ここはとある国の寂れた街、そこにあるのは小さな雑貨屋。
カランという音と共に二人の男が店に入ってきた。
「ちーす、じいさんいるー?」
「こんにちは…相変わらず寂れた店だな。」
二人は勝手知ったるとばかりに、まっすぐに奥のレジへと向かうと現れる人物を待った。
「なんだ、客かと思ったら随分と懐かしい顔がやってきたの。あと、寂れた店はよけいじゃわい」
現れたのは、腰の曲がった小柄な老人。顔見知りなのか、店の悪口にも特に気にすることはなく二人を迎えた。
「しかし、久しいの。傭兵をやめて忍者になったと聞いたがこの店になんのようじゃ?あまり忍者に役立つようなのは扱っとらせんぞ。茶飲み話をしにきたとも違かろう?」
眼光鋭い老店主が客である大神・濃紺の二人を見あげながら応接室へと言った。
「さて、ここは盗聴もない安全な部屋じゃ。注文を聞こうかの」
「コレ〜、これ売ってほしいんだよねー。じいさんのところで」
そう言いながら応接室に入るなり、超リラックスモードと化した大神が老店主に紙を提示すると、老店主はメガネをかけて紙に目を通す。
「なんじゃこれは…お前等、戦争でもするつもりか?武装の35mm連装対障害機関砲に多連装ロケットシステム…それに45口径46cm3連装指向性EMP照射砲塔とかわけがわからん。そこら辺の説明がないと買い付けなんぞできんぞ。おまけになんだこの量は…」
呆れるように老店主が紙をテーブルの上に戻す。この店では弾薬、燃料、食料、衣類や日用品に至るまで手広く扱っていた。
「実は…うちの国で、今度要塞艦を作ることになったんでね。その兵装をここで取り扱って欲しいと思ってるんだ。知らない所で買うとどうにも不安要素が出てくるんで。じいさんの所だったら、俺たちが知ってる中でも安心性で高いし。何より…俺たちは貧乏人だ、じいさんに頼むのが一番だろ」
そう言いながら笑いながら両肩をすくめつつ、濃紺が事情を説明してみると、老店主は呆れるように座っていた椅子に寄りかかった。
「ふむ…なるほど。うちは小さいがそう言う面ではそれなりを施してるつもりだが…しかし、この量はまかないきれんぞ」
「えー。じいさん、いつも『金さえだせば、マンハッタンだって引っ張ってくる』って豪語してたじゃーん」
「いや、大神お前…あれをどこまで本気にしてたんだ…」
武器の取り引きをしているようには思えない会話をしつつも、老店主は紙に書かれている兵装に持っていたペンで色々と印をつけていく。
「とりあえずじゃ…これとこれはウチで取り扱おう。じゃが…この主砲とかに関しては、さすがにのぉ…。まぁ、お嬢のところならあるじゃろ」
「お嬢?」
「あぁ、わしの知り合いの娘さんでな。わしよりも扱ってるものが専門的なんじゃ。そこならなんとかなるじゃろ」
「さすがじいさん!頼りになる〜」
とりあえずとばかりに詳細を決めると、商談は終わりとばかりに話の内容を変えてきた。
「そういえば、アイツは元気にしてるか?整備の神様は」
「あぁ、そういえば…じいさんとおやっさんは知り合いか。えぇ、元気にしてますよ。今回の要塞艦を作るにあたって、若いのを全員参集して気合いいれてるくらいで」
「なるほど…アイツと知り合って随分経つが、あのころからの仲間も僅かになったもんじゃ。そういえば、さっき何でも仕入れられるみたいに言っていたが…わしにも仕入れられないもだってあるんじゃぞ。それこそ、死んだ戦士の魂は常にソールドアウトじゃ」
「………」
「おまえたち…無事に帰ってこい」