SS:エドさん、スタンプラリーをする〜観光地編〜
エド・戒−−彼女は世界忍者国に最近入国した新人さんである。さすらいの美少年ハンター(だった)ソーニャの書いた物語に惹かれ、政情不安な世界忍者国へ単身飛び込んできた奇特な少女であった。
その憧れるソーニャはしかし、ここしばらく体調を崩しふさぎこみがちであった。
理由はその愛する少年、エミリオの不在である。
皇帝へ謁見するため帝國に向かい、ソーニャの交渉案を握りつぶした後、責任を感じたか姿を消してしまった。そして、詩歌藩国で発見されたものの、ソーニャの姿を見て逃げ出してしまった。
元々体調のよくなかったソーニャは、ショックを受け、それ以来自分の家に篭ってしまっている。
(せめて何かできれば)
こまめに家に通ったりして励ましてはいるものの、ソーニャは儚げに笑うばかりでやはりエミリオの不在は埋めがたいものがあった。しかし、自分ではエミリオを探しに行くこともできない。胸を痛めるエドだったが、城下町の喫茶店でパフェを食べているときに、ふと噂を小耳に挟んだ。
「観光地のロイ像をひとりだけで全部回ると願い事がひとつ叶うらしい」
嘘じゃないのという突っ込みに、笑いながらほんとだって、と会話が続く。が、藁にもすがりたい気分のエドは、その話が妙に気になった。
スタンプラリー自体は騎士の義務だからということで、無理のないスケジュールで回りましょう、とかで定期的にツアーが出て数個ずつクリアしていっている。観光地もいくつかすでに回ってみた。
「観光地は一応一般客の避難経路も兼ねてますから、ほとんどはマップに載ってるんですよ」
初回連れて行かれたとき、騎士団長こと桂林怜夜が、観光地ガイド付属の地図を見せながら説明してくれていた。
「ただし、特別に隠しロイ像がいくつか設置されてるんだけどね。まー最近はあらかた発見されて情報も流れてるらしいけど。君たちは見つけきれるかなー?」
結城由羅藩王がにやにやとそんなコメントを追加していた。観光地だけで36個のロイ像があるらしい。
「ランクCが20個、ランクBが12個、ランクAがなくてランクSが4個ってところだね」
そのランクが何を意味してるのかちんぷんかんぷんだったが、Sが4つですかーという団長の嫌そうな顔を見ると楽しくないことのようだった。その日はランクCを半分くらい回ったところで終わって、次はまたということになった。
嘘か本当かわからないけど、ソーニャさんのために観光地のロイ像をひとりでクリアしてみよう。パフェのスプーンを握り締めてひとり決意するエドであった。
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(つづく)