「おー絶景かな絶景かな♪随分と立派にできあがったものだねぇ〜」
ここは、湾から少し離れた高台にある公園。そこから見えるのは新しく移築された燃料工場であった。
藩王の宣言通りに、新しく建てられた燃料工場は従来の工場に比べて23%もの効率アップが果たされた。
その報告書を見た藩王は大満足しながら関係者各位に金一封を与えたのだが、藩財政を司る金庫番の鐘音は黙認した。何せ、関係者全員よりも23%の効率アップの方が藩国としては重要であるのが明白なのである。
「ゴホン…えっと取りあえず、お手元の資料をご覧ください」
冒頭のご機嫌のセリフをいいながら藩王である由羅が新燃料工場に目を輝かせていると、妖精の父親アイドレスを着た摂政の尋軌が資料に目を通して説明をしていく。
「えー今回の移築ならびに部品交換により、かなりの効率アップができたことは資料をみればおわかりだと思うので省きます。今回は、さらに工場の周りの説明になりますので、周りをごらんください」
久堂の言葉に、集められた政府関係者は資料から新しい工場へと視線を変えていく。
「まず、新しい燃料工場なのですが此方は代用燃料の変換装置も隣接させました。それに伴い二つあった施設が繋がって省スペースを可能に。さらに空いたスペースを港として運行し、燃料を運ぶためのタンカーや漁船なども停泊できるように作りかえました」
その説明をした直後に、ボーっと汽笛の音が響くとタイミングの良さにクスクスと笑ってしまう者も出てくる始末。
「コホン…で、その港を守る為に更に色々と手を加えました。安全面に関しては妥協することなく予算を組みました。こちらに関してはご了承ください。まず、湾内に高波や津波・高潮がこないように湾の出口において、緊急時には消波できるようにシステムを導入してあります。最悪の場合は湾内を閉鎖して燃料が漏れることも防ぐのにも使いたいと思ってます」
そう言いながら、資料の使用想像図をご覧くださいというと更に説明を続けていく。
そんな真面目な説明会を既に準備の段階で聞いていて、こそこそと抜けだした由羅は公園の柵に寄りかかるようにして海風を浴びながら「この燃料工場がこれからも人々の為に動きますように…」と呟くのだった。