国内イベント/31
お盆でのある風景
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イラスト:くぅ |
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/*/ …とてかて…とてかん 木を打つ音が広場に響いていた 「何をつくってるんですか?」 旅人の様な服装の男性は、露天の物売りに問いかけた 「あぁ、櫓だよ」 「??」 にかっと、笑みを浮かべた物売りは商売人だった 「…そうさなあ、うちに、あと3日もとまってきゃわかるよ、うち、宿屋もやってるんだよ」 「…、まぁ、急ぐわけでもないし…、頼もうか」 手を打って喜ぶ物売り 「よしっ、決まりだ。おーい、お客様をご案内してくれ」 物売りが2階に声を掛けると、子供が2人駆け降りてきた。 「「おきゃくさまっ、いらっしゃいませっ」」 にこっと、旅人の手を左右から取る子供達に案内され、旅人はふと笑みを零した。 【同日、夜】 夕飯に出されたものは、取れたての野菜と、どこか危険な雰囲気を醸し出している缶詰め、白米、味噌汁 旅人は野菜に箸を伸ばしつつ、給仕をしている子供に問いかけた 「近々なにかあるのかい?」 茶を湯のみに注ぎつつ、子供はきょとんとした目を旅人に向けた。 「あしたは、むかえび(迎え火)をたく日だよ〜」 「…むかえび?」 「えとね、お野菜にあしをつけておうまさんとかうしさんにして、おかえりなさいの目印にむかえびなの」 ?? わからない 首を傾げる旅人 と、その時、からりと戸が開き、盆を片手に女性がくすくすと笑いながら入ってきた。 /*/ 盆を片手に入ってきた女性は危険な雰囲気の缶詰めをそれとなく回収しつつ 「明日はお盆なので、野菜で迎えの乗り物を用意して、目印におがらを焚いて家に帰れるようにするんですよ」 「…ほぅ…、で、お盆てなんですか?」 「死者の国の扉が開き、数日間帰ってくる期間をお盆といいます」 きちんと食事も用意するんですよ と、小首を傾げながら言う女性 「し、死者の国の扉ですか」 「じごくのかまのふたがあくんだよ〜」 無邪気にいうこども 「おじいちゃんとか、みぃんなかえってくるの。だから、お祭りをするんだよ〜」 「広場の櫓の周りで盆踊りをしたりするんです。屋台も出るんですよ?それまでいらっしゃるんですか?」 すっ、と立ち上がる女性は旅人に問いかけ、子供の手を引いた 「いらっしゃるやら、お盆おわるまでゆっくりなさってくださいね」 こくりと頷き、旅人は膳の続きに箸を伸ばした /*/ 【一日目】 町の中を見て回った旅人は、完成した櫓とそのまわりでキョロキョロと何かを探している女性を見た (美人だ。) しかし、次の瞬間、旅人は我が目を疑うこととなる さっと物陰から半裸の男性の彫像を抱えて、猛ダッシュしていったのだ (……。私は何も見なかった) 旅人はブツブツと自己暗示をかけることに集中した 真相:藩王様の仕掛けた彫像の噂を聞いた団長様が回収にあらわれ、回収後 抗議のために猛ダッシュ しかし、そんなこと 旅人は知る由もなく 世界忍者国の蒼天はゆっくりと橙に染まり、そして… 「?」 宿泊先の宿の軒下、仄かに揺れる一つの火 放火かっ!? と駆け寄った旅人は、宿屋の一家が何か白いものを燃やしているのをみた。 「あ、あせりました」 「??どうなさったのです?」 肩で息をする旅人と、白いものをくべる物売りな宿屋の主 「放火かと…」 旅人の言葉を聞いて、小さな笑いが広がる 「迎え火ですよ、迷わないように」 笑みを浮かべる主人は少し寂しそうだった 旅人はじっと火をみつめ (迷わずに、帰ってくる場所は体がなくなっても残るのか) と、胸の奥がじんわりと暖かくなるのを感じた おがらの燃え尽きた後、誰もいなくなった宿屋の軒下に 一匹の蛍がついっと舞い込み明滅したことは誰も知らぬまま、ゆっくりと夜は更けていく /*/
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イラスト:くぅ |
【2日目】 今夜は盆踊りがあるらしい 宿屋の主が浴衣を貸してくれるということで、置かれた濃い藍色の浴衣をぼーっと眺めているとカラリと戸が引かれ、ほっそりとした青年 がすっ、と入ってきて、浴衣を手にとって、旅人に微笑んだ 「着方がわからないんだ…」 青年は笑みを深くし、浴衣を広げ、手招きをした どうやら着せてくれるらしい 合わせられる布 無言の空間 一言も会話のないまま、旅人は浴衣を着せられ、くるりと青年の前で乱れがないか回された 満足げに頷いた青年に背を押され、旅人は黄昏時の街に明日を向けた。 様々な屋台が軒下を連ねるなかを歩いていると、ぽんやりとした美人が白い大きな獣と笑いながら屋台を見て回り、楽しそうに過ごす姿や 企画書を片手に走る青年と、女性物の浴衣を着せられて逃げる少年と、楽しそうに追いかける女性の姿が見受けられた 。 縁日で金魚すくいの水に落ちる少女、危険な香りのする缶詰めを取り上げられ、取り返そうとする男性と缶詰め片手に説教をする男性 喧騒はたえない どの光景にも、皆笑っているところをみるといつものことのようだ。 /*/ 喧騒から離れ、灯りをぼぅっとみていた旅人に、聞き覚えのある子供の声がかかった 「おじちゃん、ゆかたじぶんできれたんだね」 苦笑しつつ首を横に振る旅人 きょとんとする子供に、少し恥ずかしくおもいながら「着せてもらったんだよ」と。青年の話をした。 子供の目は話をきくにつれて、大きく見開かれていった 「おにいちゃんだ…」 「??」 「おにいちゃんがかえってきてたんだね。」 子供の話によると、ゆかたを着せてくれた青年と偵察の任務から帰らない兄の容姿がそっくりなのだという。 迷わずかえってきてたんだね と笑う子供と、手を繋いで宿への道をあるいた。 明日で、帰ってきているものがもとの場所に帰る日だね。 と話をしながら。 子供が、旅人から聞いた話を父親にし、父親が涙ぐんでいたことを、蛍だけが見ていた。 /*/ 【3日目・最終日】 廚で寂しそうに、膳を用意する後ろ姿 用意されている膳は、殺生をせずに作られた精進料理だった きんぴら、煮っ転がし、西瓜、煮浸し等が盛られた膳と、椀に盛られた落雁が、誰にも食べられぬまま座敷に置かれていた 旅人はそれを横目に見ながら、表にでた。 おがらを焚く4人の姿が見えた 送り火を囲む姿は少し寂しそうで 旅人は声をかけることができなかった 着付けてくれた青年は、あの時点でまだ帰ってきていなかったらしい つまり彼は… 送り火と共に、蛍がつぃっと空に舞い、月の光の中いずこへかと飛び去った 皆が寝静まった宿屋の食堂で 手酌で呑む姿があった 宿屋の主人だった 旅人はこっそりと、そろそろ発つことを告げた 日が昇る前に出る。と。 突然だ。と目を見開く宿の主は、「気をつけてお帰りくださいませ」と、酔いで少し潤んだ目でそう応えた。 そして、「さっきまで息子が帰ってきてたみたいなんですよ」と、昨日子供から聞いたことと同じことをいった。 /*/ 子供と、宿屋の主の言う 青年の特徴に、旅人は思うところがあった 世界忍者国の国境あたりで、道端で寝ていた人と、似ていた うつ伏せて寝ていたので着付けてくれた青年と同一人物かはわからないが、見に行く価値はある とおもい、旅人は急いで宿を辞してきたのだった。 「たしか…このへ……いた」 殆ど変わらぬ位置にいた。 あれ?4日たってるんだが…。と思いつつ、近づくと (くぎゅるるる) 「…?」 試しに干菓子を近づけてみると、手だけが追いかけてくる しばらくそうして遊び、青年の口に干菓子を突っ込む 「………」 「…げほっ」 盛大に噎せた… 慌てて水を出した旅人の手から水筒を取り、水を飲み干した青年は、一息ついて 「あれ?」 といった。 /*/ 結論だけ言えば、青年はやはり宿で会った“彼”だった。 任務完了後、ペース配分を誤った彼は路傍に倒れ、タイミング悪く、 死者の魂につられ、生霊として引き摺られ半幽霊のような状態になっていたらしい。 青年は、困ったような笑みを浮かべて、宿の方面に、頭を数度下げた後、駆けていった。 「ふふっ、これで、ミッション・コンプリート」 青年がいなくなったあと誰もいなくなった街道で、真っ赤なマフラーが翻った気がした。 死者(生霊含む)が帰ってくる3日間も、世界忍者国は平和である。 それは、誰かが影に……… いるからかもしれない。 (作:エド・戒)
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イラスト:くぅ |
お盆ならびに盆踊りを国内で行うものとして、世界忍者国政府は蝋燭や紙などの生物資源ならびに食料を国民たちに提供した。
慰霊祭のメイン会場を人狼領地で行うことで、人狼傭兵と世界忍者は姉弟の関係であったことを思い出させるためでもある。この度の戦闘により、多くの者が黄泉の世界へと旅立った。黄泉に旅立った者たちに世界忍者、人狼…いや人類の垣根などないに決まっている。
世界が忘れても、忘れてはならない関係がここに存在させることを知らしめていた。
国民全員が、慰霊の心を持って…
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