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「で…、拙者への用事は一体なんでござるか?」
ロイ・ケイリンが藩王に誘われて、半地下式になっている防音の部屋にやって来てから数刻が経っていた。
「すいません。ちょっと機材の調子が悪いみたいで…あ、こちらどうぞ…」
「いえいえ…ありがとうでござる」
ユキによって出された冷たいお茶をすすりながらも、その機材があるという隣の部屋をちらっとみた。
ぱっと見は録音機材みたいであったが、何のために自分が呼ばれたのかは謎である。
「いやぁ、お待たせ。今日お呼びしたのは他でもないのです。できれば、ロイさんにこの仕事をお願いしたく…」
そう言いながら音響を直していた白金優士と共に結城由羅が改めてお願いにやってきた。
「はぁ…(ペラペラ)…拙者でよろしいのでござろうか?」
「えぇ、ロイさんにしか頼めないのでお願いに来ました。ぜひ、よろしくお願いいたします」
そう言いながら、白金と二人で頭を下げた由羅はロイの前のテーブルにそっと白い封筒を差し出した
「些細ではありますが、こちらはお礼と…」
「いや、さすがにこの程度のことでお礼だなんて…っ!ありがたく頂戴いたす。微力ではありますが全力を尽くさせてもらうでござるよ!」
封筒の中身をチラッと見たロイは目をキラキラとさせながら決意表明して依頼された仕事をこなしていくのであった。
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世界忍者国に環状線がやっと通ることになった。合併の際に作ることができなかった為、共和国の中でも輸送の面で苦労していた。
そんな環状線が開通するという1週間前、藩国の主たるメンバーは世界忍者国駅のプレオープンの為に駅を色々視察をすることになっていた。
「いやぁ〜立派な駅ができたよね〜。これでうちも益々発展ねう、傍にコンベンションセンターもできてイベントできるし!」
「…ロイケットじゃなければ、もっと喜べるんですけど…はぁ〜」
藩王と桂林怜夜が戯れながら?駅のあちこちを視察して歩いていると、環状線の肝であるプラットホームへとやってきた。
「さすがに開通前だと綺麗ですねぇ…あ、ちゃんと掃除業者とも契約しないといけませんね。国の玄関なんですから常に綺麗にしておきたいですもの」
「そうねうねぇ〜、立派ねう…お?もしかしてテスト車両でも入ってくるねう?」
二人がホームで呑気に話し込んでいると、列車の入ってくる合図がホームに響いてテスト用の車両である黄色い列車がホームへと入ってきた。
列車はテスト用とはいえホームの位置通りに停車すれば、一斉にドアが開いてホームに案内が響き渡る
『世界忍者国駅〜世界忍者国駅でござる〜。わすれものにはご注意くだされ〜』
案内の声を聞いた瞬間に怜夜は一気に腰くだけになってしまい、由羅に寄りかかるようにしてすがりついた。
「あ、あれはなんですか!!あの声!ロイの声じゃないですか!!」
「そのとおり。私が頼んで声を当ててもらった!」
怜夜の反応にしてやったりと嬉しそうにしながら、由羅は大きく胸を張って偉そうに言い放った…まぁ、実際に偉いのだが。
「こんなの却下です!!案内だったら他にも声のアテがあるじゃないですか!」
「だって、世界忍者の駅なんだよ?だったら、世界忍者が出迎えの声をやるのにどこに問題があるの?」
「…くっ…け、けど…ロイにどうやって頼んだんですか!こんなの普通は受けないですよ!」
興奮しながら藩王に捲し立てる怜夜の後ろに、突然の人影が降りてきた。
「それは…こういうわけでござるよ。Lei…」
怜夜のすぐ後ろに現れたロイは怜夜の腰をいきなり片手で抱くと、藩王に軽く礼をしながら誘拐するかのように怜夜を抱いて運ぼうとしていく
「何するんですか!!ロイったら、離してください!」
暴れる怜夜に藩王はニヨニヨしながら手を振って送りだして
「いやぁ〜ロイにお礼としてリゾートホテルの宿泊券あげたんだけど超頑張ってくれてね。だから、楽しんでおいでー」
「……っ!おぼえてなさーーーーーーーーーーーいぃ!!」
ロイと一緒にリゾートホテルへと向かいながら暴れる怜夜を見送ると、由羅は再び駅の視察をおこなうのであった。
こんな経緯を経て、世界忍者ロイ・ケイリンが環状線を使ってやってくる人たちに一番最初の案内をしている。この国を楽しんでほしいと願いながら
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