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イベント/59/長距離攻撃/羅幻王国部隊/なし

イベント/59/長距離攻撃/羅幻王国部隊/なし

イラスト

なし

SS・RP

 ごてん、と足元に転がったそれを見て、その場に集まっていた彼らは一様に呻いた。緩やかな円錐の形をしたそれ――緑色の塗料が色鮮やかに塗られ、挙句所々に「危険」だの「取り扱い注意」だの「お子様の手の届かないところで運用してください」だのの文字が書かれている。全員が最後の一文を書いた奴の頭の中を覗いてみたい衝動に駆られたが、すぐに無駄だと思い直した。にゃんにゃんの技術者は、基本的にそんな感じのユーモアと呼べなくも無い独特な感覚を持っている。

「……ええと」

 途方に暮れていても仕方ない。いち早く我に返ったコウはそう呟きながら、足元に転がったそれを持ち上げた。ずしりと思い。

「これ、どうしましょう」 「どうしましょう、っておまえ」

 乾いた声で言ったのは、どこか引きつった顔をした宋である。  ほえ、と首を傾げたコウからじりじりと後ずさりながら、宋は続けた。

「どうしようと勝手だが、落とすなよ? いいか、絶対に絶対だぞ?」 「やだなぁ、宋さん。そんなに怯えないでくださいよ」

 陽気な声で茉乃瀬が言った。こちらは逆にコウに近づき、その手の中に納まったそれを興味津々な様子で覗き込む。

「うわ、凄いなー。ここまで本格的な砲弾は初めて見たよ。重くない?」 「割と重いですね」 「あなたたち、何をのんきな……」

 涼しい顔をしたままで綾人が言うが、その額に光った汗をコウは見逃さなかった。

「いえでも、信管が作動してませんからね。このままじゃ唯の鈍器ですよ」 「そうそう」

 満足そうに頷いた茉乃瀬は、ひょい、とそれをコウの手から掴み挙げた。自分の手の中でくるくると回し、まるで新しい玩具を買ってもらった子供のような輝かしい微笑を浮かべる。

「うーん、成形炸薬弾とはねー。四条君も中々侘び寂びっていうのが分かってるじゃない」

 コウに弄ばれるそれ――成形炸薬弾。俗に言うHEAT弾だ。無反動砲によって射出される典型的な砲弾である。  塹壕の中で顔を付き合わせるコウたち羅幻王国の面々のすぐ傍に、そのHEAT弾が納められた木箱が山積みにされている。その数、ざっと百。直撃させれば同じ台数だけの戦車を軽々と破壊しうるそれらは、正直、10人に満たない人員で使い尽くすには過ぎた火力だった。

「それだけではないと思いますけど」

 既に火薬庫にすら近いそれらを視界の端に捕らえながら、ヴィスは口を開いた。その視線は、木箱の炭に焼印された「四条より」という文字をしっかりと捉えている。

「先ほどの戦闘では、正直、硬目標に対し遠距離から有効な攻撃を加える手立てがありませんでしたから。急場しのぎでしょうけど、少なからず有用だと思いますよ」 「そりゃそうだろうが……あのクソガキ、やることが極端すぎるんだよ」

 いまだに引きつったままで文句を口にする宋。そんな宋を尻目に、ヴィスは別の木箱を開封し、ああ、と満足そうに呟いた。

「流石ですね。無駄に抜かりが無い。ちゃんと人数用のバズーカも梱包されています」 「だねぇ。ま、折角だから有効利用しなくっちゃ」

 にこにことバズーカに手を伸ばす茉乃瀬。その瞳は、静かにハッピートリガーの光を灯しつつあった。

「わざわざこんな所までしゃしゃり出て来たんだもの。敵さん、せめて一発ぐらいぶん殴らないと格好がつかないじゃない」

製作者:四条あや@羅幻王国

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Last modified:2008/05/19 03:11:41
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