イベント/59/避難/世界忍者国の国民避難誘導/なし
イベント/59/避難/世界忍者国の国民避難誘導/なし
イラスト
SS・RP
根源種族の侵攻が迫る中、宮中では連日のように対策会議が行われていた。徹夜続きの官僚達は疲労困憊であったが、それでも彼らの目には一様に光を灯していた。必ず生き残る。それが彼らの誓いである。
「よし、ではカヲリ。卿には国民の避難作業の統括をお願いする」
みはえる摂政がそう言うと、いままで宮廷画家として部屋のすみっこで会議のスケッチをしていたカヲリが飛び上がった。
「は!? 私ですか!?」
「人手が足りないのだ。手を貸してくれ」
机に座っていた閣僚達が一斉にカヲリを見る。その目は一様に「助けてくれ。あるいは1時間でいいから眠らせてくれ」と語っていた。さっきまではその瞳には光が灯っていた気がするのだが、気のせいだったのだろうか?
沈黙を肯定と受け止めた摂政が続けた。
「なに、国民を安全な場所に避難させるだけだ。サポートもつけるし、それほど大変な作業ではない。責任は大きいがな」
「その責任が問題なのでは? いや、その前に、どこに避難させればいいんですか!」
その言葉に、摂政を始め閣僚一同が沈黙する。え、なんか、言っちゃ行けないこと言っちゃったのかなとカヲリはうろたえた。もしかしてもう逃げ場とか無くて、私はなんていうのかな、スケープゴート? にされるの? あれ? 意味合ってるかな?
カヲリが言葉の定義について混乱を極めていると、目の下に大きなくまが出来ているみはえる摂政は優しく笑った。激務のさなかに、癒しを見いだしたような笑みだった。
「そうか、卿はまだ知らなかったか。元は旅の絵師であったな」
「なにをですか?」
「あれがなにかはわかるか?」
みはえる摂政は会議室の隅にある銅像を指さした。もちろんなにかはわかる。
「ロイ像……ですよね?」
「そうだ」
摂政はロイ像の手前まで歩くと、その胸に手を当て、強く押した。
「ふん!」
「あの……なにをしてい、る……の? ……!!!!」
ロイ像ががこん、と音を立てて30度ほど倒れる。と、同時に像の後ろの壁がごごごご、とせり上がり、下に続く階段が現れた。
「な、なにこれ!!」
「見ての通り、地下核シェルターへの入口だ。ロイ像は、国民避難用核シェルターの入口開閉スイッチなんだ」
「え、も、もしかして、108個のロイ像全部が!?」
「そうだ」
カヲリは硬直した。カヲリの中の常識を遙か彼方で上回っていた。なんとか首を動かして摂政を見る。
「あの、ひょっとして、ロイ像のスタンプラリーって……」
「ああ、もちろん、レクリエーションを兼ねてはいるが、本来の目的は緊急避難経路の把握を国民に浸透させる為だ。初級コースは一般国民用の設備が整っているシェルターが配備されていて、難易度が高くなる程、軍事施設や国政運営用の機能が整っているシェルターになっている」
頭がクラクラする。
「……ええと、じゃあ、最近みはえる摂政が初級コースを回っていたのは……」
「一般国民用シェルターの機能点検の為だが? 戦争が近いという情報が入っていたからな」
カヲリは膝から崩れ落ちた。あまりに深すぎる。深すぎてネタなんだかそうでないんだかもう分からない。
みはえる摂政は楽しそうに尋ねた。
「まさか、卿は、我が国が萌えと酔狂の為に、あのような像を108個も配置していたと思っていた訳ではあるまいな?」
(違ったんですか!!)
喉まで出かけた言葉を必死に押さえる。身体がプルプル震える。
「……で、私は何をすればいいんですか?」
摂政の顔がぱあっと輝く。
「そうか、手伝ってくれるか! では早速打ち合わせをしよう。まず卿には108個のロイ像の位置を全て把握してもらう必要がある」
「今からですか! 私まだスタンプラリー中級編までしかやってないんですけど!」というカヲリの声は閣僚達の歓声にかき消された。
戦いの準備はまだまだ続く。
作成者:世界忍者国/みはえる
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