状況:現在(2014.06)
場面:撤退戦
爆発が起きる。それを光源に影が走る。
「撃て、弾薬を空にしろ!そうじゃなければ撤退は許さん!」隊長が怒鳴る。
「了解!」命令違反は無く全ての傭兵が景気良く弾をばらまく。
弾薬を空にしなければ撤退できないというなら、撃ち切れば撤退できるという。
傭兵にも命をかけたいものも有る、が。これは出来れば命を賭けたくない戦いであった。
「しかし、あんな化け物相手に効くのかねえ?」と傭兵がぼやく。
「問題ないそうだ。ウチの裏の参謀が言っていた。アレにはアレと同じ位の化物が援軍としてくる」
「裏の参謀?あの星ばかり見てる奴?」
「ああ、結局のところ人間の及ばない範囲での戦略の方向性を決めてるようだね」
「な、その援軍とやらはいつ来るんだ?」
「そんなもんが来てもいい頃だと思うが」
うらがえりと呼称されるそれが獲物を見つけたように殺到する。この世界の子供だ。
「ちっ!嫌なもん見ちまった!」
「まだ撃ちきってないだろ?時間を稼ぐ!」
「アレ対策に、古式すぎる装備しかしてないのが恨めしい!FEGみたいな世界外規格装備を寄越せと何度も陳情したのになぁ!」
「恨むならそれも裏の参謀って奴のせいだ!」
傭兵はたまには金以外のことにも動く、いやむしろ金以外で動くからこその戦力になる傭兵だ。
本当に命を適正な値段で売れば、国庫はアッサリと傾いてしまう。
彼らはそんなバーゲンセールを毎日行う人間であった。
数えきれない程の目を持っている、手のような触手を突撃銃で撃つ。
触手は弾によって飛び散ることもなくそれを弾くが、質量を相殺しきれずそれがねじれる様に弾ける。
「要救助者確保!」傭兵が子供を抱き上げる。
「逃げるぞ!」その相棒が背中を守るように援護射撃を始める。
「クソッ!やはり全然効かねえ!」
「ファック!裏参謀!恨むぞ!」呪詛を飛ばす子供を抱いた傭兵。
うらがえりが傭兵と子供を飲み込もうとその巨大な体躯を展開させた時、
天が割れた。
そこから飛来する強化服を着た4人の戦士。
ただの人の業でうらがえりを殲滅する。
その所要時間は170秒、撤退に8秒。裏の参謀の予言通りに来た援軍は、これまた予言内容の180秒以内に消えた。
後にはただの肉塊だけが在った。
傭兵は助かったが、その事実に戦慄する。
助からない状況をひっくり返した人外の如く存在。そしてそれを予言した参謀。
一体何が起きているのか分からないが、己の矮小さ、無力さが恨めしかったが人間の枠を外れて何もかも守れる力が欲しいとは思えなくなった。
編集パス:1111