マージ済みですが、こちらにも。
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「銀行システムを整備したいと思うのねう」
結城由羅の提案に、2人の摂政――久堂尋軌と濃紺は、無表情だった。急に華族会議が招集され、何事かと思っていたからである。
「銀行…ですか?」
「まあ、エミリオの協力が得られるかどうかじゃないですか?」
尋軌はよくわからない、といった風に首を傾げ、濃紺は現実的な点を指摘する。
「金融系のACEのアドバイスは必須だと思うねう。
…まあまずこれを見てほしいのねう」
由羅は頷きながら資料を広げる。裁定作業時に入手した裁定案の一覧だ。
「ああうわあ」
編成時のミス指摘の一覧を見て、尋軌は目を背けた。尋軌は罰金という言葉に過敏である。たまに王城の片隅で「ごめんなさいごめんなさい」と言いながら倒れていることがある。
「ああこりゃ、激しいですねぇ」
対して、濃紺は相変わらず淡々と事実を述べるだけである。そうなってしまったものは仕方ない。そんな様子は、北国という環境で生きてきた人狼出身者のクールさと言ってもいいかもしれなかった。
「ターン初頭の生産で課されるだろう罰金のために資金が欲しいのねう。
まず、それが切実な問題ねう」
例えばT16の編成といえば、途中で担当していた尋軌が骨折するという非常事態があり、護民官に情状酌量を願う余地はあるといえ、それにしても罰金は払わなくてはならない。
「切実じゃない問題もあるのですか?」
尋軌が素朴な疑問を呟いた。
「うん、共和国で中央銀行を取ろうという話になってて、
それを伸ばすのをどこからにするかまだ決まってないんだけど、
もしそうなったときに対応できるように準備だけはしとこうかなって」
「なるほど」
「ふむふむ」
濃紺と尋軌がそれぞれ頷いた。
「それで、銀行の資料を取り寄せてみたんだけど、
投機銀行だとうちの国に合わないよねぇ」
結城由羅は別の資料を取り出して、摂政たちに回覧した。
「ああ、ギャンブル性が強いんですね」
「うん」
ひととおり目を通したあと、感想を述べる尋軌に由羅が頷く。
「清貧の神様を祭る国に、
投機はちょっとびみょーかな、みたいな」
「国民を直接支援するような銀行がいいですねぇ」
「産業振興を目的とした方がいいだろうな」
摂政たちの意見に由羅はほっと安心した。
「じゃあ、そういう方向で進めていくのねう」
「エミリオにも協力依頼をしておいてくださいね」
華族会議での企画提案はこうして承認された。