藩王が仮設の政務室において藩王としての職務を全うしていると、コンコンというノックの音と共に摂政である久堂が姿を現した。
「陛下、今回の被害についてのレポートをお持ちしました。とりあえず、いいニュースと悪いニュースがありますがどちらがよろしいですか?」
服あちこちが煤で汚れながらも、普段とは違い真面目な顔をしながら報告をしてきた。
「あぁ、じゃぁ悪い方から頼む。まぁ、少しくらいの希望を持ちたいなら落ちる所まで落ちた方がいいしね」
結構ネガティブなことをいいつつも、久堂の方を確認しないで新たに必要な予算などに目を通していた。
「わかりました…では、悪い方から。今回で最も被害が大きかったのはロイ像ですね。777体あったロイ像のうちに現存するものは一桁になってます」
由羅はその報告に唖然とした顔を久堂に見せた。
「ひ、一桁…って、あれだけあったのがそこまで破壊されたの?」
「はい、Bだ…いや『賊』はロイ像破壊を丹念に行ったみたいでして。その代わりと言ってなんですが、この先はいいニュースというかは判りませんが良いニュースです」
「なんじゃそら」
半分呆れた顔をみせる藩王をスル―してレポートを読みあげる。
「人的被害においてはロイ像に比べると運が良いレベルです。なんせ重傷者は多数ではありますが、今のところ死者は確認されてませんので」
「……この騒ぎで死者が出てない?変な聞き方だけどどういうこと?」
流石に海千山千の藩王も信じられないといった顔で問いただした。
「えっとですね…『賊』がロイ像を破壊し始めたのを捕縛しようとして返り討ちにあったのが重傷者のほとんどです。トドメを刺されそうになったのですが謎の世界貴族が邪魔に入ったそうで…」
「……まぁ、返り討ちにされるの当たり前か。なんせあれだものねぇ…」
「そこで更に賊を囲もうとしたところ、謎の世界貴族が『敵わないことを悟って、人命救助を最優先にしろ!賊にかまうな!』という声に従ったとか」
「正解だな」
納得しながらも、その時のことを想像しながら謎の世界貴族に心の中で感謝していると目の前にスッと紙の束を差し出された。
「ナニコレ?」
「とりあえず、これからの計画書です。陛下は慰労会を企画実行していただいて…私は内政の練り直しです。この危機を乗り切ることで更なる発展を目指していきたいので」
「相変わらずの腹黒だな…偶然もチャンスに変える生き方なのね」
「まぁ、そんな所です。とりあえず今回は、治安維持に二線級部隊を配置。何かあれば精鋭を急行させる形をとりたいと思います。あと、燃えてしまった跡地なんですが…火避け用の公園を作っていきたいと思うのです。消防団がわりの火消し集団も組織して」
火消し=消火手段として水等を用いるのではなく延焼を防ぐために、周りの建物を壊すのをメインとする組織
「なるほど…世界忍者らしいって言えばらしいか」
「はい、これからのことになると思いますが、予備役を中心に担当制でやっていけばそれなりに被害を減らすことができるかと…」
「なるほどねぇ…わかった。検討してみよう」
「はい、宜しくお願いします」