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国内イベント/27/桂林怜夜編

国内イベント/27/桂林怜夜編

「お中元ー!」

 世界忍者国藩王こと結城由羅が、謎の単語とともに部屋――世界忍者大学学長室に入ってきても、桂林怜夜は動じなかった。

「はーい」

 書類から目を上げ、にっこりとほほ笑む。要はこういう乱入に慣れてしまっているのであった。

「何を送れば宜しいでしょう?野菜ジュース?」

 小首をかしげて尋ねる怜夜に、由羅も小首を傾げた。

「健康のため?」
「女性用のふんどしとか・・・健康に良さそうです。締め付けないし、腹部を優しく包むし」

 由羅の首の傾きがさらに角度を深めた。

「誰にじゃ。ミチコさん?」
「・・・・女王様へのお中元じゃなくて?」

 話がかみ合っていなかった。当たり前と言えば当たり前である。

「いやいや。ほら、前から募集してる『お中元大作戦』、ぼちぼち贈ろうかと思ってさ」

 と、ようやく藩国ロビーに掲示していた募集広告のコピーを広げて見せる由羅。遅い。

「とりあえず、エドしゃんがみんなと作ってくれたアロマキャンドルはある。あとひろきしゃんがうどんも用意はしてくれたんだよね」

 それだけでもいいような気はするが、一応他にもないかと相談しに来た、という話であった。まあ、そういうのを口実に、大学で執務している団長をいじりに来てるだけという話もなくはない。

「社長さんにはお酒。須田さんに食べ物。くろじゃーには筆と墨。くらいでしょうか」
「ふむふむ」
「エミリオには・・・うーん。
 エミリオは気持ちの篭ったもの、ですね。温泉一泊しても仕方ないし・・・・・」
「うーん」

 由羅は腕を組んで悩み始めた。それを見つつ席を立ち、隣の控室の給湯設備でお茶を入れ始める怜夜。

「結構、単純なものがよさそうです」

 言いながら出されたお茶を見て、由羅はうなずいた。

「ありがとう…そうだ、紅茶とかどうかねぇ」
「そうですねぇ、紅茶+勲章、とかどうでしょう」
「勲章、はお中元としてはどうかな。紅茶とお茶菓子くらいがいいんじゃね?」
「無難ですね」
「うん」

 お茶を飲みながらまったりとした時間が流れる。ふっと怜夜が思いついたように言った。

「あ、花火とかはどうでしょう?外国に無いですし」
「ほむ」
「単純に遊べそうです」
「いいかもねぎ」

 由羅はメモに花火、と書きとめた。そして、次の発言に吹く。

「くろじゃーは、できれば脱がせられそうなものを・・・・」
「いやいやいや」
「じょーおーさまの大好きな水着ー」
「君はいったい私を何だと思っているのかね」
「えーだってー」
「却下だ。却下」

 怜夜はしばらくぶつぶつ言っていたが、お茶を一口飲んで話題を切り替えた。

「墨とか硯とか、好きな人は好きですけどね。セミの形をしていた墨とか、カエルの形の硯とか」
「ああ」
「中国だと縁起物なのですよ。いい硯って」
「へー」
「なんとなく、黒なのに知的なイメージのくろじゃー。囲碁セットとかもいいような気がします」
「まあ、こないだ欲しがってたのも書物だったし、バルクとチェスとかしてたもんねぇ」
「渋いですよねぇ」

 そう、以前クリスマスプレゼントには欲しがっているという「」をプレゼントしたのだった。バルクとチェスをしていたのは、黒のもとに突撃したときだったか。

「写本もしてましたしねぇ」
「写本するかどうかは知らないよ!…あ、してたか。どっかで見た記憶あるな」
「六経か何かを写本してました。小笠原で。凍矢くんと苛められた時に」
「ああ」

 由羅はぽむ、と手を打った。

「書物のプレゼントでもいいですけど・・・・・黒っぽくないなぁ」
「書物はいっぱい種類がありすぎて、どれがいいかわからないよねー」
「古いの好きですよね。それも戦法の様なものが書かれたものが。普通に論語でもいい気がしますが。孫子とか」
「五輪書(ごりんのしょ)とか」

 うーんうーんと悩んで、あっと怜夜は指を立てた。

「・・・図書カードをプレゼント」
「www<図書カード」
「既に黒じゃない(笑)」

 由羅は苦笑いした。

「黒イコール脳筋というわけでもないと思うの!…多分」
「でも、それ以外の黒って・・・・・・」

 二人は黙りこんでしばらく同じものを想像したあと、首をふるふると振った。いやなものを想像してしまったらしい。

 こほん、と咳払いして由羅が話を続ける。

「世界忍者大学に寄贈して、そっちにたくさんありますからどうぞ、とかはどうかな」
「世界忍者大学来訪は、私が悲しいのですが・・・・・」
「なんで?」

 きょとんとする由羅に、怜夜はむーっと口をとがらせて見せた。

「像が乱立してるからですよ!決まってるでしょうー」
「wwwwww。慣れすぎて忘れてた」
「慣れないで下さい・・・・・で、旦那には罰として、お中元なし。日向さんには何がいいかなー」

 それを聞いて由羅が「きゅっきゅ」と笑う。本人いわく「きゃっきゃ、が詰まった感じの笑い声」らしい。笑われた怜夜がさらに口をとがらせた。

「なんでー」
「罰ってのが面白かった」
「えー。像たくさんつくったのは旦那が悪いのです、きっと」
「いや、一応あれは私からの贈り物だお」
「どっちでも酷いです・・・・・・」
「えー」

 にやにや笑いを強める由羅。

「地味にひっそり暮らしたいのに・・・・」
「む・り」
「・・・・・離婚すればあるいは・・・・」
「おおーい」
「だってー…まだ指輪貰っていないからチャンスです」
「こらこら」

 例によって例のごとく暴走する怜夜をたしなめつつ、由羅は話題を転換した。

「カマキリさんたちって生肉主食?」
「動いてるものを食べちゃうって書いてましたね。リアルカマキリと同じでは」
「虫?」
「牛は食べてましたよ。カマキリさん。動いているもので、生きてるものなら一通り、では」
「お中元には贈りにくい…」
「難しすぎませんか?」
「うーん…それこそ勲章かしらね。メダルみたいなの」
「食べられないですよ?」
「食べられないけど、別に食べ物である必要はなんじゃね…?」
「あ、そういえば」
「食べ物が無難と言うだけ」
「食べ物以外に興味があるのかどうかが不思議なカマキリさんです」
「経済活動もしないらしいからね…そうすると、感謝の意を直接表したものかなぁ、と」
「メダルチョコが浮かびました・・・・」
「チョコ食うの?」
「さあ?齧ってみて『食べられない』ってがっかりされるのも悪いので、保険です」
「うーん、『食べられません』とは書いておくかな…チョコは溶けたら困るし」
「氷砂糖で作っておくとかw見た目も綺麗」
「水に溶けるお」
「水がありましたか・・・・」
「ということで、悩むねぇ」
「ですねぇ」
「うーん」

 腕を組み唸る二人。まあ、それはそれとして、と怜夜が話題を変えた。

「日向さんのところには、首輪ならぬロケットをー。そして、カヲリさんの写真を入れておくのです。カヲリさんが里帰りから戻る前に!」
「www」

 恥ずかしがるカヲリを想像してによによする二人であった。


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Last modified:2009/08/17 01:48:35
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