イベント/30/答案:結城由羅
イベント/30/答案:結城由羅
星見司試験用答案。 イベント番号がずれていたため修正しました(2007-02-15)。 法官試験用答案はこちら→イベント/31/答案:結城由羅。
寓意 (ぐうい)
何かにかこつけて、それとなくある意をほのめかすこと。
(Goo 国語辞典より)
本課題は、無名世界観における、事物の符牒(その事物が何を示しているか)を示せということであると考える。
設問1 星の寓意を実例3つ以上あげて説明しなさい。
実例1:心の曇りとそれを払う存在としての星
「電網適応アイドレス<Hello new world>(4)」
「良いことを教えよう。心が曇ったら、澄んだ空や輝く星を見なさい」
「はい」吹雪センセイは耳を傾けた。
トーゴさんはゆっくり言った。
「そして心が曇っている人間がいたら、澄んだ空や輝く星を見せなさい。我々は星ではない。だが星の話をすることは出来る。それはあると、曇り空の下でも言うことが出来る」
実例2:心を曇らせる夜の暗さとその中で輝く存在としての星
「電網適応アイドレス <An abandoned dog>」
「八神くん。覚えておいてくれたまえ。星を見るには、まず、夜が暗くなくては。世界は良く出来ている。夜が暗いから心が暗く曇り、夜が暗いから、輝く星が現れる。我々の<ことわり>は、これとくらべてどれだけ良い<ことわり>なのか」
実例3:この世の闇(戦争の悲惨)とそれを否定する存在としての星
Return to Gunparade 12-1
夜は寒く、地上には敵味方の屍が折り重なり、生命の火も、ない。
楽師アーは死んだ子供の一人の亡骸を抱きながら、白い息と声を吐いた。
この世は闇だな。
いや、闇ではない。
巨人は天蓋に手を伸ばした。
巨人の肩に止まる鳥乙女もまた、天蓋に手を伸ばした。そして口を開いた。
物言わぬ巨人の代りに物を言った。
「闇ではないわ。星が瞬いている」
実例4:闇が広がるときに現れる星。よきゆめとの連動。
Return to Gunparade 12-5
「違うな」
ブータは、そうつぶやいた。
「あしきゆめと戦うのは、人ではない。幻と対等に戦うことが出来るのは、同じ幻のみ。あしきゆめと戦うのは本来我ら、善き神々と英雄達。とじめやみにあらわれて、ひらめきひかりですがたをけす、光の軍勢。あしきゆめの天敵」
ブータはみすぼらしいなりのまま胸をはって人間に言った。
「我々は帰って来る。今はこのなりだが、必ず帰って来る。闇が広がるその時には、天を見上げれば星が輝く。闇に脅えるな。星を見よ。星は、煌くことをやめてはいない」
実例5:星より小さな光でも闇は照らせる
ガンオケ白 ハードボイルドペンギン台詞
「俺達は、こんなライターの光だ。小さくて、吹けば消え飛ぶ、そんなもんだ。
だが、人の手がそれを包めば、消える事なく燃える事が出来る。暗闇なら闇を照らせる。
星のかわりだって出来るかも知れない。
なあ、坊や。俺達が、たかがライターの光だからって、絶望する事はないんじゃないか?
弱くて小さいからと言っても、炎は炎だ。
どんなに小さくても、闇を照らし光り輝く炎である事は間違いない」
これらの実例より、無名世界観において、星は闇を照らし人の心の曇りを払う存在と言える。ここで闇とは何かであるが、実例3や実例4のように戦争などの人の愚かしさが生み出す暗い状況のことであると考えられる。そして、星とは、実例4や5のようにそのような暗い状況にあって、それに負けずに人々の心に希望を与えられるような存在、無名世界観においては英雄や神々と呼ばれる存在のことであると考えられる。
設問2 瞳が青いの寓意を実例3つ以上あげて説明しなさい
実例1:滝川の目が青く輝いたとき
「NOTボーナス 瀧川奮戦」
「全ては一つを目指すただの流れ、その一つにさえ翼が届けば、あとはどうでもいい。手段にこだわるその内は、まだ甘い。我らの戦いは最後の一つ以外は全敗でも問題ない。それを良く考えろ」
綺麗な青い色に瞳が染め上がり、瀧川は鼻の頭の絆創膏をはがすと蹴り技で並み居る幻獣の群れを吹き飛ばし、つけて一瞬の隙を作り指先で幻獣の赤い目を突いて中身を引きずり出し、叫びながら拳を突き出した。
実例2:海法氏の瞳が青かったと記述されたとき
「60 海法の逆襲(3)」
「いいや、まだだね」
海法は薄い唇を震わせるようにして言った。
その瞳はいつものように茶色かったが、物語は、ここで彼の瞳は青かったと書く。
この一文をもて彼への敬意としたい。
実例3:青の厚志の瞳の青が強調されたとき
「OVERSさんのガンパレード」
長い時間を考えた後、速水は顔をあげて、綺麗な青い瞳を見せた。
「他人の為に血を流す勇気を、僕はまだ持っているか」
“その答えは、YESである!”
−OVERS・SYSTEMは、全てのシステムが正常であることを宣言します−
−アールシステム・スタンダップ 私の答えは“希望”である−
速水は鞘から己の剣鈴を引き抜くと、地面に突き立てて、希望号と同じポーズを取った。
その髪の色は黒すぎて、青く見える。
瞳は正真正銘、青色だった。
「ならば僕はお前の差し出す手を取ろう! 戦場を駆ける青となって!」
実例3のように元より瞳が青い存在については特にこれが強調されたとき、実例1、2のように本来青くない瞳が青く輝くときについて寓意が存在すると考えられる。なお、Aの魔法陣ファンタジーでは瞳が青く輝くとは、リューンが宿ったことを示し、精神的要素が抽出されるようになる。これは、そのプレイヤーが正義を体現したとSDが判断したときに行われる救済措置とされる。
さて、これらの例を見るに、どの登場人物も非常に困難な状況にある。しかし、あきらめることなくその状況を打破しようと全力を尽くすことを決意したときに、その瞳が鮮やかに輝きだす。つまり、瞳が青いとは、その人物がいかに状況が悪かろうとそれに抵抗する決意をしていることを表していると思われる。
ちなみに、GPM/GPO(第5世界)においては青い瞳は上位世界(第7世界方向)との接続を表すという瞳ルールが存在するが、実例2は第7世界での例であることも考え、ここでは無名世界全体での青い瞳の寓意について考えた。
設問3 にれの木の木陰の寓意を実例3つ以上あげて説明しなさい。
実例1:第2世界へのターニ出現ポイント
「BINGOボーナス」
にれの木の陰から造作もなく現れたのは、ミーシャが見たこともないような筋肉をした蛮人だった。
実例2:プレイヤーの介入開始ポイント
「14日目(昼)43 物語としての瀧川防衛戦 (戦闘詳報4)」
にれの木の木陰から続々と姿を現したのは真琴中隊の第4小隊、第5小隊、第6小隊の面々である。
実例3:エースプレイヤーの介入開始ポイント
「14日目(昼)39 エースゲーム(前編)」
SD:さて、是空さん
是空:はい。
SD:貴方が出てくるのはにれの木の陰からだ。
是空:ごそごそ、がさ「よっと」
是空:「あれ? ドコだ??」
SD:そこには猫の通り道があってあなたは提灯を持った猫に案内されてここまで来た。
実例4:妖精(レイカ)の登場のたとえ
「5日目・夜 式神の城ルート3 Cコース」
その声があるその限り、”妖精”は老いることも死ぬこともなく、現れるのだ。
どこからともなく、さも当然のように。にれの木の木陰から、アップライトの筐体の陰から。それは来るのだ。それがルールだという風に。
実例1〜3では非常に具体的に、にれの木というのはプレイヤーの介入開始ポイントであると考えられる。ちなみにAの魔法陣ファンタジーにおいては、プレイヤーは英雄徴募官(猫)の手によって神木から現れることになっている。
もう少し抽象的に言うなら、にれの木は、外世界存在であり英雄として行動するよきゆめが現れる場所として描かれる。実例4で言う妖精はレイカのことである。つまり、この木から現れるものは、世界を救う(外世界の)存在であることを示していると考えられる。
設問4 投票ボーナス4 谷口&咲良に寓意があることを推定しなさい。
この話の中の寓意について問われているのか、それともこの話そのものの寓意について問われているかによって答えが異なる。以下その2つの場合について分けて答える。
話の中の寓意
寓意は、事象がそのまま記述されずに言い換えられているときに存在する。「投票ボーナス4 谷口&咲良」の冒頭においては、吉田の指が飛んだなどという事象がそのまま記述されており、ここにおいては寓意はない。しかし、中盤空先生との会話が開始されるあたりにおいて、比ゆ的な表現が始まる。
猫は言った。
「本来はそのバランスを取り戻すための存在がいる。どこの世界にも、何もなくても、本来は人がいるその限り、それは夜が暗ければ暗いほど、闇が深ければ深いほど、天に星が輝きだすそのように、にれの木の木陰から出てくるものだ。事実はどうあれ、さも当然というように」
「それは」
咲良が震える声で尋ねると、空先生は優しく言った。
「それに名前を名づけるのが石田咲良、お前の運命だ」
空先生を猫と表現し、その台詞は非常に抽象的である。また、この表現を受けて、次の咲良の行動が以下のように表現されている。
咲良は歩き出した。雪をかきわけ、にれの木の木陰から現れるように。
咲良のそばに実際ににれの木があったわけではなく、比ゆ的に表現されている。このため、これらの中に寓意が含まれていると考える。
この話そのものの寓意
この話にかこつけて何かを言おうとしている、という意味であれば、この話の外側を見る必要がある。現状、少なくとも物語の上でわんわん(およびにゃんにゃん)の状況は悲惨な状況にある。これを見て、亜細亜の心が曇る描写がある。また、罰を言い渡す「ゲーム結果:イベント24 帝國査問会、結果」の背景は黒く、「闇の胎動」という記述もある。うがった見方をすれば、このような状況と対応させようとしていると考えることもできる。
設問5 投票ボーナス4 谷口&咲良の寓意はなにか。
設問4の構造を反映して2つの見方から寓意を考えてみる。
話の中の寓意
設問1より、空先生の言うところの「星」は、暗い状況にあって人の希望となる存在のことである。また、そのような存在はにれの木から現れるのだと繰り返されている。
この話における暗い状況とは、吉田の指が銃の暴発で飛んだことである。また、谷口は責任者として非常にそれに責任を感じている。比ゆ的に言うならば闇の中にいる。その様子を見て、彼を救おうと咲良が動いたことが、にれの木の木陰から現れるように、と表現された。これは、設問3より、にれの木から現れる英雄が闇を払う希望となるように、咲良が谷口の希望となり、結果的に精神的なバランスを取り戻したということを示していると考えられる。
なお、にれの木へ英雄を導く存在としての記号は猫であり、空先生が猫に見えたという表現は、空先生が暗に咲良を導く存在であるということを意味しているとも考えられる。
この話そのものの寓意
この話は、一人の少女が英雄的行動を取ることで、暗闇にいる少年の心を闇から救うという内容である。話の中で、
”失われたもの、取り返すべき物”
”人の過ちは、人が返す”
”人の悪が生んだ災いは人の善がこれを収める”
”人のあさましさの償いは、人の叡智が行うだろう”
という歌が繰り返し用いられていることから。現状すなわち人間の悪(ゲーム上の不正)が生んだ災い(=ゲーム上の内乱)は、人の善によって収められると述べられているのではなかろうか。そして、人の善とは、少女が何ができるかわからないが立ち上がり相手を救おうとしたように、立ち上がり救おうとすることであると。うがった見方であるかもしれないが、それがこの話にこめられた寓意ではないかと考える。
謝辞
情報提供を頂きましたしゃんぐ(はる)さん。問合せいただきました、海法さん。連絡いただきましたるしふぁさん。他ご協力いただいた全てのみなさまに感謝を。
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