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国内イベント/27/エド・戒編

国内イベント/27/エド・戒編

「………お中元ってもう贈ったんですか?」

(……?う?)

 ある日藩国ロビーの前を横切ろうとして聞こえてきた声にエドはロビーを覗き込んだ。

(うにゅ?はんおーさまと尋軌さんや…どないしはったんやろ)

「まだ集まってないから贈ってない」

(お中元て…なに?)

 疑問に思ったエドはロビーをはなれて、教育局にいるであろう桂林怜夜の元に向かった。

「……うにゅ?まよった………?」

…が、教育局に着くにはまだ先が長いようだ

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「……はぅ…やっとついた…」

 エドが教育局に着いたのはロビーで会話を聞いた2時間後
いろんな人に道を聞き、最終的には見かねた猫士・式部に手を引かれて、扉前まで連れてきてもらうという有り様ではあったが、着いた。

(……コン、コンっ)

「……ん?はい。」
「すみません〜、桂林さん。お中元てなんですか?」
「……急にどうしたんですか?」
「えとですねっ…」

 エドがロビーで聞いた内容を説明すると、桂林はにこりと笑いながらお中元とは何かを教えてくれた。

「お中元というのはね、お世話になったひとにお礼をするものですよ。」
「…うにゅ?」
「…うーん。そうですね…「ありがとう」って言いたい人に、ありがとうをこめて何かをおくるんです。」
「……にゃっ!わかりました!ありがとうございますっ、ほしたら、桂林さんはロイさんにおくるですねっ」
「そうですねー。普段お世話になっていますものね。お酒でも・・・・・」
「なるほど、好きな人に特別に贈るものなんですねっ」
「違いますっ(赤面)」

 真っ赤になった桂林にお礼を言い、エドは城下の街にむかった。

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 城下でエドはまず雑貨屋に向かった。

「おねえさん、お中元てなにもらったらうれしいですかっ?」
「あらあら、おねえさんて…うれしいわねぇ〜、そうねぇ……普通はお菓子とかおくるけど…アタシはもらうなら癒されるモノが嬉しいわね…」

 雑貨屋のおかみさんは相好を崩してかがみこみ、エドと視線を合わせて、「てづくりとかどうだい?」とアドバイスをした。

 エドは頷いて、首から下げたメモ帳に【お中元】【手作り】【いやし】とかきこみ、おかみさんにお礼を言って駆け出した。

(…いやしといえば、カヲリさんやもんね〜) 

と内心で呟きつつ、エドは病院にむかった。

(……っ、ここはどこですかぁっ!?)

 案の定迷いながら…ではあったが。

「ん?あ、エドさん〜、なにやってるの?」
「う〜、病院につかないです」
「………また、迷子?」
「……むぅ」

 少年とお中元の話をしながら病院に向かうと、途中でおにごっこをしていた子供たちとも一緒に向かうことになった。

「うに…なぁ、なっちゃん?」
「…なっちゃんて…」

 少年・東雲棗(公共事業より)は少し眉を寄せた。

「カヲリさんてなんでほわんとしたはるんやろね…」
「……ん〜、さぁ、わかんないけどさっ。カヲリさんていい匂いするよなっ」
「…あぁ、そういえば、せやね〜」

 エドはメモ帳に【いい匂い】と書き加えつつ、カヲリの癒やしの理由について子供たちとやいのやいのいいつつ、病院にむかった

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「カヲリさぁ〜ん!」
「…?あら?」

 病院の近くの森を通り抜けようとしていると、目的の人に出会った。
カヲリに群がる子ども達。
苦笑しつつ、地面に座り込むカヲリとその周りに座るエドと子ども達。

「カヲリさんてなんでいいにおいするんですか?」
「…え?」
「……にゅ〜、えと、お中元が癒やしでありがとうでいいにおいなんです」
「??」

 エドはカヲリに朝から今までのことを説明した。

 話を聞いたカヲリは「それなら」と立ち上がり、子ども達の手を引いて森の開けた場所にむかった。

「ここには香草がたくさんあるんですよ。」
「…にょ?香草ですか?」
「そうですね………あ…そうだ、ポプリ…匂い袋の元がはえてるんですよ」
「……なっ…なるほどです」
「いいにおいのするものが作りたいなら、これを乾燥させて袋に入れてプレゼントするといいかもしれませんね…あとは、香油をつくるとか…」
「…はわ……と、とりあえず、材料をあつめるですよ…」

 子ども達と香草を摘みながらカヲリとエドは小声で先程あった桂林の反応について話していた。

「…団長……おくるんですかねぇ(微笑)」
「………桂林さんは【つんでれ】らしいですから……で、つんでれてなんですか??」
「……エドさんはまだ知らなくていいですよ…」
「………う???あ、ところで。」
「…はい?」
「カヲリさんはげんのじょーさんに何か贈るですか?」
「……………。(真赤)」
「…にゅ?」
「よ、用事を、お、思い出したのでもどりま、すね〜」
「にゃ??(カヲリさん…手と足が一緒にでてるですよ…)」

 去ってゆくカヲリをみおくり、(カヲリさんはバレないように用意するのがたいへんそうだ…)とおもいつつ、香草摘みに精をだすのだった。

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 山盛りになった籠を抱えて王城に一度向かうエドと、もはや一蓮托生なかんじになってきた子ども達は途中で空を見上げている女性に遭遇した。
そらは夕日で赤く染まっていた。
長く伸びた影を敷いて、木陰でくつろぐ女性にエドは飛びついた。

「にゃふ、くぅさんっ(飛びつきっ)」 「むぅ?とりあえず、ガード〜」 「……うにゃ(ペシッ)」

 くぅに飛びつこうとして失敗したエドは空を眺めるくぅにすこしだけ、(さみしそうやな…)と思った。

「ようへいさん…心配ですか?」
「それはね〜。だってもともと同じ国のみんなだからね〜」
「くぅさんは………、たたかいにいった先、旅にでた先で、何が一番恋しくなりますか?」

 すこし悩むそぶりをみせるくぅ。
夕日で白い肌に睫のかげが落ちた。

「………家の灯、故郷の灯…かなぁ??」
「…??」
「…ん…。かえりたくなるってことかなぁ?」
「…うに〜?あったかいとこに、ですか?」
「……そうだねぇ、【あったかいとこ】に帰りたくなるね〜」

 にぱっと笑うくぅをみて、(ようへいさんに灯を贈りたいなぁ)と思ったエドは、くぅにお礼をいって王城に向かった。

 振り返り、くぅをみると、まだ空を眺めていた。
同じ空の下にいる同朋を想っているのだろうか、とエドはなんとなく思った。

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「あ!尋軌さんっ、はんおーさまっ!」

 王城にたどりつくと、いつかのように摂政:久堂尋軌と藩王:結城由羅の2人がロビーでくつろいでいた。

「ん?あぁ、………て、どうしたんだ?」

エドと一緒にいる子ども達と、その手に抱えられている大量の香草に由羅藩王から突っ込みがはいった。

「…みゅ……む…えとですね、みんなで、みんなにありがとうするですよ」
「…?」
「はんおーさまと尋軌さんが朝お話してたですよ」
「…………?あ、お中元のことかぁ」

 得心したように頷く2人。

「うに、それでこんなんつくるですよ」
「?」

 メモをみせるエド。
覗き込む尋軌摂政。
由羅藩王は元の位置からみえたようで少し考えている。

「ふむ。…じゃあ、香りのする蝋燭【アロマキャンドル】でも作ってみればいいんじゃないかな?」

 しばらく考えていた由羅藩王はぽつりとつぶやいた。

「うん、いいとおもいますよ。エドちゃん達の集めたコレでいろんな薫りのキャンドルを作りましょう、ね」

 ぽすぽすと山盛りの香草を叩きつつ尋軌摂政。

「…じゃあ、この、しゅ(以下略)缶のも〜」
「……あーわかったわかった(がし)…」

 通りすがりの大神人狼領主が、濃紺摂政に羽交い絞めにされ引きずられていく様子を、子ども達はキョトンと見ていた。
すかさず明後日の方向を向いていた尋軌摂政は、その後、子供たちからのしゅ(以下略)って何?という追求に晒されることとなる。

「ま、まぁ…キャンドル作りに行きましょう」との一言で追求から逃れた尋軌摂政は疲れたような表情をしていた。と、後にとある少年は語った。

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 場所を移して広場にて
大きな鍋を囲んで油を溶かしている。

 なぜ広場なのかというと、「誰かが誰かにありがとうをするために作るんやから、みんなのありがとうが誰かに伝わった方がほっこりしますですよっ!」と主張した者がいたため、急遽【大工作大会】になったのであった。

 忍者のためには匂いがなく、炎色反応を楽しめるキャンドルを技術者・可銀の指揮のもと
家族や友人のためには薫りの効果を考えたものをカヲリの指揮のもと

 そしてキャンドルを立てる受け皿に施すデザインを皆で考え、溶けた後に受け皿にメッセージが残るように皆がこっそりメッセージを隠して…

 誰かが、ある人に届けたい想いを込めたちいさなちいさな灯火の元が完成したのであった。

 今は隣にいない、どこかにいる誰かに「ありがとう」が伝わりますように…

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「で、藩王様は誰に渡すんですか?」
「………な・い・しょ(はあと)」

という摂政と藩王のやりとりがあったとかなかったとか…

(文章:国民/エド・戒


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Last modified:2009/08/15 01:29:12
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