設定(作:桂林怜夜)
忍者犬。世界忍者国の犬である。
公務員というわけではない。愛国者でも国の手先でも無い。ただの犬である。
でも一部は狼かもしれない。人狼領地だもの。
人狼領地から流れてきたのだが、人狼領地は元々世界忍者から分家のような形で発生した国家なのだ。
彼らは別れる前の世界忍者国にいるときに、変化の術を大体を学んで犬士(人型)となった。
変化の術自体はロイによって世界忍者国に広まったと思われているが、実は元から存在していた。なぜ、あとからクローズアップされたのかというと、第七世界人は変化の術の有効性を当初見いだせていなかったからと言われている。それをロイが本格的に指導することで、侵入特化の術とした。
犬士として活躍することになった彼らだが、帝國では変化の術を広めることができなかったと言われている。
なぜなら変化の術を学ぶ際には世界忍者国にて口伝で術を大体会得することができたが、帝國に移動した時には大体という言葉通り、中途半端な口伝になってしまった為に広げることができなかったからだ。
ちなみに、犬士猫士が変化の術を行う際にどうやっても耳としっぽだけは隠すことができなかった。これは忍術としての限界とか、もともとは人間用の術だった為に、人間にない物は変えることが出来なかったのでは言われているが未だ解明されていない。
「え?解明?しないしない。かわいいからイイじゃない。可愛いのはいいことねぅ」
そう言って藩王である結城由羅の一言によって、変化の術の解明は止められたままである。
まぁ、解明されたとしてもこの愛くるしい姿は人々を魅了するものであろう。
なお、この口伝はN言語と称されて人が忍者として変化の術を学ぶ事すらも難解な物へと変えていった。
(蛇足:犬士たちが習得に完全にではなく大体だったのは、人狼領地の領主であった大神重信氏の影響が大きかったためと言われているが定かではない)
犬は規律を重んじる生き物である。
雑種ならばコリーとシェルティの雑種とか言うかもしれない。
「君、上に報告するから種類を教えてくれ」
「自分はアラスカンマラミュートのチョビですが」
「他の奴らシベリアンハスキーだからシベリアンハスキーで登録しとくわ。分けるのめんどい」
「ちょっと軍曹、俺のひいじいさん以外はみんなコモンドールなのになんで俺がシェパードなんですか!」
だが、こちらは人の方がいい加減だった。
もし、世界忍者で少し変わった犬士がいても、犬種を気にしないであげてほしい。
それが優しさというものである。
なお、猫士と犬士たちで独自のやり取りがあったというがそれは別の物語として語られることになる。
SS(作:神崎零)
世界忍者猫・・・忍者猫は友誼と恩を忘れない。
そして、もう一つ忘れないものがある。
それは約束である。
これは、世界忍者猫が人狼犬を変えて、約束をする話。
世界忍者国民には知られていない話である。
時は世界忍者国と人狼領地が合併した直後、王猫ああるえすの執務室に一匹の猫士が訪ねる
ところから始まる。
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その日、ろにゃーは走っていた。
重大な、そして藩王には言えない話をああるえすに伝えなければならないからだ。
慌てて扉を開くと内側のドアが壁にたたき付けられ大きな音をあげる。
開け放たれた扉の先には苦笑いを浮かべた金髪の青年・・・の姿をした猫がいた。
「どうしたんだ、ろにゃー、そんなに急いで、ドアを直すお金も惜しいんだ」
「ああるえす様、確かにお金は勿体ないですが、大変です!人狼犬が貴方を狙っています!」
顔が青ざたろにゃーから飛び出した言葉にああるえすは疑問符を頭に浮かべる。
「ろにゃー、それは確かな情報なのか?」
「はい、世界忍者国の王猫を探せと世界忍者国中を犬達が・・・」
その時、ろにゃーの足元を影のようなものがすり抜けた。
影は、犬だ。
「わん、ワオーン!」
その言葉に、不注意さを恥じる思いと、それ以上の怒りによってろにゃーは赤面した。
「ああるえす、来て貰おうか?だと・・・!ふざけた事を!」
「わかった、行こう」
その言葉の意味を、最初は理解出来なかった、命を狙っていると言ったのに犬達について行くというのか!
「ああるえす、貴方は!」
慌てるろにゃーに、少し悩んだ笑顔を向けた後、ああるえすは空を見る。
きっと、摂政になった濃紺もこんな気分なんだろうと考えつつ答えた。
「前に聞いた事がある、狼とは過程をたいして気にせず目的と結果、確実に完遂する方法のみを見る生き物だと」
「そんな狼なんて聞いた事が・・・」
ろにゃーにはまったく聞いた事がない生き物の話だった。
過程と方法の差などもわからない。
困惑したろにゃーを置いてああるえすと犬は扉を閉じた。
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人狼地区
多くの犬・・・(しかも、全て犬士である)に囲まれる中、ああるえすは苦笑いを浮かべながら正面の犬、いや、人狼領地の王犬と向かい合っていた。
「世界忍者国王猫のああるえすだな?」
「ええ、その通りです」
王犬、正確にはもう人狼領地はない以上元王犬は顔色も変えず話を続ける。
「変化の術を正式に覚えたいのと、犬種の登録について、それから今度から自分は元領主の家に住むからよろしく」
「(だいたい予想通りか)」
「ってその為だけにあんな事したのか!!!」
あまりの話題の普通さにこっそり着いて来たろにゃーがツッコミを入れる。
「なんだ、ついて来てたのか」
「それは心配して」
「返答は?」
「猫が話しているときにっ」
「先に話してたのは自分達だ」
ろにゃーは困惑と怒りを覚えた、何故こいつらはこの流れでこういう行動をするのか。
ああるえすは苦笑いを浮かべ続けながら話を進める、こうなればろにゃーはあとだ。
「変化の術は了解しました、住む先も約束しましょう、ただ犬種というのは?」
ろにゃーはああるえすに話を振って貰えず少し傷ついた顔をした後しょんぼりした。
「犬種は、本来犬というのは雑種にしても何のミックスとか言うのだが領主がそういう管理をしていないのだ、自分も面倒だと思うが皆はそう思わなくてだな」
回りの犬士達は首を揃えて縦に降る。
「わかった、既に処理が行われてなければですが、約束しましょう」
「ならば、旧人狼領地の行政担当者以外が管理するようにしていただきたい、それで以上だ」
「少し待って頂きたい」
帰ろうとした犬士達を引き止めるああるえす。
ちなみに、ろにゃーは体育座りでのの字を書いている
「今回の大勢で捜索、の様に大きな規模で何かするのを止めて頂きたい」
「確実と思うが?」
「ですが、驚くものも居るのです」
ろにゃーは、体育座りから復活した、目を輝かせながら。
「善処しよう」
そして、犬達は去って行った。
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世界忍者国王宮
世界忍者猫・・・忍者猫は友誼と恩を忘れない。
そして、もう一つ忘れないものがある。
それは約束である。
約束を守る為、ああるえすは書類を作っていた。
一つは女王に変化の術を正式に教える事の報告書である。
二つ目は、元王犬の所在地を役所に届ける資料。
最後に、犬種の調査に関する申請書類、これは摂政に頼む予定である。
ドアをノックする音と共に扉があけられる。
「ろにゃー、書類の配達を頼む」
「わかりました」
そして、ろにゃーの手により書類は各所に届けられる。
ああるえすは、忍者猫である。
忍者猫は友誼と恩を忘れない。
そして、もう一つ忘れないものがある。
それは約束である。
つまり、それ以外は忘れる事が多い。
任務や重要だと思った事以外は忘れると言っていい程だ。
最後の書類には特記事項を書くべきだったのだ。
元人狼行政担当者が再び担当者になる事を禁ずる、と
そして、人狼犬は変わった。
細かい犬種になったのではない。
全てまとめて忍者犬になったのだった。
これは、世界忍者猫が人狼犬を変えて、約束をする話。
世界忍者国民には知られていない話である