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アイドレス/忍者刀(アイテム)

忍者刀(アイテム)

642.jpg 題字:くぅ

「ねぇ、忍者刀って忍者の力をアップさせるよね?」
「もちろんそうですね。」
「じゃぁ、忍者刀で2倍。そして、速さ×高さ×回転で12倍くらいになるかな」
「なんですか、そのゆで理論方程式…」
―藩王と摂政の会話から―

データ(アイドレス3形式)

20140815開示

忍者刀:25:#隠蔽
要点
・仕掛け付:25:#敏捷
・忍者刀:25:#白兵
・驚きのアイテム:25:#器用
・B世界で作られた:25:#装甲
エクストラ
・秘密兵器:25:#白兵

次のアイドレス
・手裏剣術:30:#近距離
・薔薇手裏剣:25:#近距離
・うずまき忍者:25:#装甲
・忍者スレイヤー:25:#白兵

IDWIKI:忍者刀

旧アイドレス2形式要点開示

L:忍者刀 = {
 t:名称 = 忍者刀(アイテム)
 t:要点 = 仕掛けつき、忍者刀、驚きの
 t:周辺環境 = 世界のおわり

忍者刀とは(設定)

 忍者刀は、時代遅れとなりつつある世界忍者の能力を飛躍させる為に開発された。世界忍者国特産品である砂鉄から作り出された精度のよい鉄と、人狼領地で培われた製錬技術のコラボにより、今まで作られた刀とは精度が段違いのものが出来上がっている。コレは、産業育成で作られた丈夫な工具の製作法を応用した賜物でもあった。

 忍者刀というものは、使用用途が特殊であることが特徴として述べられる。刀身は通常の日本刀とは違いあまり大きな反りがない。だが、その代わりに鞘も含めて頑丈につくることにより、忍術にも使用できるように作られた。

 例えば、紐を咥えて鍔に脚をかけることにより高い壁を越えての侵入を可能にした『釣り刀の法』、鞘を伸ばしたままで前方に突き出すことで夜間や室内戦闘での利を得る『座探しの術』などの技を使うことができるようになった。なお、これらの技を使うことによって夜間戦闘の燃料消費の節約なども可能になる。

 鞘自体も【仕掛けつき】で、白兵戦でもおこなえるほどの強度を持たせることで、先端での突き以外を戦闘行為を非殺傷行為へと変えることを可能にしたり、先端のねじ状の部分を外すと水中で呼吸ができるようにシュノーケルの役目も果たしたりするようになっている。

 世界忍者国で生産される忍者刀は大まかに分けて二種類のタイプがある。世界忍者用の「Sタイプ」と人狼傭兵用の「Zタイプ」の二種類だ。 この開発が決まった時のコンセプトは"世界忍者と人狼傭兵が使える忍者刀"であった。世界忍者国は人狼傭兵を忘れた事は一度としてないのだ。

 世界忍者用の忍者刀の特徴は、"正統な忍者刀"と言えるだろう。これを扱うことにより隠密行動のレベルをあげ、闇の中での動きに更に機敏性を咥えようとするものであった。この忍者刀を持っての闇の中で動ける、忍者には必須なアイテムである。

 それと比べて人狼傭兵用の忍者刀の特徴は"超硬度カトラス"の路線と言えるかもしれない。切れ味のレベルを落とし、その代わりに刀身の硬さを上げて耐久性をアップさせる。切るというよりも、突いたり叩きつぶすが使い道としては推奨される。慣れた傭兵の手であれば、塹壕や穴を掘る補助器具にも早変わりする。

 この二種類の忍者刀の制作方法は途中まで違いはあまりない。日本刀と同じつくりをしているが、叩く際に鋼を巻きつける量と角度を微妙に変えて刃の部分の切れ味をよくするか刀身ごと硬くするかによるものであった。装飾に関しては其々の特徴のままにつけられている。

 ちなみに、最低限の装飾をつける際に人狼用ニンジャカトラスは鍔を白に。世忍用忍者刀には赤を基調とした鍔がつけられる。これは、それぞれのイメージカラーであると共に、鍔の一部は外れ刻印された暗号によりドックタグの役割も可能になっていた。

606.jpg 忍者刀:くぅ

二つの忍者刀(SS1)

「工場長〜忍者刀の見本できたんだって?」

 藩王である結城由羅が中央研究所(旧中央整備工場、通称:研究所)に久しぶりに足を運んだのは、工場長である可銀より忍者刀の試作品が完成したと連絡があったからだ。

 軽く研究開発室の扉をノックして了解を得るとガチャリと扉を開け、目の前に台座に二振りの刀が置かれているのを見て由羅は目を輝かせた。

「おぉ〜!
 こ、これが忍者刀かぁ〜。かっこいいねぅねぅ〜」

 まるで子供のようにはしゃぎながらも、まずは観察からなのか周りをぐるぐる回るようにして刀を見て違和感に気づいた。

「ねぇ、可銀さん。なんで違う種類があるの?これも忍者刀だよね?」

 由羅がたずねるのも無理はなかった。一振りの刀の方はまさしく由緒正しい忍者刀なのだが、もう一振りは日本刀ですらない白兵で使われるカトラスの形状をしていたからだ。

「ぁ、藩王さま。一応試作品なんですけどね、できあがりましたよ…あぁ、これですか?もう少し待ってください…」
「??」

 そう言いながら可銀は持っていたストップウォッチの画面をチラッと眺めつつ、アバウトな説明をすると残り10秒などと呟きながらカトラス形状の刀を眺めていた。

「3…2…1、パチン!」

 可銀がカウントダウンと共に指を鳴らしたかと思えば、カトラス形状の刀は一瞬にして隣に並んでいたものと同じ忍者刀へと変化したのだ。今は同じ形の忍者刀が並んでいる。

「っ、えぇぇぇぇ!」

 由羅が【驚きの】声をあげるのも無理はなかった。さっきまでカトラスだったのが忍者刀に変わったら十中八九驚くものである。由羅の驚きぶりに満足そうにしながら、可銀は元から置いてあった忍者刀の一振りを手にとって何度か軽く動かしてみる。すると、今度は忍者刀がカトラス形状へと変化する。

「な、なんでぇ?どんな仕掛けになってるの?」

 余りの展開に目が点になりつつも、由羅も忍者刀を手にとって何度か振ってみる。しかし、可銀がやった時のようにカトラス状に変化することはなかった。

 あまりに不思議そうな顔をする由羅の表情に満足しながら、可銀は机にあったスイッチを押して遮光カーテンを展開させていく。部屋も暗くなって、これから何かを見せるようだ。すると、元から用意されてスクリーンに動画が映され始めていく。

『やぁ皆さん、私の研究室へようこそ』

 どう見ても舞台の書割でできた教授室をバックに、可銀が蜘蛛の夜空さんを頭に乗せて現れる。どうみても『メガッサの屈辱』(世界忍者てーべーで放映中)のパロディであった。

 そして、動画が進むと世界忍者と忍者刀の歴史について講義が始まっていく。もちろん、パロディらしく教養というよりはネタであるのだが、途中より<変化の術と忍者刀>の項になると、由羅は想像を超えた理論に開いた口が塞がらなかった。

『変化の術と世界忍者が組み合わさると忍者刀にもそれは影響し、変化の術が忍者刀に伝播する。すると、忍者刀は形を変えて世界忍者の手に現れる』

『姿が変わった忍者刀だが、何かしらの能力が加わる訳ではない。ただ見てくれが変わるだけで寸法や切れ味は元の忍者刀のままである』

『変化させるには世界忍者であると共に条件が存在する、それは一定のコマンド(刀振り)を行うことで忍者刀を変化させられるのである』

 数分後、動画が全部終わってカーテンが開けられると急な明るさに目を細めつつ由羅は可銀の方を見て問いただした。ちなみにEDにはスタッフとしてなかだいの名前も確認している。

「えっと…この動画、全部マジ?特に変化の術と忍者刀の関連性って?」
「マジじゃなかったら動画なんて手が込んでるの作りませんって。とりあえず、判りやすい説明ではあったと思いますけど?」
「まぁ、そうなんだけど…信じるのも難しいと思うねぅ」

 苦笑しつつも、動画で説明されたコマンドの通りに忍者刀を振ってみると確かに由羅の手にはカトラス状になった忍者刀が現れた。

「しかし、あれよね。これって、忍者刀の変化バージョンだけにするには勿体ないデザインねぅ。いっそのこと、新たに作って人狼傭兵に渡す忍者刀ってこのバージョンにしちゃおうかな?」
「あぁ、それもいいですね。忍者刀と二種類作ってどっちか選ばせてあげてもいいかもしれません」

 由羅は決断すると、その後忍者刀とニンジャカトラスの大量発注を藩王として命じた。これからの戦いにおいて、世界忍者と人狼傭兵に必要と思われるからだった。

「よし、とりあえず改造は各自自由にしてぇ…
   そうだ!私のはキラキラでイルミネーションぽく光る【仕掛けつき】にするのねう!!
     うん、そうすれば山場で力いっぱい目立つのねう!あ、そうそう忘れてた…」

由羅は思いついたように、カトラスから忍者刀へと戻すと納刀しなおして渡すような構えをとり、真面目な声で叫んだ。

 「この刀を持ちし忍び達よ!この刀は友誼のちから!我らが友誼の誓いを踏み外すことなかれ!」
 「この刀を持ちし人狼の傭兵達よ!この刀は力なき者たちを守るための刀なり!その道、外れることなかれ!」
 「この言葉を忍者刀を渡す時に伝えて。大丈夫だと思うけど、犯罪で汚したくはないから…」

 「御意に…。今のお言葉によって、皆がこの刀で友誼の道を迷うことはないでしょう」

可銀は敬礼をしながら藩王に答えると、配布するための準備へと取りかかった。

652.jpgニンジャカトラス:くぅ

そして配布へ(SS2)

「それじゃ、いってくる〜。留守番よろー」
「こっちも出発しますので、後はよろしくお願いしますね」

 そう言いながら王宮から二つのグループがそれぞれの搭乗予定のヘリへと向かって歩き出していた。

 それぞれの主な面子としてはSチームが世界忍者国国民軍への装備更新の為に桂林怜夜騎士団長や優羽カヲリ院長を中心とした面子。Zチームは大神重信副王や濃紺摂政を中心とした人狼傭兵への装備更新をするための面子である。

 ちなみに、藩王の結城由羅は執務室で書類の山と格闘しており、留守居役の摂政久堂は国内の有力者との会談に入っている。

「ぬぬぬ…行きたいねぅ…」
「何がぬぬぬですか…。まぁ、その気持ちはわかりますけど、この書類すべて決済していただけないことには…まぁ、身から出た錆ということで」
「ひどいねぅ〜…(きゅ〜)あ、そうだ。忘れ物とかはないかな、ないかな…?」
「陛下…忘れものにかこつけて脱走しようとしても無駄ですからね。とりあえずそれぞれに忍者刀・ニンジャカトラスと産業育成で作った許可済みの防弾ジャケット類、それにミリタリーグッズ・非常用のサバイバルキット、救急パック等々をキャットバスケットで積んで出発してもらいました。だからよほどの事がない限りは忘れ物は無いと思いますよ」
「むにゅ〜。そういえば、ひろきしゃんの方の話し合いはDO-DAI?」

 書類に埋もれながらも次々と決済を行っていく由羅は、会談の状況を摂政に聞いてみた。

「あぁ…そっちは大丈夫です。主に元締との会談ですし…。元締は陛下たちのことがお気に入りですからね。変な締めつけを行わない限りは友好の姿勢は崩さないと思いますよ。まぁ…【世界のおわり】が近づこうとも、うちはうちですからね。善悪を超えた友誼で乗り越えてくんでしょ?陛下」

 ちなみに、話にでてくる元締とは主にテキヤ屋台などを収入源とした組織の長で、藩王や副王(仮)のざっくばらんな性格を大層気にいっている。今回は屋台の出張サービスをお願いしたお礼と合わせて、これからの緊急事態の協力体勢の再確認も会談内容には入っている。

「うむ。まぁ、単独行動もいいんだけど…ちゃんと報告はまとめといてねぅ。うちは裏やら闇やら悪夢すらも飲み込む友誼の国なんだから」
「はいはい、わかりました。じゃぁ、いってきますね」
「あ、元締めによろしく言っておいて。ついでにお土産もよろで」

 藩王にやわらかく釘を刺されながらも、久堂は有力者と言われる元締めとの話し合いを行う為にそそくさと執務室から退席していった。 途中で手土産を買っていかなければいけない。

一方のその頃…

〜SIDE Z〜(SS3)

「どうしてこうなった…」

 彼の名前は神崎零。今回の小話の主役である。
彼は、控室で頭を抱えていた。控室といっても、大きなテントの一部を布で区切った一部であるのだが…

「たしか、俺は小姐さんと一緒に国内での配布を手伝うように…そのはずだったのに」

 彼の呟いたように、本来ならば彼は桂林怜夜たちと共に国内の配布に参加する予定だったのだが、今いる場所は世界忍者国ではない。

 現在の彼がいる場所は、キノウツン国の国境そば。そこでは大きなテントをいくつも並べて縁日と言わんばかりの雰囲気になっていった。

「人狼傭兵たちに【忍者刀】とミリタリーグッズも配布したいから予算ちょうだーい、おねーちゃーん。」

 元人狼傭兵頭の大神重信が藩王である結城由羅に申請を出してからかなりの月日が経っていた。様々な問題があったが、時間を経て配布できる状態になった。

 しかし、人狼傭兵は現在キノウツンに滞在している。ここにおいて、キノウツン国内での配布活動を行うのは問題になると考えた摂政濃紺は、キノウツンの国境をでた直ぐの場所にテントに巨大なテントをいくつも張って『人狼傭兵への慰労イベント』ということで忍者刀の配布を行うことにしたのであった。

 テキヤの協力による人狼領地食品の屋台や、人狼領地出身アイドルによるライブが行われている。ちなみに忍者刀の配布はイベント会場の入口において受付し、帰るときに忍者刀と配布アイテムのミリタリーグッズと引き換えということにしている。

 そんな中で、大きなステージ上では現在アイドルのライブが行われクライマックスを迎えていた。

 「なぜだ…なぜ俺がこんな格好で…うぉぉぉ〜」

 彼は国内方面のヘリに乗る途中でイキナリ意識を失った。目が覚めたときには既にこの服を着て控室で寝ていたのだ。しかも、妙に尻のあたりが痛い。まるで、何か注射されたかのように…

 神崎は立ち上がり、控室においてあった姿見の鏡で改めて自分の姿をもう一度見直した。もう何度目だろうか。本人としてはもう数えていない。

 彼の服装は、いつもの世界忍者の格好ではなかった。世界忍者のテイストを含めながらも、どうみてもあのイメージを付け加えてある…そう、あのチャイナ服のテイストが混じっているのだ。彼にとっては悪夢以外の何物でもなかった。

 本当だったら、断るのが普通であった。しかし、ここで現れたのがイベントの統括を任されていたくぅである。神崎からみたら、よりにもよってこの人物である。

「仔姫〜。メインのステージよろしくね。あ、いつもの熱血系のカラオケでいいからー」
「……断る…っていうか、この衣装はなんだ!この衣装は!」
「え?この間パンツ一丁だったから、せっかく用意したのに…チャイナ忍者こと忍チャイナ(命名:松永)の」
「まて、なぜ用意されている!そして、このデザインはなんだ!このデザインは!!」

〜チャイナ忍者〜
いつもの赤と青を基調にした服をアメリカン忍者と称するなら、これはまさしくチャイナ忍者だった。
長い真っ赤なマフラーには黄色い星。
ツルツルと光沢のある生地に精巧な(動物・唐草などの)刺繍。
和服のような正面の合わせの代わりに
詰襟とゆったりした袖(パターンAカンフー着)
ぴったりとした上半身と腰から下のスリット。(パターンBドレス)
帯ではなく、紐で編まれたチャイナボタンで留めているところが間違いなくチャイナだった。

ご丁寧に、髪が短くて三つ編みやおだんごにできなかった部分は、猫耳(つけ耳)の周囲に共布のリボンを結ぶことで補っている。
ネタの為には抜かりのない世界忍者国製だった。手間以外は材料費もあまりかかっていない。


6431.jpg 忍チャイナ:結城由羅

「せっかくと団長とカヲリさんが用意してくれたのに…もう、仕方ないなぁ…よし、わかった!(思いついたように、手を叩き)」
「わかってくれたか!」

 そういうと、くぅは閃いたかのように傍にいた松永に耳打ちするとにやりと笑ってみせた。それこそ神崎にとっては悪魔の笑みに見えたにちがいない

「わかった、じゃぁカメラをまわそう!"世忍DOでSHOW"で流す!(キリッ)」
「な、なんだってーーーーーー!でも、誰がカメラまわすんだよ!」
「大丈夫、松永さんがいるから!」
「どうしてこうなったーーーーーーー!」

※説明しよう。"世忍DOでSHOW"とは、世界忍者国で流されているてーべー番組である。いわゆる旅番組のはずなのだが、まるでコントのような笑いでソコソコの視聴率をとっている番組であった。

「「おつかれさまでしたー!キンキンに客席温めておいたんで、メインこれからです!ががんばってください!」」

 今回のライブにゲストアイドルとして招かれた人狼領地出身のメイ・リンと今回はその相方として選ばれた卯月律が、スタッフにほとんど芸人のノリ挨拶をしながらステージから降りていくのが聞こえてくる。

 メインへの残り時間はあまり残されていない、そんな中で神崎は一度瞑想をするように目を閉じると呼吸を整えて覚悟を決める。…まぁ、ぶっちゃけると開き直り(自棄)なのだが…。

「よし、もう矢でも鉄砲でも持ってこい!カメラちゃんと回してくださいよ!カラオケでいいなら、いつものレパートリーで!熱血系で〆ますからね!バックダンサーさん4649!」

 チャイナ忍者の衣装に身を包んだ神崎は、覚悟を決めた表情でステージへとあがっていく。

彼の願いはただ一つ…

「レイちゃんが世忍DOでSHOWを見ませんように……」

 一週間後、レイ(VZ)に番組見られないように夕方からのデートへ誘う神崎の姿が見られた。(もちろん、藩王以下の面々が覗き見していたことは言うまでもない)

〜SIDE S〜(SS4)

「…………呼んだ?神崎君…」

 桂林怜夜が、おもわず声に出して呟くと近くで作業していた弓尾透が不思議そうにしていて

「どうかしましたか?団長。神崎くんだったら、人狼の面子に連れて行かれたじゃないですか。眠らされて…しかも簀巻にされて」
「あ、そうですよね…聞こえるはずないですよね…。いや、いつもの『どうしてこうなったー!』ってのが聞こえたような気がするんですよ。気の所為よね、気の所為…かなぁ…」

 此処は世界忍者国特設会場。

 ここでは、世界忍者たちに忍者刀を配布するためにやはりイベントが開催されていた。ここで人狼傭兵と違うのは、お祭りというよりは研修会みたいなものになっている点であろう。

 話にでていた神崎は本当ならこちらのサイドで忍者刀を配布する予定だったのだが、輸送用ヘリに乗ろうとした瞬間に話しかけていたくぅの手の内にあった注射器によって眠らされ人狼サイドのヘリに運ばれていった。

 その一部始終を後ろから並んでヘリに乗り込もうとしていた怜夜は『なんかどっかの飛行機嫌いの軍曹さんみたい…止めようかなぁ…まぁ、面白そうだし…ま、いっか。いいですよね』と判断して今に至る。ちなみに、その彼は現在忍チャイナの格好でライブ中なのだが、彼女たちがそれを知るのはもっと後のお話。

「しかし…今回の忍者刀の配布って、忍術研修会と装備更新も兼ねてるから助かりますね。最近、『新しい世界忍法ができたのでみてください!』って投書が目安箱に多くてどうしようかなと思ってたんですよ」

 世界忍法…それは、世界忍者が使う忍法である。通常の忍法もあるのだが世界忍者が使うので世界忍法と名付けられている。世界忍法の特徴は、古来より世界忍者に伝わる世界忍法に自分でアレンジを加えることができるという点である。なので、世界忍法とつけられる忍法の数はかなり多い。

 基礎となる古来よりの世界忍法は、表の体術52系・裏の忍術48系そして、古来より文章化されていない口伝と言われる秘伝8系の計108なのだが、それにアレンジを加えた個人忍法が存在するのだ。

 新しい世界忍法と認定されるには、世界忍者のハードルは高く設定されている。

・世界忍者として有益なもの
・忍法による資源消費が節約できるものが望ましい
・世界忍者国の信念に背かないもの
      ...etc

 「まぁ、今回の忍者刀の配布である程度減るとは思うんですけどねー。ほら、あそこで練習してる忍術を新規登録に申し込みしようとしてた人もいると思うんですよー」

 そう言った弓尾と一緒に怜夜が広場の方をみると、愛する旦那であるロイ・ケイリンが新しい忍者刀をもった世界忍者たちに使用方法の伝授を行っていた。背後には大きな壁が用意されているので、『釣り刀の法』を教えようとしているのが見てとれる。

「この忍法で大事なのは紐でござる。紐の長さを間違えると足場として使っても引き上げられなくなるでござるからね。ちなみに、拙者はこの忍法を使ってハニーの元に毎日通っているでござるよ」
「「はーーーい(くすくす)」」

 そんな説明を聞いた瞬間の怜夜の動きはそれは早かった。弾丸を超えるスピードでロイの後ろへと回るといつの間にか持っていたハリセンでロイの頭を全力でひっぱたく!

「だれがハニーですか!だれが!」

 その時、誰もが認める夫婦漫才(ただし、奥さんは否定)を始める二人の様子を遠くのフェンスから面白がって見ている人物がいた。

「おー追いかけっこまで始まった始まった。やっぱりあの二人はこうじゃないとねー」

 フェンスに寄りかかるように眺めているのは、本来ならば今の時間は執務室で決裁を行っているはずの藩王結城由羅その人であった。キャッキャと喜びながら二人の様子を眺めている由羅にある人物が気づくと由羅に声をかけてくる。

「あれ?藩王さま?…たしか、今…決裁中じゃなかったんですか?あの部屋中にある高く積まれた書類の…」
「あぁ、徒理流さんか。あれ…あれは終わらせてきたよ」
「…へ?終わらせてきたって…あの量をですか!?」

 配布された忍者刀を腰に差した徒理流が声をあげて驚くのも無理はなかった。国内護民官用の決裁書を持っていく時にチラッと眺めただけでも普通だったら3日以上かかる量である。そんな量をあれから数時間で終わるとは到底信じられなかった。

「うん、だって〜ボケもツッコミもオモチャもいないんだもの。一人じゃやってられないから、ちょっと集中してこなしてきた」
「す、すごいですね…(ボケもツッコミもオモチャも…団長のことを指してるんだろうなぁ…)」
「まぁ、集中すれば直ぐにできる量だったしね。ただし、5分間集中したら1時間くらいは集中できなくなるんだけどねー」
「へぇ…(まるでどっかの兎と虎みたいだなぁ…)まぁ、終わったのだったら問題ないですけどね。あ、そうそう聞きたかったことあるんですけど」

 そう言いながら徒理流は忍者刀を持ち出すと、柄の部分を由羅に見せるように差し出した。

「ここの柄の所、なんか仕掛けしてないですか?説明書には書いてなかったんですけど、なんか仕掛けしてあるのが見てとれるんですが…」
「お、さすが徒理流さん。いいところに目をつけたねぅ。これは裏技ってほどじゃないけど、説明書にはワザと書いてないんだよね。極限状態でわかるみたいな仕掛けにしてるのよ」

 そういいながら由羅が徒理流の持っていた忍者刀を持つと、柄の部分をカチャカチャと弄りだすと柄の部分が外れて中の物が由羅の手に握られる。それを見た徒理流は『あっ!』と【驚きの】声をあげた。

「これこれ、全員のにこれを入れてあるのよね。ちなみに祈願はもちろん生きて帰ってくること」

 由羅の手に握られていたのは小さなお守りであった。このお守りが全ての忍者刀の柄の中にあると徒理流に説明すると、さらにお守りの中を開けて小さな粒のようなものを見せてみる。

「中に入っているのは乾燥させたベマーラの種。苦いけど栄養があるのよね。まぁ、非常食かわりかな…。埋めれば、大きな樹にもなるしね。世界忍者も人狼傭兵もみんな欠けることなく生き残って欲しいのよ。たとえ【世界のおわり】が近づいているとしても…」

 そう説明する由羅の顔は国を背負う藩王ではなく、一人の母の顔だったと後に徒理流は語っている。

/*/

友誼の証と共に

 なお、忍者刀には番号を振っているのは先に説明したが、この番号の上位は世界忍者国に関わっているACEへの友誼の印として藩王自らの手によって譲渡されている。装備に関しては各自の自由なので、あくまで名誉的扱いな忍者刀も存在する。(大神・桂林の両名は副王(仮)ならびに騎士団長という役職についているため下賜された。)

シリアルナンバー:保有者
0000:御神体への奉納
0001:結城由羅
0002:くろじゃー
0003:佐々木哲哉
0004:大神重信
0005:ロイ・ケイリン
0006:須田直樹
0007:エミリオ・スターチス
0008:優羽玄乃丈
0009:玖珂光太郎
0010:桂林怜夜

――――――――――
製作者リスト
技族:くぅ、結城由羅
文族:久堂尋軌
協力:桂林怜夜、以下世界忍者国一同