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刊行物/神話集/獣たちとの契約

刊行物/神話集/獣たちとの契約

 偉大なる二匹の獣から生まれた「人」は、見る間に増えた。他の獣を追い出してまで増えようとする「人」を危惧して、その子に猫は問うた。

「我が子よ、なぜ、そんなにも増えようとする。なぜ、他の獣と分かち合おうとせぬ」

 偉大なる獣から生まれたゆえに、優れた資質で他の獣を凌駕していた人は、傲慢に言い放った。

「父よ、それは我らが他の獣より遥かに優れているからです。他の獣はおろかで弱い。われらの方が生きる価値があります」

 その言葉を聴いて、猫は毛を逆立てて怒った。そして、森と地を切り離し、地から、そして、夜からも「人」を追い出した。

「なんと傲慢な生き物よ。そなたは我が子でもなんでもない。弱いとそう言うた獣から追われ、食らわれるが良い」

 その言葉によって、地と夜の獣は牙と爪を与えられ、人を追った。人は泣きながら母の元へ逃げ込んだ。

「母なる猿よ。我らをお守りください」

 母なる猿は愚かな子を見つめた後、厳しく言った。

「そなたらが悔い改め、世界との共存を守るなら、妾と森は受け入れ守りましょう。したが、守れぬならば、安住の地はないものと思え」

 心から悔いて、人は言った。

「誓います。我らが傲慢でありました。すべての生命と世界を分かち合うことを誓います」

 母なる猿はこの言葉を持って地の獣と契約し、かくして、人は森に住むようになり、地は獣が統べるようになった。


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Last modified:2007/01/22 00:28:20
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