「おやおや、珍しい組合せだねぇ〜」
作りかけになっている資料室を覗くと由羅は思わず声をかけた。
「あ、藩王さま。とりあえず、要塞艦ということで過去の海戦の資料。それと各国の近海領域の海図を用意しておきました。一応、艦長用に艦橋では圧縮データとして置いてありますので」
由羅に挨拶したのは、みはえる。元摂政にして現在は教育・文化系の要職についている。
「ありがとう。悪いね、忙しい所なのに資料の整理させることなっちゃって」
「いえいえ、最近は自分のことに集中させてもらってますからね。このくらいは大丈夫ですよ」
みはえる自身は簡単に言えば、忙しい。藩国の仕事もあるのだが、小説を出版して子供から大人にまで人気になってしまった小説家なのだ。
「そう言ってもらえるとありがたい。とりあえず、藩国部隊が出撃してしまった後とかに色々何かあった場合…そのときは、指揮をまかせる。いつもの事だが命を大事にで頼むよ。……でだ」
由羅は資料を整理しているみはえるの反対側を見ると、そこには異様な光景があった。
「いっさーつ…にさーつ…やっぱり足りなーい…」
まるで怪談話にでてくるようなテンションで棚に収まっている本の数を数えているくぅであった。
「くぅさん………何してるねぅ?」
恐る恐ると由羅が声をかけてみると、くぅは振り返り涙目になって
「藩王さまー!あの腹黒摂政がーー!摂政が――!えぐえぐ」
かくかくしかじかと説明を受けてみると由羅は難儀やなーという表情になった。簡単な話で言えば、要塞艦において物を置くスペースは限られている。だから娯楽用の本はあまり置けないという説明だったらしい。
「で、この本棚は何を…って、見ればわかるか…」
数は限られど、その道にいるものならわかるラインナップだった。そう、それはTRPGのルールブックである。
「まぁ、数はあった方がいいけど…どうしようかな…」
ぼやくように考えた挙句に、由羅は自分のポケットから財布を取り出すと中から紙幣をとりだして
「このお金でルールブックを買って、お釣りでベマーラコーラを飲むと良いYO。まぁ、爺には説明しておくから」
「わーい、藩王さまはやっぱり僕らのおもったとおりの人だー!!」
歓喜の声をあげるくぅを見ながら、「なにこのミル●スカラスねた…」とぼやいたみはえるであった…。