<<SS>> (作:神崎零)
〜序章編〜
忍者が乗れるシステムを
世界忍者国では日々世界忍者が活躍出来る日を夢見ている。 そのための努力も日頃行われている、方向がぶっ飛んでいたとしても、だ。
「そういう流れなのはわかります、体格や筋力が他の近接系に負けてるからあまり使えないイメージなのもわかります」
神崎はいつも通りの実験台になるのを予感しつつも珍しくシリアス顔だ。 馬鹿だなぁ、そうやって逃げようとする時が必死だから遊ばれてるのに。
「そりゃ必死にもなりますよ!毎度毎度よくわからない実験で生死の境をさ迷い続け!やれカタパルトだのなんだのと!」
それでも死んでないんだからいいじゃねーかw 第一お前が欲しいって言い続けたくせに
「くっ」
話の流れでわかってたろうに、自業自得だ
「濃紺さん、俺はやっぱ忍者ロボで体格補って上昇値だけは使えば強いと思うんだ」
燃料ないのと操作出来ないのを除けばな。
「ここはあれだ、手裏剣と忍者刀以外はパージすれば負担へらね?」
機体の燃料と資源は?
「資源は装甲落として体を軽くするとして・・・燃料は人型戦車みたいに食料で」
やるなら人型戦車の技術を使って低ARで移動したいよな。
「そうそう、本当なら白兵しか出来なくして白兵攻撃のARも下げたいんだけど機体能力というより技術か絶技に近いものになるからなぁ」
ロマンはあってもI=Dじゃないな。 何より、動かせないからな
「なんだよなー」
惜しいとこまでは行ってるが神崎の案じゃこんなもんか。 しかし、なんだ、人の気配がするような。
「今日子が恋しいんじゃね?」
どうやら年下の女に敵わんへたれが自殺したいらしい・・・なっ!?
「何変な声あげて・・・げ」
どうやら俺は疲れてるらしい、天井から二人ほど生えてるように見える。
「ふ、こんなこともあろうかと!」
「あ、よくみたら天井裏にひっかかってら」
「こんなこともあろうかと!」
「え、スルー!?というかそれが言いたいだけだよね!」
頭痛いな。
「今の話、聞いてましたよ」
「今日子が恋しいって話?」
どうやら本当に死にたいらしいな、天井に引っ掛かって下りられない方だろ。
「違ーう、忍者がI=D使えないって話」
「こんなこともあろうかと、人狼の技術と世界忍者国の技術を融合させて忍者専用機を作っていたのだ!」
「実験はまだだけどね!」
「げ、嫌な予感が」
ちょうどいい、神崎がやるそうだ。
「おのれ濃紺!」
「操作方法は簡単、動かしたいように体を動かすだけ」
身体の動きをトレースするのはわかるがラグやらが致命傷じゃないのか?
「そこは世界忍者国の誇る名機にゃんばいんの瞑想通信による操作を補助機能に組み込んであるから大丈夫」
にゃんばいんは農作業用で細かい操作は出来ないはずじゃなかったか?
「人間が細かい作業を遠距離でものも無いのに思い描くなんて出来るわけないんですよ、そんな精神はありえない、だから出来なかった」
「そこで【身体】と【精神】両方を読み取る事で操作するんですよ」
森国人の能力を使うのはわかったが混線とかは大丈夫なのか?
「一度登録を行ってその精神の持ち主以外は受信しないようフィルタをかけます」
「ついでに登録者が登録変更を願わない限りは摂政以上の権限がないと持ち主は変更出来ません」
それも瞑想通信を使うわけか
「そのとおりです」
「でもさ、どこに人狼の技術使われてるの?」
「いい質問だ神崎君」
「君たちの言ってたように人型戦車の技術、笑顔号の人工筋肉を使うことで限りなく元の動きに近いものを実現しています」
WDのインナースーツみたいなのはモーショントレースに必要だとして、上に服は着ちゃ駄目なのか?
「機体動かしてるときは出来るだけ余計なものは着けたくないですよ」
「乗ってるときはこれだけなのは定番でしょ」
「それで、俺は何すればいいんです?」
機体もないみたいだしな
「とりあえず、登録システムが正常に動くかとどれほどの精度で動きを再現できるかですね」
実験はしてないのか?
「摂政のデータ入力が済んでないのもありますし、何より不具合あったら困るので実際にはこれが初めてです」
「え、それ俺やばいんじゃ・・・」
そのための神崎だろ。
「扱いがひど過ぎる!」
「このターン妖精の父親を着てる俺に不可能はないはずだよ」
「徒理流さん、そういうのは森さんを落としてから」
「・・・ふん(ポチッ」
「いやいや、そこで半笑いのまま押すのは悪意がありすぎる!」
自業自得ともいうがなw
「まぁ上手くいったみたいだからいいじゃないか、廃人とかになってる様子もないし」
「データ入力も登録も正常みたいだし、残念だけど爆発もしないし」
残念だ。
「じゃあ次は濃紺さんの登録と登録解除が可能か、ですよね」
恨めしそうにこっち見んな。 第一、他の人間で動かないかのチェックが先だろ、松永さん。
「だそうですよ、松永さん」
「それは後で、いや、やめ、怖い顔してにじり寄るな!」
「【やったな】」
「絆っぽくごまかすなー!!!」
「汚された・・・」
諦めてさっさと脱げば無理矢理なんかしなかったんだがな。
「まるで悪党の言葉ですよね」
神崎同様死にたいらしい。
「可愛い人狼傭兵がデレて、戦場に向かったから急ぎたいんだよ」
「デレ?」
その問題は後に使うんだからヒントを出すな。
「(なんで自分で着て自分でデータ取りしてるんだろ、しかもエラーしか出ないのに)」
「次は濃紺さんですね」
意外に全部正常に動いてるな。
「ですねー、星にも爆破オチもなく」
「変更も成功しましたし」
「痛い目にもあってないです」
感想が間違い過ぎだがとりあえず操縦系はこれで行けそうだな、後は実際機体がどれだけ再現出来るかだが。
「そこは実機を動かさなきゃわかりませんね」
「今回の目標はあくまで強力な個体を作るわけじゃなくて安価で量産可能にして世界忍者の強化が目的ですからね、再現出来なきゃ意味ないですから」
まだ出来てないのか?
「人工筋肉は人狼傭兵が修理なんかに使ってた工場があったからそれで充分行けそうです」
「流石に長くやってただけはあって技術は進歩してました、なまじ他の技術に手を出さないで向上させた分初期のものに比べてかなり高性能ですね」
武装なんかはどうするんだ?
「濃紺さん達の言ってたように白兵戦用に刀を、メイン兵装は手裏剣ですね」
「他に、移動補助用に鈎づめにワイヤー、対歩兵用にまきびしなんかを予定しています、あらゆる火薬を使わないことで燃料の使用しない予定です」
刀なんて作れるのか?
「世界忍者国には世界忍者が使う刀を代々作ってる人達が居ますからね、世界忍者の動きを再現する為にも腕のいい鍛冶屋の慣れた刀は必須かと」
「だから世界忍者の装備に近いものをって事なんですね」
ちなみに何で忍者専用機なんだ?
「世界忍者専用機じゃ駄目なんですか?」
「量産機は数を揃えてチームワークで戦うものです」
「世界忍者は本来単機で戦況をひっくり返すものです」
現実はそうじゃないがな
「だからこそ、この機体をバネに世界忍者専用機を別に作るんですよ、ACE機として」
「円卓の騎士とか四天王とか12神将みたいな数を限って、うちの国の全技術力を持ったハイエンド機体を、ですよ」
シリアスに終わらない辺りがうちらしいな。
〜導入編〜
「発見、逃がすなよ、確保しろ!」
「おのれ、濃紺!!」
世界忍者国某所、傭兵協力者宅にて
世界忍者国某所、実験場にて
「元人狼整備開発担当の快い犠牲によって、遂に完成した試験機、いやー量産型はいい」
そこは、異様な空間だった。 試験機を前にして笑顔の松永、そして、大量の人狼民を中心とした整備士の死体達。
「これは・・・どういう事ですか・・・?」
そして、相変わらず実験台として連れて来られた神崎、遠い目な濃紺、そして、流石に驚きを隠せない藩王だった。
「人権を無視してまで労働させろとは言ったつもりはないのだけど、どういう事か説明をしてもらおうか」
珍しく怒りを表に出す藩王を前にして、狂気にも似た笑顔のまま、松永は答えた。
「ああ、彼らですか?これは彼らが悪いのですよ、私の考えを理解しないのがね、それよりもこの試験ふべらっ」
松永はトリプルアクセルを決めながら頭から着地した。
藩王が怒りの鉄拳を決める前に吹き飛ばしたのは、ハリセン装備の濃紺だった。
「悪人みたいな事を言ってどうする」
「え?」
「濃紺さん、死体がみんなダイイングメッセージを残してます!」
確かによく見ると死体?の回りには血?文字が書かれている。
「説明はこれを見せた方が早そうだな」
濃紺の指差した先には、一人分のダイイングメッセージ。
「ええと、白と赤のツートンカラーが量産型の正義・・・って」
慌てて他のダイイングメッセージも確認する。
「こっちは、試験機はトリコロール、それと、やっぱり対空ミサイル、大剣だろ、マキビシランチャーと合体機構が必要、でかい赤マフラー、青がいい、城型ロボにするべき・・・何これ」
「ふふふ、男達の夢の後ですよ、やっと、量産機を緑に出来るというのに!」
血を噴き出しながら笑顔で復活する松永と、それを憐れなものを見る目のまま濃紺。
「いや、夜間迷彩でダークブルーって決まっただろ」
「だから、渋々試験機だけ緑に・・・」
「どうしました?女王様?」
頭を抱える藩王を気遣う神崎、そして藩王は思うのだ。
「いきなりシリアス展開かと焦ったじゃないか」
と
〜実践編〜
「まずは、スペックを紹介しましょう」
「紹介する前にすでに中に入れられてる僕がいるんですが」
「まずはボディですが」
設計資料をもって徒理流が現れる。 神崎の声が当たり前のように、スルーされながら。
「徒理流はあの惨状に参加してなかったのか?」
「ええ、だって、次の世界忍者機が本命なので」
「一瞬、良心からかなとか生易しいことを思ったのは切ないな」
「藩王様、涙が・・・どうかしましたか?」
「いやなんでもない、それで、ボディの資料だが・・・」
「ええ、これです」
徒理流から渡された資料には、基本は人型戦車であることを示している、つまり、予定通りの食料で動くI=Dということだ。
「簡単な話をすれば、I=Dと人型戦車の中間、それこそ、スーパーフォートレスや大型WDなんかに近いですね」
「うちが独力で作る初めてのものだからな、流石に発想が違うな」
「うちの国の財政上こうなるのは仕方ないんですけどね」
「開発陣には無理をさせたな・・・って、武器がブレードだけになってるんだが」
資料には武器がブレード、としか書いていない、そもそも手裏剣と日本刀という話だったような・・・
「そうですね」
「手裏剣は?」
「あとでお見せします」
「日本刀がブレード?」
「そうですね、あれと人型戦車の移動力をつかって白兵だけで戦う予定です」
「付属品もあるのね、移動補助用に鈎づめ付ワイヤー・・・だけ」
「そうですね、移動補助兼侵入用です」
「索敵装置は・・・中の人依存」
「そうですね、索敵用+密閉するために正面は頑丈な窓があるだけ、あとは世界忍者の感性に依存してます」
「ロボとしてどうなのかな、これは」
藩王は、まさかの低スペックに頭を抱えるしかなかった。
「そもそもこれは、I=Dの皮をかぶった世界忍者用パワードスーツですからねー、地上防衛や侵入とか、世界忍者の補助器具に過ぎないですし」
「そうそう、夜戦時に燃料馬鹿食いするのが嫌だから暗視装置も全部はずし、燃料消費を限りなく抑えたI=Dというのもありますよ」
「切ないなー、うちの問題とはいえ」
「夜戦装備をすて、白兵武器以外をすて、身軽でハイパワー、そしてローコスト、ついでに世界忍者が乗れると、問題ないじゃないですか、まぁ世界忍者の白兵能力前提ですが」
「ついでに聞きたいんだが、前回森国人しか運用できないシステム、と聞いたけど、世界忍者以外も使えるのかな」
森国人しか運用できないシステム、世界忍者国の誇る名機にゃんばいんの瞑想通信による操作システムを補助機能に使っているのだ。
「今回実験をしてわかったことがあります」
「俺より前に実験した人がいるんだ・・・」
当人の神崎どころか、藩王、濃紺の開発陣以外の面子は全員意外そうな顔をした。 もはや実験の最初の犠牲=神崎というのが当たり前になっていたのだ、ロジャー像の隣にLei像を建設するのと同じくらいに。
「それで、その結果は?」
「世界忍者以外、動かなかった、というのがわかりました」
「それは何故?」
「ぶっちゃけると、世界忍者力不足ですね、加速装置の時のように、世界忍者が関与することによってギャグフィールドが展開されて(中略)によって動くものと思われます」
「つまり、世界忍者専用ということか」
「そうなりますね、しかも、一定のギャグ力をもった」
「根源力じゃないのが笑えるところだな」
「というわけで、動くとは思うんですが、世界忍者で動かすのは初めてですが、神崎君、頑張ってくれたまえ」
松永の無茶振りで、神崎は動かすことになった。
「えーっと、どうするんだろ、既に起動中っぽいけど・・・」
神崎が首を傾げる、忍者機もまた、首を傾げる。
というより、実はさっきから神崎君がキョロキョロしたり驚いたりしてる時から、忍者機は反応していたのだ。
「とりあえず、神崎君、立って外に行こうか」
「そう言われても、どう・・・動かしていいのか・・・えーっと、だーっ説明書くらい欲しいなぁ」
「機体も共に頭を抱えて立ち上がってるのに気づいてるのかな、あれは」
完全にシンクロして忍者機は頭を抱えながら立ち上がってた、中の人の動きにあわせて動いているのだった。
「って、なんか外の景色が変わった!?高いところにいるのか・・・」
「やっぱり視認性が悪いのか、改良するしかないんじゃないか?」
「でも予算的にはこれくらいが限度で・・・って試験機はどこに行った?」
濃紺と松永が真面目な話をし始めている時、いつの間にか試験機は消えていた。
「ああ、二人で遊びに出て行きましたよ」
藩王と共に。
「ふむ、肩の上も十分高いな」
「そうですねー、いやーまさか完全に体動かすだけでいいとは、すごい楽です」
普通に考えれば、目線は違うし体を動かして巨体が動くから意識にズレが生じるはずである、そうならないのが世界忍者の特性ともいえるのかもしれない、順応性がというか、自由な意志がか。
「マニュアルにあるとおりだと、ブレードは手首あたりから肘にかけてついてるからと簡単にもてるらしいんだけど」
「おおー、女王様の言うとおり、持とうと思うと手に感触が」
装備されているブレード、名前もそのままニンジャブレードを使ってすぶっている。
「ふーむ、あとは、手裏剣モードがあるらしいけど」
「へーやってみますか?」
「それもいいな」
「まずい・・・あの二人のことだ、手裏剣モードを起動してしまう・・・っ」
「というのは?」
「手裏剣モード、つまり、両手両足についたブレードを使った人間手裏剣・・・」
「G●ンみて思いついたんだな」
「そうともいいますね、己を手裏剣として用いるんですが、実験機で、使い方もろくに知らずに使ったらどうなるか・・・」
「ちなみに、それって飛ぶのか?」
「跳ぶに近いですけど飛びますね、くるくる回って」
「ふむ、俺達に向かってきてるアレ見たいな感じか?」
「そうそうそんな感じ・・・ってあれ?」
「そんなんじゃないかと思ったんだ」
濃紺の声は、松永、徒理流からは遠い。
「なるほど、つまり世界忍者国らしいオチがつくと」
「いままで実験で事故らなかったからなぁ・・・」
「「「ぎゃああああああああああああ」」」
その日、突如として回転を始めた機体に振り回される神崎、直撃しかけた松永、徒理流の悲鳴が世界忍者国に響いた。
〜報告編〜
その日、実験こそグダグダになってしまったが、成功はしていた。
予想されていたように、世界忍者にしか乗れない、森国人専用の仕様で。
最近、開発部隊として活動して判った事がある。
世界忍者国における世界忍者の特異性である。
新世界忍者が生まれた時、世界忍者に呼応するように専用のアイテムを作りだしていた。
そして、今回の忍者機、これも世界忍者にしか乗る事が出来ないピーキーな乗り物が出来上がった。
これは世界忍者という存在が、この世界の影として世界を守る為に力をつけているんじゃないのか?そんな事を考えた。
これを、女王様や濃紺摂政に話した、すると女王様は言ったのだ。
「これは、うちの国の世界忍者愛がなせる奇跡じゃないかな」
と、そして
「いや、世界忍者を選び続けた結果の運命だろ」
と、濃紺摂政も言っていた。
今、俺達は世界忍者機の試作をしている。
今度は世界忍者国の全てを注ぎ込んだハイスペック機、予算部度外視したT18最終決戦用。
TLOすら覚悟した、根源力制限付きの少数精鋭専用機だ。
これが完成するかはわからない、忍者機次第だろう。
出来れば作れても、使わないのがベストなのだが、要塞突撃、地上防衛等の特殊作戦専門なのだから。
開発部隊所属、松永の日記より
日記を書き終わった辺りで、外から声が聞こえた。
「次は真世界忍者が来るって!」
「根拠は?」
「新世界忍者がギャグで進化したじゃん?でも元々の世界忍者ってギャグもシリアスも同時にやるから格好いいのに笑えた、つまり、シリアスによるギャグなのが出るね!」
「ふむ」
また、面白そうな話をしている。
「てっきり忍者機を想定した補助が出来る職が来ると思ったが、もしくは白兵強化だな」
「えー、またカトラスか」
「絶対いけるだろ」
「忍者なのにカトラスはないって、忍者刀なら考えるけどさー」
扉を勢いよく開け言うべき事をいう。
「そんなのよりヒーt『そんなのよりドリルに決まってるじゃないですか!!』
「なん・・・だと・・・」
いう、予定だった。
「ドリルを人間につけるのはないなー、って、松永さんなんでorzな体勢してるんですか?」
「いい、気にしないで」
新しい戦力を考えて夢見る今日も、世界忍者国は平和だった。