設定文というよりは、ただのSS。
おまけ用。
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「えー、調査の結果、人狼領区を中心とした産業復興支援には、食品加工工場の設立が有効だとわかった」
王宮ロビーでの藩王からの説明に、ふんふんと頷く国民たち。中には、戦利品として新たに飾られたくらげの水槽をぼーっと見ている者もいる。それらを見回して、藩王はこほんと咳払いをした。
「ということで、シュー以下略缶などの大量生産を実施してはどうかと思う」
一拍の間、の後に渦巻く怒号。
怜夜「ええー」
神崎「なんでよりによってそれなんですか!?」
カヲリ「や、やめてください〜」
NA
説明しよう。「シュー以下略缶」、正式名称「シュールストレミング缶」とは、ニシンを塩漬けにして、缶の中で発酵させた漬物の一種である。一説では納豆の23倍とも言われるその強烈な臭いから、「世界一臭い缶詰」などと評されることもある。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0
「え、いや、人狼領区の加工食品っていったらこれじゃん?」
藩王はサンプルとして取り寄せた、ぱんぱんに膨れ上がった「シュー以下略缶」を掲げて見せた。ぎゃああ、と国民たちが遠ざかる。
神崎「持ってこないでくださいよ!」
怜夜「こ、ここで開けないでくださいね!」
北国では貴重なたんぱく質とビタミン供給源として好まれる「シュー以下略缶」も、森国では評判が悪い。初期の頃、貯蔵法が分からず、積んでおいたら破裂したせいであるとかいう、まことしやかな噂も流れているが、定かではない。
「まあ、さすがにここじゃ開けないけどね」
にやにやしつつ缶をテーブルの上へ置く。そこへ、駄犬こと人狼領主大神がひょっこり顔を出した。
「えーおねぇちゃん、開けないの〜?」
ひょいと缶を手に取る駄犬、に藩王はあわてた。
「ちょ、ま」
「ごかいちーん」 ぶしゅう
くぅ「ガスマスクどこー!?」 大 ・ 惨 ・ 事
その後、掃除が済むまで、会議は頓挫したという。
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「…まあ、冗談はこれくらいにして」
苦虫を噛み潰したような顔で会議を再開する藩王。臭気を払うため、窓は大きく開け放たれ、初春の風が穏やかに吹き込んでいる。ひっかぶったシュー以下略缶の内容物を流し去るため、シャワーを浴びたりなんたりで、30分くらい過ぎていた。
怜夜「冗談だったんですか!?」
駄犬「えー、これおいしいのにー」
缶に残った内容物をぱくつく大神領主。を他の国民はみな遠巻きにしていた。大神領主は白い目にも相変わらず動じる様子もなく、鼻歌を歌っている。
「しゅ、しゅ、しゅーる♪ しゅ、しゅ、しゅーる♪」
シュールなのはお前の頭だと怒鳴りつけたいのをぐっと我慢して、会議を続ける藩王。
「まあ、半分くらい? 他にも産物はたくさんあるし、シュー以下略缶はそのうちのひとつくらいじゃね?」
怜夜「…作るのは作るんですね」
「うむ」
濃紺「…現在、人狼領地の産物で加工に適していると見られるのは、このようになります」
人狼最後の砦、または駄犬防衛最終ラインとも言われる濃紺摂政が淡々と資料を配って説明をする。
駄犬「つまんなーい。要塞作ろうよ、ようさーい。おねーちゃーん」
濃紺(殺す、こいつは絶対殺す)
「…要塞の件はまた後でな」
駄犬をなだめつつ、先を促す藩王。その瞳には濃紺摂政への同情が湛えられていた。
久堂「世界忍者領で加工に適しているのはこのあたりですね。あ、現在再開発として北国で栽培を進めているシュウサイも加えておいてください」
摂政久堂がいつもののんびりした調子で世界忍者領側の資料を提示した。
濃紺「なるほど…では、国内の輸送は商業港を利用して…」
久堂「そうですね〜備蓄には食糧倉庫がありますから、原材料にも生産物にも利用できるかとー」
濃紺「ふむ、そうすると、輸出もそのあたりを連携させて…」
熱心に話し合う摂政'sを眺めつつ、駄犬を踏みつける藩王であった。
駄犬「いたいよ、おねーちゃーん」
「はっ、つい癖で」
駄犬「えー」
怜夜「もっとやっちゃってください」
神崎「潰しといていいです」
くぅ「こう、思い切ってぶすっと」
カヲリ「(汗)」