世界忍者国民と、FEG国民とのにらみ合いはつづいていた。
幾人かの国民は、傷つき、休んでいる。
死者がでていないのが救いだ。
食料を求めて、世界忍者国に詰めかけたFEG国民の前で、門は堅く閉ざされていた。
FEG国民が命を繋ごうと必死なのもわかるが、いかんせん、たべるものがなかった。
門を開こうとして、内の世界忍者国民と、外のFEG国民の間で小競り合いがつづいていた。
傷ついた人が増えてきた。
それはどちら側の人間の姿にも、白いもの(=包帯)が面積をひろげはじめたことから明らかだった。
「だれも傷つくのはいやだ。」
そんなきれい事は通らない。
誰かが傷つき続けている状態の中、エドは壁の端に見つけた隙間から抜け出した。
状態を、みたかったからだ。
飢えた人々は、明るさを失っていた。
飢えた人々は、希望を失っていた。
飢えた人々は、悲しみに満ちていた。
食べ物がないからだけではないと思う。
助けてくれると思っていた、【友誼の国】に、拒絶されたとでも思ってしまっているかのように、彼らの目は、悲しみに満ちていた。
大人だけでなく、子供もたくさんいた。
彼らに何ができるのだろうか。
壁の中の彼らを守るので、今は精一杯だ。
それは、十二分にわかっていた。
外の彼らを守るために門を開き、受け入れること、それ自体は簡単だが、それをすれば、自国民まで飢えてしまう。
それだけは回避しなければ、とおもった。
やせてしまった子供達を見て、悲しくなった。
だけど国の中に招き入れることもできない。
今、炊き出しをしても、焼け石に水なのもわかってしまっている。
中に戻って、エドはしゅん。と肩を落とした。
今まで自分はできることを本当に全部、手をうってきたのだろうか。
できるときにも、できない、と逃げていたのではないか。
後悔だけがぐるぐると、黒く渦を巻いていた。
そう思って、城下を歩いていたときだった。
ほわんと暖かい香りが鼻孔をくすぐった。
トウモロコシのお茶の匂いだった。
十二分にあるとは言えない各家庭から、少しずつ食べ物が持ち寄られ、
トウモロコシのお茶と、さらにそれを煎ったものを挽き、水で溶き、やいた、おやきのようなものも、少なからず作られていた。
差し入れ程度の量にしかならないが、国民たちの手で少しずつ、分けれる食料が捻出されていた。
それをみて、(いまはくよくよ、ぐるぐるしてる暇やない、できることをせなあかん。)と、エドは走りだした。
城では、既に、様々な準備がされていた。
王城に戻ったエドは、政策を書く尋軌摂政をみた。
「藩国民に被害を出すわけにはいかなかった。」
そういって、悲しげな表情を浮かべた人は、もう、前をむいて、先を見据えて動きだしていた。
しばらくして、食料が出せる、炊き出しができる。と言われたらと、準備を始めた。
トウモロコシのスープに、暖かいお茶、それに、国民の皆が分けれるようにと少しずつ分け出したおやき。
それが、供せる日がくることを願って、少しずつ、麦や、ひえ、あわ、トウモロコシなどを集めるためにどうすればよいか、考えるのだった。
友誼の国として、忍者の国として、何ができるのか、しばらく考えるのだった。
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References:[公示文/20110204―02]