「工場長〜忍者刀の見本できたんだって?」
藩王である結城由羅が中央整備工場(通称:開発局)に久しぶりに足を運んだのは、工場長である可銀より忍者刀の試作品が完成したと連絡があったからだ。
軽く開発室の扉をノックして了解を得るとガチャリと扉を開け、目の前に台座に二振りの刀が置かれているのを見て由羅は目を輝かせた。
「おぉ〜こ、これが忍者刀かぁ〜。かっこいいねぅね」
まるで子供のようにはしゃぎながらも、まずは観察からなのか周りをぐるぐる回るようにして刀を見て違和感に気づいた。
「ねぇ、可銀さん。なんで違う種類があるの?これ、忍者刀だよね?」
由羅がたずねるのも無理はなかった。一振りの刀の方は、まさしく由緒正しい忍者刀なのだがもう一振りは日本刀すらない白兵で使われるカトラスの形状をしていたからだ。
「ぁ、藩王さま。一応試作品なんですけどね、できあがりましたよ…あぁ、これですか?もう少し待ってください…」
「??」
そう言いながら可銀は持っていたストップウォッチの画面をチラッと眺めつつ、アバウトな説明をすると残り10秒などと呟きながらカトラス形状の刀を眺めていた。
「3…2…1、パチン!」
可銀がカウントダウンと共に指を鳴らしたかと思えば、カトラス形状の刀は一瞬にして隣に並んでいたものと同じ忍者刀へと変化したのだ。今は同じ形の忍者刀が並んでいる。
「っ、えぇぇぇぇ!」
由羅が【驚きの】声をあげるのも無理はなかった。さっきまでカトラスだったのが忍者刀に変わったら十中八九驚くものである。
由羅の驚きぶりに満足そうにしながら、可銀は元から置いてあった忍者刀の一振りを手にとって何度か軽く動かしてみる。すると、今度は忍者刀がカトラス形状へと変化する。
「な、なんでぇ?」
余りの展開に目が点になりつつも、由羅も忍者刀を手にとって何度か振ってみる。しかし、可銀がやった時のようにカトラス状に変化することはなかった。
あまりに不思議そうな顔をする由羅の表情に満足しながら、可銀は机にあったスイッチを押して遮光カーテンを展開させていく。部屋も暗くなって、これから何かを見せるようだ。すると、元から用意されてスクリーンに動画が映され始めていく。
『やぁ皆さん、私の研究室へようこそ』
どう見ても舞台の書割でできた教授室をバックに、可銀が蜘蛛の夜空さんを頭に乗せて現れる。どうみてもメガッサの屈辱(世界忍者てーべーで放映中)のパロディであった。
そして、動画が進むと世界忍者と忍者刀の歴史について講義が始まっていく。もちろん、パロディらしく教養というよりはネタであるのだが、途中より<変化の術と忍者刀>の項になると、由羅は想像を超えた理論に開いた口が塞がらなかった。
『変化の術と世界忍者が組み合わさると忍者刀にもそれは影響し、変化の術が忍者刀に伝播する。すると、忍者刀は形を変えて世界忍者の手に現れる』
『姿が変わった忍者刀だが、何かしらの能力が加わる訳ではない。ただ見てくれが変わるだけで寸法や切れ味は元の忍者刀のままである』
『変化させるには世界忍者であると共に条件が存在する、それは一定のコマンド(刀振り)を行うことで忍者刀を変化させられるのである』
数分後、動画が全部終わってカーテンが開けられると急な明るさに目を細めつつ由羅は可銀の方を見て問いただした。ちなみにEDにはスタッフとしてなかだいの名前も確認している。
「えっと…この動画、全部マジ?特に変化の術と忍者刀の関連性って?」
「マジじゃなかったら動画なんて手が込んでるの作りませんって。とりあえず、判りやすい説明ではあったと思いますけど?」
「まぁ、そうなんだけど…信じるのも難しいと思うねぅ」
苦笑しつつも、動画で説明されたコマンドの通りに忍者刀を振ってみると確かに由羅の手にはカトラス状になった忍者刀が現れた。
「しかし、あれよね。これって、忍者刀の変化バージョンだけにするには勿体ないデザインねぅ。いっそのこと、新たに作って人狼傭兵に渡す忍者刀ってこのバージョンにしちゃおうかな?」
「あぁ、それもいいですね。忍者刀と二種類作ってどっちか選ばせてあげてもいいかもしれませんね」
由羅は決断すると、今回の試作品としての忍者刀とニンジャカトラスの大量発注を藩王として命じた。これからの戦いにおいて、必要と思われるからだった。
「よし、とりあえず改造各自自由にして私のはキラキラでイルミネーションぽく光る仕様にしよう。うん、そうすれば私が目立つ!」
「そ、それは凄いですね…」