国内イベント/29
国内イベント/29
「大規模お花見」
バレンタインの時にチョコ贈れなかったので花見代は全部持つよ、イベント。
#文字サイズは中以下を推奨いたしています。
花見の様子 イラスト:優羽カヲリ |
物語の経緯
バレンタインの時に、チョコを配る予定であった世界忍者国上層部。
しかし、多忙のために季節が過ぎてしまった。
そして、季節は過ぎて春…。毎年の事ながら派手に行うべく、今回は英断することになった。
「花見にかかる費用は全部持つねう!」
この英断と共に、『暇であれば、いらっしゃってください』と書いた案内状も送り届けた。
贈り先は、前回の新年のあいさつ状と同じメンバーである。
花見委員長には摂政の久堂が就任することになった。
SS1
朧月夜の畑に、複数の影があった
桜の木を取り囲んで座る影の手には小さな杯があり、微かな光を反射していた
「今年もこの木の下で酒を酌み交わせたなぁ」
「そうだなぁ」
「…ひとりかけ、ふたりかけ、……それでも儂等はいきとるんだのぅ」
ふと訪れた雲の陰りのした
影……老爺たちは思いを馳せる
昼にはない、しっとりと
落ち着いた時間
夢か うつつか
それとも 朧月と花吹雪の見せる幻か
老爺たちの前には、同朋たちの姿があった
今は、まだ
平和とは言えないが
どこかの誰かの笑顔のために
今 隣にある、家族や友のために
幻の 友の顔は、微笑んでいた
「……むかしも今も、家族と、友と、国と」
「失いたくないものは、おおいなぁ」
「ふ……そうじゃの」
「なんせ、儂等は幸せのためには貪欲だからの」
「「違いない」」
顔をみあわせて呵々と笑い、
杯を干し、また顔をみあわせて笑う老爺たちの間に
最初の暗い顔はなかった
あるのは、明日への渇望と幸せへの決意
ただそれだけだった
『世界忍者国の片隅、桜の植わる畦道にて』
こんな人たちがいるから
世界は今日もまわっている …… のかもしれない
(作:エド・戒)
SS2
世界忍者国はバレンタインのイベントができなかった代わりに、大規模な花見大会を行う。
亡命政権から無事に本国へ帰還できた記念も兼ねて、国内でこのようなお触れが出されたのは一週間ほど前のこと。
費用は国が負担すると聞き、国民の多くは喜びに満ちて・・・・・・いるわけではなかった。
床を叩いているような足音で歩きつつも、そのリズムが一定でないのは怒りに満ちているから・・・・・それは彼女を見ずとも長老には分かった。
足音の続きのように大きな音で引き戸が開けられる。
立っていたのはまだうら若い女性。
「どうかしたかのぅ」
空とぼけてできたばかりの若い酒の味見をする長老の前に、女性がずいと顔を近づけて睨んだ。大きな目が更に大きく見える。
「一体、これは、何ですか?」
差し出したのは一枚のチラシ。お花見大会の案内、と書いてある。
「見りゃぁ分かるじゃろ」
くいと杯を空ける老人。
「ええ、お花見大会のチラシですね。役所のポスターを剥がしてきましたもの」 「・・・・・・そんなことをしちゃいかんぞ」 「じゃあ、これはいいんですか?!」
綺麗な桜の横の文字列を示す。
「振る舞い酒はいいじゃろ」 「違います!!!」
からかうと面白いな・・・・・と老人は思っていたが黙っていた。
女王の反面教師なのか、この国の女性はたまにこういう生真面目な子が生まれる。
「カラオケ大会。いいですね。お花見の定番ですとも」
「うむうむ」
「子供の桜の花びらつかみ取り大会。これなんかお花見らしくて素晴らしいですわ。
5分間で、自然に舞い落ちる花びらを集めた数だけお菓子をプレゼント。想像するだけで和みます」
にっこりと微笑む彼女。
「でも、この『女装コンテスト』は何ですか!百歩譲って美人コンテストなら分かります。
でも、この『通行人の笑いを一番誘った人』という勝利条件が理解できません!」
「まぁ、酒が入ったら笑いが欲しくなるものじゃからのう」
「素面でも笑われます!!なんですかこの破廉恥なワンピースは」
ひっそりと、嬉しそうに女性に踏まれているワンピース姿の屈強な男の写真があった。多分、人狼領地出身。
「それにほら、世界忍者ショーの後のプログラム!裸祭って!!これはたけきの藩国のお祭でしょう!!」
「あの国は普段着がそう見えるだけじゃ」
「大体、お花見と何も関係がありません!!!」
ふうむ、とため息をついて、長老は重々しく口を開いた。このことは他言無用、と前置きをして。
「あれは、バレンタインの頃のことじゃった・・・・・」
遠い目をして、意外と近い昔を語る老人。
「藩王が人狼領地の男達を見て仰ったそうじゃ。『冬は露出度が低くて困る。もっと脱ぐべきだと思うねう』とな」
「人狼領地は寒いからでは・・・・・」
「かもしれぬ・・・・・」
諦観した老人の姿に一瞬に言いよどむ女性だが、すぐに気を取り直した。
「それにです、このロイ像保全コンテストって何ですか!お花見の時にわざわざしなくていいと思います!」
「藩王陛下が国に戻られて最初に言われたことを知っておるな?」
「ええ、『私はT100を見てきた。ロイ像には耐久力が足りない』とか・・・・」
未来を見てきただけでも胡散臭い話なのだが、急に藩王の言葉が本気を帯びてきて真実味が一層下がる。
「100年持つように補修工事をするように命令があってな・・・・・」
「でも・・・・・・」
「断れば、補強しなかった1体につきロイ像を2対追加すると」
「2対って・・・・・・」
「特別仕様じゃそうな」
「特別って・・・・」
「藩王の特別気に入った格好」
「一体どんな・・・・・」
「さぁのう。じゃが、大人しく直した方が良さそうじゃろ?」
こくこく頷いて二人は遠くに響く工事の音に目を向けるのだった。
(作:桂林怜夜)
SS3
設営した花見実行委員会本部の少し後ろ。桜の花が舞い散る中で、設営委員長は疲れた身体を休めながらも桜を見あげていた。
「ふぅ〜…とりあえず、ちゃんと無事に終わりそう…」
花見をするにあたり、準備することは沢山あった。
・藩国の全ての人たちが楽しめるように、小麦粉などの原材料を配布。
・あまりゴミが出ないように、ジョッキなどの持ち込みの奨励
・ゴミ箱を10m四方に一か所ずつ設置
・酔っ払いの保護もできるように、三日間三交代制でのスタッフの管理
・喧嘩等の迷惑行為への対策(重罰ではないが、酒が抜けた後に滝浴び修行へ等)
エトセトラエトセトラ…
準備段階で残業に明け暮れながらも、無事に開催できたことはこれもスタッフのおかげと言わざるおえない。
今日の委員長は、警備・営業・休暇のシフトでは警備になっているが警備の本格な仕事は、大体午後に入ってからになる。
「はぁ〜これでひと段落…そして、後のイベントは…」
手をかざして、指折るようにして次のイベントを考えていると自分を呼ぶ声と共に走ってくる影があった。
「委員長〜大変です〜!!どこですかーーーー!」
「ん…ここだよ。テン、どうかしたのかい?」
人員の配置と共に、猫士たちも補助人員として割り振っている中で今日の警備担当の一匹であるテンが駆け寄ってきた。
「い、いたー!大変大変なんです!」
「まぁまぁ…落ちついて深呼吸してから報告してごらんよ」
「は、はい…ヒーハー、ヒーハー…。ふぅ…あ、あの!『シュー(以下略)缶』のエリアで大変なことが!」
深呼吸した猫士の報告に、目が驚いたように大きくなると寝ていた身体を一瞬で起き上がらせて花見設営委員長である久堂は走り始めた。
#『シュー以下略缶』、正式名称『シュールストレミング缶』とは、ニシンを塩漬けにして、缶の中で発酵させた漬物の一種である。
# 一説では納豆の23倍とも言われるその強烈な臭いから、「世界一臭い缶詰」などと評されることもある。
#(アイドレス/食品加工工場より抜粋)
シュー(以下略)缶の匂いは強烈である。そのために缶専用のエリアとして二重三重の大型ビニールハウスを今回用意した。
そうでないと、匂いが漏れて大変なことになってしまうからだ。
設営本部から現場へと行く途中、忍者走りで営業エリアをチラッと横目で覗いてみると、優羽カヲリが評価値26の器用さで
次々とお好み焼きを大量生産していくのが見えた。まだ此方は無事のようだ。
今回は粉物が原価に対して大量に作れるので採用されている。
ちなみに、明日は濃紺・エド・松永組によるタコヤキ屋、3日目は怜夜団長・白金副団長による今川焼きの予定だ。
シュー(以下略)缶エリアへと着くと、ビニールハウスの中では何人かが倒れているのがわかるので久堂は中へと潜り込んだ
「一体なにが…って、イド!コタロウ!生きてるか!」
匂いだけでも悶絶ものなのに、何故か顔面に白いものがついている倒れた犬士・猫士に呼びかけながら久堂は状況を把握しようと…した、
その瞬間である。
「いいんちょー、おつかれーこれ差し入れー」
世界忍者アイドレスを着こんでいた久堂は絶対に回避できるはずだった。
しかし、逃げた視線の先にはシュー(以下略)の中身が紙皿の上に満載されていて…
「え、ふくお…ぐはっ!!」
まるでバラエティ番組のパイ投げのように顔面に受けた久堂は、一瞬にして悶絶。その場で倒れ込んだ。
「あれー?おいしんだけどなー?」
倒れ込んだ久堂を見下ろしつつ、勿体ないと指についていた中身を舐める大神。ここの混乱の主である。
自分の好きなのをいいことにこのエリアをつくった責任者のはずであった…。
「あ、委員長!しっかりしてください!衛生兵!衛生兵ーーーー!!」
これが走馬灯かと思いながらも、久堂は意識を失っていくのであった。
(作:久堂尋軌)
花見の様子2 イラスト:くぅ |
SS4
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
目覚まし時計がの音が鳴り響く。
暗い部屋の中、男が目を覚ます。
ズキズキと痛む頭を手で押さえながらムクリと上半身を起こす。どうやら二日酔いのようだ。
男は寝ぼけなまこで、しかし二日酔いによる頭痛で次第に覚醒していく頭で辺りを弄り目覚ましを止める。
時間を確認するまもなく男は再びベッドへと体を倒す。
小さくうなりながら恨めしげに目覚ましを見ようとしたとき、テレビのチャンネルが目に入る。
たいした目的もなく男はそれを手に取りテーベーの電源を入れる。
テーベーの光が暗い部屋を照らし出す。
画面の中ではレポーターが花見の様子を中継していた。
どうやら流れている映像は昨日のものであるらしい。
*********************
「はーい。こちら現場のくぅでーす」
マイクを片手にくぅがカメラの前で元気よく手を振り上げて自己アピールをする。
くぅがいる場所は世界忍者藩国にある川辺。そこには桜が道沿いに咲き並び風が吹くたびに花びらが風に舞う。
そしてカメラの周りには、多くの子供に野次馬や酔っ払い、
果てには店の宣伝と意気込んで旗を振るどこかの店員などが集まり人で溢れかえっていた。
「ここでーす。ここにいまーす!」
人の波に埋もれながら必死で背伸びをしたりジャンプをしながら手を振って自分の存在・・・もとい、いる場所をアピールするくぅ。
そして、人垣に流され揉まれながらくぅの身体は右へ左へ。
最終的に人混みからはじき出され、目を回しながら「ばたんきゅ〜」とデコテロップが挿入されそうな体勢で
後から押し出されてきたカメラマンによって発見される事となった。
「ぇ、えー・・・ 改めて、現場のアルバイトリポーターのくぅでーす」
気を取り直してまた初めからカメラの前に立つ。なぜアルバイトなのかは聞いちゃいけないお約束。世界の謎である。
改めてリポーターの仕事を始めたくぅ。マイクを片手に道行く人や出店の店員、宴会の席へと次々にマイクを向けていく。
いい仕事をしたー。と呟きながらにこやかな笑みとともに額の汗をぬぐう。
と、その時くぅはあるものを見つけた。
地面に桜の花びらをこれでもかというぐらいに敷き詰め、それをシートの代わりなのかカーペットや絨毯の代用なのか
敷き詰めた花びらの上にちょこんとかわいらしく座る少女が二人。
「こーんーにーちーわー」
軽やかな笑顔と共に現れるくぅ。
しかし背後から現れたため、2人の少女は肩を竦ませ驚く。
「あははー。驚かせちゃったかなー?」
しかしそんな事は微塵も気にすることなく少女たちに色々質問をぶつける。
少女たちは突然現れたくぅと、始めてみるテーベーカメラにしどろもどろになりながらも質問に答えていく。
「それじゃ、最後に二人のショットでも撮ろうかー」
そうカメラマンに提案し、どの角度がいいか小道具は何を持たせるか。カメラマンや他のスタッフとミニ会議を開く。
「それじゃ、撮りますよー」
カメラマンが言うと少女たちは顔を硬くしてしまう。しかしそれでもカメラは回っている。
そこで機転を利かせたカメラマンは、「あ、録画ボタン押し忘れてた」といって少女たちの笑いを誘う。
すると少女たちの顔から緊張が解け笑みがこぼれた。
実は最初からボタンが押されていたのはスタッフしか知る由はない。
後日
敷き詰めた桜の花びら絨毯の上に座り淡いピンクの服を着て葉の上に団子を乗せた少女と、
赤いジュースが入ったグラスを可愛く持つ少女の映像が流れどこかの芸能プロダクションがスカウトを送り込んだのはまた別のお話。
そんな事になろうとは思いもしないくぅとスタッフ一同は勝手に休憩を取り、出店で焼きそばを買っていた。
くぅがとても見せられないような大口を開けて出来立てほやほやの焼きそばを食べようとしたとき、
少し離れた広場から歓声とブーイングが聞こえてきた。
スタッフと目を合わせ、視線を焼きそばに戻して再び食べようとしたくぅだがスタッフに襟首を捕まれて強制連行される。
しかしくぅは意地でも焼きそばは手から離さなかった。
そして食い意地の果てに引きずられながら焼きそばを食べるくぅとスタッフが騒ぎのもに駆けつけると、
そこでは女装コンテストが行われていた。
「はぁーい、11番の方残念でしたー。また来てねぇん」
コンテスト会場、ステージの上で明らかに女装と分かる司会者がステージを降りていく参加者を見送る。
よく見るとステージには審査員の姿はなく、司会者と参加者しかいなかった。
カメラマンが周囲を映していると立て札が視界に入る。
『女装コンテスト開催中!
審査基準は通行人の笑いを一番誘った人!
誰でも参加可能。飛び入りも可! 来たれ若人!』
改めてステージに視線を移すと、次の参加者が立っていた。
そして誰もがその姿に目を奪われた。
男でありながら細身であり、胸は貧乳ではないが控えめで顔も小顔。しかしその着用した服のスリットからスラリと伸びる白く細い足。
チャイナ服を着た男性がこれほど美しく見栄えたためしがあっただろうか。
いや、ない。
だがそれはここに存在した。
会場が静寂に包まれる。司会者でさえ言葉が出ないようであった。
しかし次の瞬間に激しいまでの喝采が参加者に送られる。
中にはコンテストの内容すら忘れて告白する者まで現れる始末である。
チャイナ服の参加者は顔を赤く染め上げ、足早にステージから降り去った。
司会者が名残惜しそうにその後姿を見送り、一目惚れしたファンがその後を追いかける。
その様子をカメラにばっちりと収めながら、くぅは満腹になったお腹を擦りながらマイク片手に仕事を再開していた。
しかしそれも長くは続かず、次第に目が空ろになっていく。
春の日差し、更には桜の木から覗く木漏れ日に当てられ眠気が引き出されていた。
仕事の事を忘れ、桜の木に寄りかかりウトウトとし始めるくぅ。
もちろん、そんなシーンを逃すカメラマンではない。顔のアップから始まり、足元から舐めるように視線を上げていくカメラマン。
そしてカメラの視線が顔に到達した時、何かの気配を感じ取ったのかくぅの目がカッ!! と見開いた。
「今すぐ局に戻りましょう!」
と、いきなり目を覚ましたかとおもうと今度は慌てふためきながらスタッフたちを外へグイグイと押し寄せる。
どこか焦って見えるその動きにスタッフたちはその場の勢いに流されて撤退の準備を始める。
その様子を焦り慌てふためきながら待ち続けるくぅは、スタッフたちを捲くし立てる。
「は、早くしないと早く早く早く早く早く!」
くぅが急かすように口を開くと同時に、遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。
次の瞬間、くぅの表情が凍り付き一気に血の気が引いたのが分かるほど青くなった。
しかしそれもつかの間。
悲鳴は瞬く間に拡大していった。
それもそのはず。
風の流れに乗ってシュー(略)缶の匂いが広く散布されたためである。
不意を突かれたこの限りなく名状しがたい異臭に花見に来ていた人々は鼻を曲げながら異臭に耐え切れなくなり次々と倒れていった。
そしてくぅやスタッフたちも例外なく倒れていったのであった。
*********************
「以上が昨日起こりましたO神氏によるシュー(略)缶事故の現場に居合わせたスタッフによって撮影された被害の様子です。
幸いにも被害者たちには目立った外傷はなく、病院に運び込まれた人たちも次第に意識を取り戻し始めているとのことです」
「なお、事の発端となったO神氏によると『新しいタイプを作ってみた。どこでもいいから開けてみようとおもった。後悔はしていない』
等と話しているそうです」
と、隣にいたキャスターが付け加える。
画面が切り替わり、他のキャスターが流れていた映像の説明とその後の経過を報告する。
男はそれを見ながら大きな口を開いてあくびをすると、再びベッドへ倒れこみ二度寝を始めた・・・。
(作:くぅ)
なお、この事故に関して架かった費用はO神氏の給料から引かれることが後々決定した。
消費
消費申請:根拠により食料5万tを消費します。
(製作スタッフ:優羽カヲリ、エド・戒、桂林怜夜、久堂尋軌、くぅ)
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References:[イベント] [公示文/20100425−01]