ここ世界忍者国の片隅
山間にあるとある棚田である
山頂から流れる湧水、適度な日照を得ることができるように開拓されたこの場所は【食糧生産に向いた地形】へと徐々に変化を遂げていった
はじめは、生い茂る木々、流れの急な川など自然と相入れることが難しく、開墾は困難を極めていった。
しかし、今は【生産地ではたらく人々】の顔は笑みに満ちている
なぜならば今は実りの季節
一年の中で、今までの労苦が報われる季節
収穫の季節だからだ
/*/
頭を垂れる稲穂を前に、世界忍者国・摂政の1人 久堂尋軌は笑みを浮かべていた
「今年は収穫が多いみたいですね…」
「はいっ、色々なことはありましたが、木々を残して棚田をつくっているおかげで崩落などもなく、…いまのところ水路の氾濫もなかったのようですね」
生産地の視察にきていた尋軌とともに可銀も地盤の調査や、水路の老朽具合を確認していた
頭を垂れた稲穂の群の中、いくつかの小さなものが動いている
「保育園の子どもたちに収穫を手伝ってもらって【食糧】のありがたみ、作り方をしってもらう」
今回視察に起つ直前に藩王から「つれてけ」というひとことと共におしつ…もとい、つれていくことになった数名の子どもたちは大人に付き添われて不器用ながら鎌を振るっていた
「…アナログですね…」
「あぁ、アナログだけど、機械は壊れるけど、人は壊れない、学習もするしね…」
微笑を浮かべながら会話をする二人に、行き交う人々の1人が足を止め、声をかけた。
「今、【育成中の食糧】で良いのがあるんですが…いらっしゃいませんか?」
声をかけられて、二人は一瞬視線を交わし、いきますと答えた
ところ変わって、とある民家の軒下
「……ん〜、どこに育成中なものが?」
「これですよ」
ん。と背伸びして、可銀の問いに庭先の柿をもいで手渡す民家の主
「にがっ」
渡された柿をかじった可銀の口から思わず漏れた一言は万感のこもったものだった
「…渋柿ですよっていおうと思ったのですが…」
苦笑する主はもうすぐ柚と柿が収穫できる とにこやかに告げた
「ただ渋柿は…」
そういいながら表にでる主は子どもたちが刈った稲を運び込んでいる高床式の【食糧倉庫】とその横で柿の皮を剥いて、吊している老婆と子供を指した
「ああやって干し柿にして、保存食にしたり、柚もゆべしにして保存食にするんですよ」
そういっていると、ふと子供の方が三人に気がつき駆け寄ってきた
「尋軌さんっ、可銀さんっ、うちがむいた柿、たべますっ?」
駆け寄ってきたエドに二人はいらない、と必死に首を横に振るのだった
そして、三人と子どもたちは土産に大量のみかんと干し柿、ゆべしを持ち帰り、藩王に「どこにおくのっ、腐らせちゃだめだからねっ」と怒られ
その後ろではコタツにみかんのスタイルでくつろぐカヲリとくぅの姿があったとか…