設営した花見実行委員会本部の少し後ろ。桜の花が舞い散る中で、設営委員長は疲れた身体を休めながらも桜を見あげていた。
「ふぅ〜…とりあえず、ちゃんと無事に終わりそう…」
花見をするにあたり、準備することは沢山あった。
・藩国の全ての人たちが楽しめるように、小麦粉などの原材料を配布。
・あまりゴミが出ないように、ジョッキなどの持ち込みの奨励
・ゴミ箱を10m四方に一か所ずつ設置
・酔っ払いの保護もできるように、三日間三交代制でのスタッフの管理
・喧嘩等の迷惑行為への対策(重罰ではないが、そのまま滝浴び修行へ等)
エトセトラエトセトラ…
準備段階で残業に明け暮れながらも、無事に開催できたことはこれもスタッフのおかげと言わざるおえない。
今日の委員長は、警備・営業・休暇のシフトでは警備になっているが警備の本格な仕事は、大体午後に入ってからになる。
「はぁ〜これでひと段落…そして、後のイベントは…」
手をかざして、指折るようにして次のイベントを考えていると自分を呼ぶ声と共に走ってくる影があった。
「ひろきさま〜大変です〜!!どこですかーーーー!」
「ん…ここだよ。テン、どうかしたのかい?」
人員の配置と共に、猫士たちも補助人員として割り振っている中で今日の警備担当の一匹であるテンが駆け寄ってきた。
「い、いたー!大変大変なんです!」
「まぁまぁ…落ちついて深呼吸してから報告してごらんよ」
「は、はい…ヒーハー、ヒーハー…。ふぅ…あ、あの!『シュー(以下略)缶』のエリアで大変なことが!」
深呼吸した猫士の報告に、目が驚いたように大きくなると寝ていた身体を一瞬で起き上がらせて花見設営委員長である久堂は走り始めた。
#『シュー以下略缶』、正式名称『シュールストレミング缶』とは、ニシンを塩漬けにして、缶の中で発酵させた漬物の一種である。
一説では納豆の23倍とも言われるその強烈な臭いから、「世界一臭い缶詰」などと評されることもある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0
(食品加工工場より抜粋)
シュー(以下略)缶の匂いは強烈である。そのために缶専用のエリアとして二重三重の大型ビニールハウスを今回用意した。
そうでないと、匂いが漏れて大変なことになってしまうからだ。
設営本部から忍者走りで営業エリアをチラッと横目で覗いてみると、未だ無事のようで優羽カヲリが評価値26の器用さで
次々とお好み焼きを大量生産していくのが見えた。
ちなみに、明日は濃紺・エド・松永組によるタコヤキ屋、3日目は怜夜団長による今川焼きの予定になっている。
今回は粉物が原価に対して大量に作れるので採用されている。
シュー(以下略)缶エリアへと着くと、ビニールハウスの中では何人かが倒れているのがわかるので久堂は中へと潜り込んだ
「一体なにが…って、イド!コタロウ!生きてるか!」
匂いだけでも悶絶ものなのに、何故か顔面に白いものがついている倒れた犬士・猫士に呼びかけながら久堂は状況を把握しようと…した、
その瞬間である。
「いいんちょー、おつかれーこれ差し入れー」
世界忍者アイドレスを着こんでいた久堂は絶対に回避できるはずだった。しかし、逃げた視線の先にはシュー(以下略)の中身が紙皿の上に満載されていて…
「え、ふくお…ぐはっ!!」
まるでバラエティ番組のパイ投げのように顔面に受けた久堂は、一瞬にして悶絶。その場で倒れ込んだ。
「あれー?おいしんだけどなー?」
倒れ込んだ久堂を見下ろしつつ、勿体ないと指についていた中身を舐める大神。ここの混乱の主である。
自分の好きなのをいいことにこのエリアをつくった責任者のはずであった…。
「あ、委員長!委員長!しっかりしてください!衛生兵!衛生兵ーーーー!!」