一方その頃…
『ベマーラ入りチョコ新発売!!カリッと青春してみんなで食べてね!』
ここは某スタジオ、カメラの前で一人のアイドルがチョコをかじりながらポーズを決めると一瞬沈黙が支配して
「はい!OKでーす!おつかれさまでしたーー!!」
ADの叫ぶ声と共に、緊張していた空気が一気に緩くなると「おつかれさまでしたー」の声があちこちで上がっていく
「ふぅ…あ、プロデューサー!見に来てくれてたんですか!」
撮影を終えたアイドルが、現場の傍に立っていたサングラスとスーツの男性に嬉しそうに近寄って声をかけていく。
「当たり前だろう、俺が頼んだ仕事なのに全部律任せにするわけにもいかないじゃないか。よくできてたと思うぞ?」
「へへぇ〜でしょ?プロデューサーが変わってから私も頑張っているんですからねー!だw」
アイドルの名前は卯月律。最近になって、アイドルデビューした世界忍者国出身のアイドルである。大ブレイクとまではいかないが、さすがに世界忍者国特有というか一定のファン層には人気がある。今、プロデューサーと呼ばれていたひろきPの元で努力してきた結果が今の地位を築きあげたものだった。
「しかし、悪かったな。いきなり連絡したかと思えば、新作チョコのCM頼んじゃって」
「いいんですよ。仕事ならば…私を捨てて、別の娘に移ったプロデューサーですもの。私事じゃ動きませんって」
冗談を言うように、顔を覗きこんでいる律の顔を見ながらひろきPはバツの悪そうな顔をしてみて
「捨てたなんて人聞きの悪いこと言わないでくれよ、律。お前の飛躍に俺は枷でしかならないんだから、判ってくれ」
「べーだ。そんな事なんて百も承知ですよー。プロデューサーは摂政でもあるんですものねー。わかってますって」
あっかんべーをしてみながら、ひろきPこと久堂尋軌に笑って見せると茶化しながらCMの時に食べていたチョコの残りを口の中へと頬張って
「ん…しかし、このチョコレート本当に美味しいですね。食べ過ぎて太っちゃいそう…って、ギャラ…現物支給とか言ったら絶交ですよ?」
「美味しいだろ?去年のバレンタインに藩国で作ったやつの新バージョンだからな、美味しいからこそ製品化に踏み切ったわけなのさ…って流石に現物支給はないよ。安心してくれ」
某経理のプロの言葉である「契約は契約 文書は神!」はしっかりとこの芸能プロダクションに反映されているらしく、現物支給で済ませようとしていたひろきPではなく藩国の摂政としての契約をする羽目になったのは後々語られる物語であろう。
「とりあえず、撮影用に用意していたチョコの残りはスタッフのみんなでわけることにしました♪で、これから打ち上げしようと思うんですけど…プロデューサーはこのあとお暇ですか?」
「ん?あぁ、この撮影の為に仕事は休みにしてきたから大丈夫…だと思う。」
「じゃぁ、決まりですね。今夜は寝かせませんよ〜」
まさに獲物を狙う猫の目をさせながら律が笑うと、自然と両手の指がクイっと動いて暗号のようにある事柄を示す。
「…お前、この間の世界忍者闘牌で優勝してたろ…そんな猛者が俺とやって何の得があるって言うんだよ…」
まったく…とぼやくようにしながら、自分の頭を軽く掻いてみせて
「へへぇ〜だって、プロデューサーとやるとピリピリした雰囲気でできて凄い感覚がシャープになるんですもの。だから、今夜はみんなで麻雀大会で決まり!」
麻雀…世界忍者国で広がっているの今はマイナーなゲームである。知的要素が盛り込まれている所為か、徐々に人気が高まっててーべーにまで番組を持つようになった。
「わかったわかった。ただし、にゃんにゃんは賭けないぞ?その位の分別はわきまえてるだろうな?」
「はーい、わかってまーす」
そして、打ち上げと称して行われた麻雀大会の死闘を語るのは別の物語となる。