取りでドアの向こうへと消えていったのでありました。

※余談ではあるが、後の書類申請で設立された映画会社は「ワーニー(ワールドニンジャー)」と名づけられた。


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