「さて、次の仕事はっと・・・って、おや?」
藩王としての仕事をこなしながら由羅が王宮の廊下を歩いていると、開きっ放しになっている部屋があった。気になりチラッと顔を覗かせてみると中では一組の男女が机の上の何かを見ながら話し合っているのがみえる。
「ねぇ、君たち何してるのかなぁ〜?もしかして、ラブラブとか?」
わけのわからない下世話な事をいいながらも、興味を持って二人に話しかけると部屋の中に入っていく。
「え、は・・・藩王様!そ、そんなじゃありませんよ!」
「あ、こんにちは藩王様。えっと、新燃料工場のパイプラインの配管図を眺めていました」
男女の反応の違いにくすくすと笑いつつも、二人の顔を眺めながら名前を思い出す。たしか、可銀の下で働いている技術者で今回は設計に携わっている二人であった。
「ほ〜新しい配管図かぁ〜。どう、効率よくなりそう?」
由羅が顔を覗きこんで配管図を眺めると、先ほどから真っ赤な顔をしていた女性があわてて髪を整えながらも図に指をさして説明をしはじめていく。
「えっと、最初は難航していたんですが久堂摂政からアドバイザーを紹介していただきまして。そのおかげで前のよりも効率のいい配管が可能になりました。大体配管だけで5%は効率が上がる計算になります」
「へぇーアドバイザーねぇ・・・初めて聞いた気がするYO」
「そうなんですか?先ほども二人でこの図をみて指導いただきまして。赤と緑のオーバーオールの兄弟の方なんですが・・・」
さすがに藩王が知らないのを不思議そうにリアクションをしながら男が二人組みの容姿を説明してみせる。すると、由羅は唖然としながらも、男の方に確認をするかのように自分の指を鼻の下においてみて。
「………もしかして、二人とも髭はやしてた?ちょび髭ぽいの」
「はい、はやしてました。やっぱりお知り合いだったんですか?」
「ま、まぁね…(いいのかなぁ…あの二人なんか連れてきて…)」
微妙な表情をさせながらも、図面の説明をうけると時計をチラッと眺めて
「おっと、もうこんな時間か。じゃぁ、後は頼むよ二人とも」
そういって二人の肩をたたくと、女の方に近づいて耳打ちするように囁いて
「お邪魔虫は退散するねぅ。ちゃんとゲットしないと後悔するねぅよ。ガンバってね」
藩王よりの耳打ちに顔をさらに真っ赤にさせて湯気まで噴き出す女性にクスクスと笑ってしまいながら、次の仕事に向かうために部屋を出て行くのであった。