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公示文/20100516−01

公示文/20100516−01

猫士命名のお知らせ

国民のみなさま、T16をいかがお過ごしでしょうか。

T16にて新たに採用されました猫士につきまして、命名の儀を執り行いました。新たな国の仲間である「つるぎ」「あすか」「トール」の3名をよろしくお願いいたします。

20100516 藩王 結城由羅

命名儀式の様子

猫士の命名式典

蒼く晴れた空、春の澄んだ空気の中、式典用の礼服を着た藩王が、ひとつ溜息をついた。

「溜息をつくと幸せが逃げて行くんですよ」

「そういう君もしょっちゅうついてる気がするが」

「ついてませーん」

手伝うという名目で、藩王を飾り立てていた桂林怜夜が、そう言いながら溜息をつき、、そうになってあわてて口元を押えた。

「まあ、君んとこも大変だからな」

「何のことでしょう」

イライラした口調で返した後、いっそ(自主規制)くれれば、とか物騒な呟きを噛み殺しながら、怜夜が藩王の背中を押しやった。

「さあさあ、今日はおめでたい席なんですから、暗い顔はやめましょう」

「だな」

世相の暗さには陰鬱になるが、王たるもの、臣民に不安を与えてはいけない、、、と、また出そうになる溜息を噛み殺した。

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ドアを開け、謁見室に足を踏み入れると、そこにいた数名が膝をついて礼を取った。真中でぼうっとしていた3名、、、もとい3匹の新人猫士も、両脇から小突かれてあわてて膝を折った。

「くるしゅうない、面をあげい」

藩王がよそ行きの笑顔で言う。中の人的には、どこの時代劇かなとも思わなくもないが、まあこういうもんなんだろう、多分きっと。

「は。藩王さまにはご機嫌麗しゅう。本日は、猫士の命名にお時間をいただき、まことにありがとうございます」

ひざまずいたまま、付添い引率をしていた世界忍者学園付属寮の副寮長くぅが、口上を述べ上げた。ちなみに、寮長は大神だったが、例によって例のごとく「めんどくさーい、やーんぺ」とぶん投げたので、副寮長が寮システムの采配をすべて担っており、実質の寮長とも言っていい。今日も一応打診はしてみたが、忙しい―とぶん投げられたので引率をしてきた。とほほである。

(大神はいつか殺す)

ひそやかな殺意を眼に浮かべつつ、口上を続ける。

「ターン更新に伴い、ここにおります3名が藩国の猫士として採用されました。藩王さまには命名の儀をよろしくお願いいたします」

「うむ、あいわかった」

世界忍者国には人に混じって暮らす猫族がおり、それらも歴史的経緯から猫士と呼ばれている(近年は猫妖精と呼ぶのが正式とされているが、まだ名残が残っている)が、特に藩国に所属する猫士は特殊な存在である。具体的には、アイドレスのシステムに組み込まれ、アイドレスプレイヤーの使用するPC同様、通常のNWの世界の法則から外れる。不老であり、アイドレスを変えることにより人種や職業まで変えることができる。それは畏怖の対象であり、場合によっては嫌悪と憎悪の対象ともなる。

よって、その選別は慎重になされる。予めそのような運命に耐えられると判断され、実際にそのことを受け入れた猫族だけが猫士として採用される。その選別は、保育園の段階からおこなわれ、王宮付属の、そして、世界忍者学園付属寮と、成長過程でふるいがかけられる。

そのふるいをくぐりぬけてきたのが、今目の前にいる3名であった。それゆえ、その3名の目には強い覚悟の意思が浮かんでいた。

藩王は、3名を順にじっとみつめ、改めてその意思を確認すると、頷いた。王杓を振り、とん、と軽いステップを踏みながら歌う。

我らが愛する国土よ
新たなあなたの娘と息子
その名を今
あなたにお知らせします

舞いながら、藩王は一番右のオスの猫族に王杓で触れた。

第一の者の名は「つるぎ」
鋼のような意思の強さを持つ息子
曲がることなくあなたの民を守ることでしょう

次に、その左隣のメスの猫族に触れた。

第二の者の名は「あすか」
澄んだ瞳で明日を見つめ希望を歌う娘
あなたの未来を思い民を導くことでしょう

そして次、さらに左隣のオスの猫族に触れる。

第三の者の名は「トール」
森に立つ巨木のように静かに立つ息子
ゆるぎなくあなたに根を張り民に安心を与えることでしょう

そして、とんとバックステップで離れると、両手で王杓を掲げ、祈るように歌いあげた。

世界である我が国よ
彼らをあなたの子として受け入れたまえ
そして末永く愛したまえ

とん、と最後のステップを踏み、静かに止まる。王杓を下して目を伏せていた開くと重々しく告げた。

「これより、そなたらの運命は、我らが世界忍者国に結び付けられる。汝らは生きるも死ぬも我らが国と共にある。汝らの命は我が国の礎、汝らの力は我が国の剣、汝らが間違えば国も惑う。常にそのことを心に刻み、精進を怠りなきよう」

新たな猫士らが緊張した面持ちで口々に「はい!」と答える。のを見て、ふっと藩王はほほ笑んだ。

「うん、これで儀式は終わり。後はささやかな祝賀会があるから、くぅさんに連れて行ってもらいなさい。おめでとう」

「「「ありがとうございました!」」」

礼を言いながら最敬礼するのへ、手をひらひら振り藩王は出て行った。これからは無礼講。偉い人間はなるべくいない方がいい。

ドアを閉める前にちらと振りかえると、宴会場で待ち切れずにやってきた今までの猫士と犬士(合併のせいでなぜか世界忍者国には犬士がいるのであった)が、新人をもみくちゃにするところだった。

(文:結城由羅


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Last modified:2010/05/16 04:48:52
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References:[国営放送/政府広報] [猫士]