おはなみのイラストとssになりまする
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
目覚まし時計がの音が鳴り響く。
暗い部屋の中、男が目を覚ます。 ズキズキと痛む頭を手で押さえながらムクリと上半身を起こす。どうやら二日酔いのようだ。
男は寝ぼけなまこで、しかし二日酔いによる頭痛で次第に覚醒していく頭で辺りを弄り目覚ましを止める。 時間を確認するまもなく男は再びベッドへと体を倒す。 小さくうなりながら恨めしげに目覚ましを見ようとしたとき、テレビのチャンネルが目に入る。 たいした目的もなく男はそれを手に取りテレビの電源を入れる。
テレビの光が暗い部屋を照らし出す。 画面の中ではレポーターが花見の様子を中継していた。
どうやら流れている映像は昨日のものであるらしい。
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「はーい。こちら現場のくぅでーす」 マイクを片手にくぅがカメラの前で元気よく手を振り上げて自己アピールをする。
くぅがいる場所は世界忍者藩国にある川辺。そこには桜が道沿いに咲き並び風が吹くたびに花びらが風に舞う。 そしてカメラの周りには、多くの子供に野次馬や酔っ払い、果てには店の宣伝と意気込んで旗を振るどこかの店員などが集まり人で溢れ
かえっていた。
「ここでーす。ここにいまーす!」 人の波に埋もれながら必死で背伸びをしたりジャンプをしながら手を振って自分の存在・・・もとい いる場所をアピールするくぅ。 そして、人垣に流され揉まれながらくぅの身体は右へ左へ。
最終的に人混みからはじき出され、目を回しながら「ばたんきゅ〜」とデコテロップが挿入されそうな体勢で後から押し出されてきたカ
メラマンによって発見される事となった。
「ぇ、えー・・・ 改めて、現場のアルバイトリポーターのくぅでーす」 気を取り直してまた初めからカメラの前に立つ。なぜアルバイトなのかは聞いちゃいけないお約束。世界の謎である。
改めてリポーターの仕事を始めたくぅ。マイクを片手に道行く人や出店の店員、宴会の席へと次々にマイクを向けていく。
いい仕事をしたー。と呟きながらにこやかな笑みとともに額の汗をぬぐう。 と、その時くぅはあるものを見つけた。
地面に桜の花びらをこれでもかというぐらいに敷き詰め、それをシートの代わりなのかカーペットや絨毯の代用なのか敷き詰めた花びら
の上にちょこんとかわいらしく座る少女が二人。
「こーんーにーちーわー」 軽やかな笑顔と共に現れるくぅ。 しかし背後から現れたため、2人の少女は肩を竦ませ驚く。
「あははー。驚かせちゃったかなー?」 しかしそんな事は微塵も気にすることなく少女たちに色々質問をぶつける。 少女たちは突然現れたくぅと、始めてみるテレビカメラにしどろもどろになりながらも質問に答えていく。
「それじゃ、最後に二人のショットでも撮ろうかー」 そうカメラマンに提案し、どの角度がいいか小道具は何を持たせるか。カメラマンや他のスタッフとミニ会議を開く。
「それじゃ、撮りますよー」 カメラマンが言うと少女たちは顔を硬くしてしまう。しかしそれでもカメラは回っている。 そこで機転を利かせたカメラマンは、「あ、録画ボタン押し忘れてた」といって少女たちの笑いを誘う。 すると少女たちの顔から緊張が解け笑みがこぼれた。
実は最初からボタンが押されていたのはスタッフしか知る由はない。
後日
敷き詰めた桜の花びら絨毯の上に座り淡いピンクの服を着て葉の上に団子を乗せた少女と、赤いジュースが入ったグラスを可愛く持つ少
女の映像が流れどこかの芸能プロダクションがスカウトを送り込んだのはまた別のお話。
そんな事になろうとは思いもしないくぅとスタッフ一同は勝手に休憩を取り、出店で焼きそばを買っていた。 くぅがとても見せられないような大口を開けて出来立てほやほやの焼きそばを食べようとしたとき、少し離れた広場から歓声とブーイン
グが聞こえてきた。 スタッフと目を合わせ、視線を焼きそばに戻して再び食べようとしたくぅだがスタッフに襟首を捕まれて強制連行される。 しかしくぅは意地でも焼きそばは手から離さなかった。
そして食い意地の果てに引きずられながら焼きそばを食べるくぅとスタッフが騒ぎのもに駆けつけると、そこでは女装コンテストが行わ
れていた。
「はぁーい、11番の方残念でしたー。また来てねぇん」 コンテスト会場、ステージの上で明らかに女装と分かる司会者がステージを降りていく参加者を見送る。 よく見るとステージには審査員の姿はなく、司会者と参加者しかいなかった。
カメラマンが周囲を映していると立て札が視界に入る。
『女装コンテスト開催中! 審査基準は通行人の笑いを一番誘った人! 誰でも参加可能。飛び入りも可! 来たれ若人!』
改めてステージに視線を移すと、次の参加者が立っていた。 そして誰もがその姿に目を奪われた。
男でありながら細身であり、胸は貧乳ではないが控えめで顔も小顔。しかしその着用した服のスリットからスラリと伸びる白く細い足。 チャイナ服を着た男性がこれほど美しく見栄えたためしがあっただろうか。
いや、ない。
だがそれはここに存在した。
会場が静寂に包まれる。司会者でさえ言葉が出ないようであった。
しかし次の瞬間に激しいまでの喝采が参加者に送られる。 中にはコンテストの内容すら忘れて告白する者まで現れる始末である。
チャイナ服の参加者は顔を赤く染め上げ、足早にステージから降り去った。
司会者が名残惜しそうにその後姿を見送り、一目惚れしたファンがその後を追いかける。
その様子をカメラにばっちりと収めながら、くぅは満腹になったお腹を擦りながらマイク片手に仕事を再開していた。 しかしそれも長くは続かず、次第に目が空ろになっていく。 春の日差し、更には桜の木から覗く木漏れ日に当てられ眠気が引き出されていた。
仕事の事を忘れ、桜の木に寄りかかりウトウトとし始めるくぅ。 もちろん、そんなシーンを逃すカメラマンではない。顔のアップから始まり、足元から舐めるように視線を上げていくカメラマン。 そしてカメラの視線が顔に到達した時、何かの気配を感じ取ったのかくぅの目がカッ!! と見開いた。
「今すぐ局に戻りましょう!」 と、いきなり目を覚ましたかとおもうと今度は慌てふためきながらスタッフたちを外へグイグイと押し寄せる。 どこか焦って見えるその動きにスタッフたちはその場の勢いに流されて撤退の準備を始める。 その様子を焦り慌てふためきながら待ち続けるくぅは、スタッフたちを捲くし立てる。
「は、早くしないと早く早く早く早く早く!」 くぅが急かすように口を開くと同時に、遠くの方から悲鳴が聞こえてきた。 次の瞬間、くぅの表情が凍り付き一気に血の気が引いたのが分かるほど青くなった。
しかしそれもつかの間。 悲鳴は瞬く間に拡大していった。
それもそのはず。 風の流れに乗ってシュー(略)缶の匂いが広く散布されたためである。 不意を突かれたこの限りなく名状しがたい異臭に花見に来ていた人々は鼻を曲げながら異臭に耐え切れなくなり次々と倒れていった。 そしてくぅやスタッフたちも例外なく倒れていったのであった。
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「以上が昨日起こりましたO神氏によるシュー(略)缶事故の現場に居合わせたスタッフによって撮影された被害の様子です。 幸いにも被害者たちには目立った外傷はなく、病院に運び込まれた人たちも次第に意識を取り戻し始めているとのことです」
「なお、事の発端となったO神氏によると『新しいタイプを作ってみた。どこでもいいから開けてみようとおもった。後悔はしていない』等と話しているそうです」 と、隣にいたキャスターが付け加える。
画面が切り替わり、他のキャスターが流れていた映像の説明とその後の経過を報告する。 男はそれを見ながら大きな口を開いてあくびをすると、再びベッドへ倒れこみ二度寝を始めた・・・。
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