課題
(10)居候は宇宙船と自分の関係を語り始める。 難易0 (5分)この判定は自動で成功する。ロールプレイしよう。
※居候は依頼を受けて仕事しているだけなので、それを告げた後は、
※宇宙船についての因縁語りのメインは養父と母になります
「くそっ! 俺をどうする気だ! お、俺を殺したらファミリーが黙ってないぞ!」
縛られたマフィアは青い顔をしている。
うーん、とマフィアを見下ろした養父はうーんと秀麗な顔を曇らせてからため息をついた。
「まあ、君の処理については後で考えるとして……時間がないからしばらく眠っててくれる? ……頼めるかな、ユーゴくん」
ちら、と視線を向けられて、既に猫の姿に戻っていたユーゴはのっそりと男に近づいた。
「ああ」
短く答えると、肩の触手を伸ばして男のこめかみに触れる。ひっと男が声を上げる間もなく、バチリという音と共に男が崩れ落ちた。
びくりと震えたカスミを見て、ユーゴが気まずそうに弁解する。
「死んではいない。弱い電流を流して気絶させただけだ」
「そ、そう……あの、ユーゴが義父さんに雇われていたっていうのは本当なの」
「……本当だ。お前が依頼人の娘だとは知らなかったけどな」
「ユーゴくんが、カスミちゃんのところにいたと知った時はびっくりしたよね。うん、積もる話は色々あるとは思うんだけど、急いでくれないかな?」
「わかった。もちろん、依頼の方が優先だ」
「悪いね」
義父はこんな時でも飄々とした雰囲気でにへらと笑っていた。その養父が腕を差し出すと、ユーゴが飛び乗る。
「コピーしたやつをここに入力すればいいんだよな」
「よろしく」
扉の横のパネルに触手を添えると、その先が端子のように変形してパネルに空いた差し込み口に刺さった。
「パスコードはハードウェアトークンに格納されていて、そのものを持ち出すのは難しかったから、コピーしたんだ」
「すごいね。君に頼んで良かったよ」
手放しに誉める養父の言葉に、ユーゴのひげがちょっと揺れたように見えた。
「……入力は終わった。が、開かないぞ?」
「うん、ここは二段階認証になっててね、パスコードだけでは開かない。……ここからは君の出番だよ、エリナ」
養父が声をかけるとカスミの母は暗い瞳を向けた。
「なぜ知って……いえ、どうしてこんなことをするの? 答えによっては協力するわけにはいかないわ」
「なぜ知ってるかと言えば、アイツに聞いたからだ。そして、どうしてかと言えば、アイツに頼まれたからだ」
答える養父の顔は常になく真剣で真面目だった。
「え……?」
母の黒い瞳に動揺が浮かんだ。
「アイツはずっと、君がここに残してきてしまったモノのことを気にしていた。最後までね」
「そんな……」
「だから、さあ、行こう、エリナ」
差し出された手に、母はおずおずと手をのせた。その手を恭しいと言っていいほどの優しさでパネルに触れさせる。と、パネルが一瞬光り、扉がぷしゅっと音を立てて開いた。
「俺はどうする?」
中へ入ろうとする父母にユーゴが声をかける。
「中でもしてもらいたいことがあるから着いてきてくれ」
「わかった」
「わ、私も行くわ」
状況に置いてけぼりのカスミは慌てて後を追う。
「義父さん! これはいったいどういうことなの??? どうして母さんが?」
「説明すると長くなるし、知ると面倒に巻き込まれるかも。だから、カスミちゃんには関わってほしくなかったんだけどなぁ」
「あなた、ここまで来て関係なくはないでしょう。……私も知りたいから説明して」
「そうだねぇ、でもその前に……」
手に持ったライトで照らしながら何かを探していた養父が、目的のものを見つけたらしく、それに触れた。同時に、ぱっとその空間に明かりが満ちた。
「ここは……」
眩しさに一瞬目を眩ませていたカスミが、目を慣らしてからきょろきょろと周囲を見回す。
「第二艦橋……」
ぼそり、と母が呟いた言葉に、かつて見たリヴァイアサンの設計図を頭に思い起こした。
「ああっ、第二艦橋ってこんな風になってたの……」
確かに、リヴァイアサンの閉鎖地区の心臓部である第二艦橋の扉は開かない状態だと聞いていた。中を見たのはだから初めてだ。非常時には戦闘指揮所としても機能するというそこには、多くのコンソールやシートが並んでいた。
「ユーゴくん、このコンソールの操作分かる?」
「帝国の古い型だな。一通りの基本操作は習ったことがある。ヘルプもあるから何とかなるだろう。何をすればいいんだ?」
「そうだね。まずは周囲の状況を映して。他の連中が来てたら面倒だ」
「OK。電力供給は予備電源から来てるな。カメラは……生きてないのが多いな。この程度だ」
壁面に穴あきのカメラの映像が映し出された。
「大分はぎとられちゃってるからね。まあ、ぱっと見た感じは来てなさそうだね。彼は仲間に通報したりはしなかったんだ。慌ててたのかな?」
鋭い目で画面を一瞥した養父は、ユーゴににっこり笑いかけた。
「ありがとう。画像はこのままで、急ごう。ここのセキュリティ設定は呼び出せる? 色々調べたいんだけど」
「ちょっと待て……出せたが、編集には管理者権限が必要だ」
「さっきのパスコードではいかないかい?」
「やってみる……」
触手が伸びて、扉の時と同じように端子に変形すると差し込まれた。
「コードは通ったが、こちらも二重認証になってるな。生体認証が必要だ」
「了解」
養父はコンソールから体を起こすと、母たちに向き直った。困ったような顔をしてほほ笑む。
「さて、エリナ、いや、エカテリーナ=メリディス殿下、あなたはどうしたい?」
養父の言葉に、母エリナは眉を跳ね上げた。カスミは戸惑うばかりだ。
「説明不足だと言っているでしょう。まず、あなたは何をするつもりで私をここに連れてきたの? アイツってオスカーのことよね。あの人があなたに頼んだことって何?」
「……アイツに頼まれたのは、さっき言ったとおりだよ。君がここに残してきてしまったモノを君に返してやってくれってさ」
母の眉根がさらに寄る。
「……確かに、最初、この町に来た頃は探していたわ。でも、もう諦めたのよ。結婚して、子供もできて、もう、忘れようと思った。そして、忘れていたのよ……」
「『だけど、彼女が夜、屋根の上からリヴァイアサンを見る目は悲しそうなんだ』……そう、アイツは言ってた」
「……そんな……」
「自分が君と結婚して子供まで作ってしまったから、無理に諦めさせてしまったんじゃないかって、アイツは君に負い目を感じてたんだ」
「そんなっ! そんなことないっ! 私はあの人と結婚して幸せだった!!!」
「俺も、そう言ったさ。君を手に入れておいて何を言っているんだってね……だけど、だからこそだったんだろうな……アイツはここに来る方法を探し続けて……そして、力足りずに倒れた。ひどい話だ」
「……まさか、そんなことを考えてたなんて……」
「ひどいのはその願いを俺に押し付けたこともだな。君を頼む。男の願いだ、と言われて断るなんてできないじゃないか」
はぁ、と憂鬱そうな息を吐きだす。
「私は頼んでないわ」
母は冷たい表情で言った。
「ああうん、男ってのは馬鹿な生き物なんだよ。ともあれ、ちょっと手を貸してくれるかい? 君の忘れ物を返したいんだ」
「……」
母は口を引き結びながらも手を導かれるままにパネルに乗せた。コンソールの表示が変わったのが、顔に反射する光で分かる。
「ここを、こう、して、こう、かな。うん、開いたよ」
声と同時に、何の凹凸もなかった壁の一部がパコンと開いた。
養父が恭しく手を引いて、母をその前に連れて行く。
「王族の最後の隠し場所。ここになければ、他を当らないといけないけど……どう?」
そこから取り出した箱の蓋を開けて、母に見せる。と、母の大きな黒い瞳からぽろりと涙がこぼれた。
「ああ……ああ……これよ。お母様が、大人になったら私にくれると約束してくれたもの……」
震える指で箱から何かをつまみ上げると、大事そうに胸元に握り込んだ。
「玉璽は要らないの?」
戸惑ったような養父の声に、母がきょとんとした目で見返す。
「何それ」
「えーっと、王様という証明? ハードウェアトークンみたいなやつ。これを持ってる人間が正統な王様だということが証明できる」
「え、要らないわそんなの」
涙も引っ込んで座った目になった母に、養父は頭を掻いた。
「王様として中央に返り咲きたいとかそういうのはない?」
「ないわよ、何それ、面倒くさそう」
「……てっきり、身分の回復もしたいのかと」
「……まさか、あの人もそんな誤解をしてたんじゃないでしょうね。私はちゃんと伝えてたはずなんだけど……ここにお母様の形見を残してきて、それだけが心残りなんだって。それが取り戻せないならせめて、お母様とお父様が亡くなった地で菩提を弔って生きていきたいって……」
「アイツ、ほら、口下手でおおざっぱだったから……」
カスミは実の父親のことを思い出す。確かに、言葉の足りないところはあった……。父さんったら……。
「私、あなたみたいな陰謀家じゃないのよ?」
「ははは、その評価はひどいなぁ……まあ、間違ってはいないけど」
ジト目で睨まれて、養父が苦笑いする。
「えーっと、じゃあ、どうするかな……」
考え込んだ養父に、ようやくカスミが口を開いた。
「あ、あの……状況を整理させて欲しいんだけど、ええっと、母さんってもしかして、40年前に死んだとされてる当時の第三王女?」
母がカスミに向き直って頷く。
「ええ、そうよ。このリヴァイアサンが墜落当時6歳だった第三王女エカテリーナ=メリディスというのは私のことよ」
「うわぁ……」
どこかいいところのお嬢様だったのではと言われてはいたけれど、まさか王女様だったとは。
「たまたま、乳母たちと船の別のところにいたから難を逃れたの。そして、乳母たちに連れられて脱出艇に乗って、そのまま宇宙船を乗り継いで、別の星へ逃げたのよね」
「それで、母さんのお母さん、ええと女王様?の形見を取り戻しにこの町へ?」
「ええ、身分回復とか全然考えてなったのだけど、ただ、自分のルーツはここにあると思ったから、よそで暮らしていくのはつらかったのよ」
「父さんはそれを知ってた?」
「あの人は、元々私の乳兄弟で、一緒に育ったの。だから私の気持ちに常に寄り添ってくれて……一緒に来てくれて……優しい人だったわ」
「知らなかった……」
呆然と呟くと、母はバツの悪そうな顔をした。
「ごめんなさいね。でも、もう終わった話だし、王族とかそんなの面倒なだけでしょう?」
「まあ、確かに……信じられないだろうし。うん、正直今も何のいたずらかな?たちの悪い冗談でしょ???とか思ってる」
ごく平凡な庶民として生まれ育ってきて、実は王家の血を引いた子で、みたいな話をされても困る。そういう病気になっちゃったのかな?って心配してしまうだろう。
「そうよねぇ」
母がため息をつくと同時に、養父が顔を上げた。
「うん、じゃあ、もう、色々なかったことにしちゃおう」
「「「はい?」」」
晴れやかな顔で言い放った養父に、一同目を丸くするのだった。
◇
(11)あなたは居候と重大な決断をする。その決断とは……? そして決断するために何をした? 難易5(20分)
以下の設定申請をします。
・養父の指示でリヴァイアサンのシステムから第三王女=母親の情報はすべて消し去った
・これにより母親はリヴァイアサンのシステムに対する権限も失った
・リヴァイアサンの閉鎖区画に対するセキュリティレベルは下げ誰でも入れるように開放した
・捕まえていたマフィアには猫が開けて何かをしていたところを追い払ったと言うように言い含めた
・マフィアの通報で仲間が大挙して駆け付け、しばらく彼らがリヴァイアサン全体を占拠するという事件が発生した
・が、玉璽を発見すると共に解放された
・閉鎖区画が解放されたため、スクラップ産業は息を吹き返している
・マフィアのボスは傍系の王族で、玉璽を手に入れた今、政治的な工作で忙しくなっている
・黒猫の依頼主についてはまだ気になっているのか、手配書自体はまだ回っている
重大な決断:別れ
決断するために何をした:お別れ会
「手配書、まだ回ってるんだってね」
「ああ、マフィアのボスってやつは随分と慎重なたちらしいな。まあ、そんなだからここまでのし上がれたんだろうけどな」
「……行っちゃうんだね」
「もう、依頼も終わって、報酬も受け取ったからな」
「……これで、お別れなんだね」
「……お前は……いや、そうだ、いつまでもここにいるわけにはいかないからな」
「そう、だよね……うん……」
「……母ちゃんたちと仲直りしたんだろ? 良かったじゃないか。みんなで仲良く暮らせよ」
「あり……がとう……、ユーゴも、元気で……ねぇ、最後にお別れ会、しない?」
「お別れ会?」
「うん、私、ユーゴの好きなものいっぱい作るよ。だから……私のこと、忘れないで、ね」
「……」
以下の前提変換で難易度低下を図ります。
・養父が資金提供の上手配もしてくれるので材料調達には困らない
・元気のないカスミを心配して母親が料理を作るのを手伝ってくれる
・場所も父母の家を提供してくれたので余計な邪魔は入らない
・食事会をにぎやかに盛り上げてくれつつも、最後は二人だけにしてくれる
行動宣言:養父と母親の温かい支援を受けて、お別れ会をおこない、別れを告げる。
難易度-3
最終難易度2
一時成功要素:
(一時)養父の巧みな話術:お別れ会が盛り下がらないように頑張ってくれた
(一時)母親の温かい励まし:沈み込みそうになるたびに引き上げてくれた
成功要素:
心に取り戻した家族の絆(パワー4):関係が修復できた家族を置いては行けない
会社での強い人脈(パワー6):仕事でのつながりもここにはあるの
中々の腕の家庭料理(パワー4):せめてこの時だけはあなたの好きなものを作ろう
中々のおもてなし技能(パワー4):精一杯の笑顔で送り出すから
ベテランフリーランス(パワー5):俺はただ、ここへは依頼で来ただけの人間(猫)だ…
ダイス:4、4、4、5で要1ヒット
MASTER◆結城由羅 > 4D6 → 1 + 1 + 1 + 5 = 8 (1/4-02:26:55)
5ヒット!
素晴らしいお別れ会だった。
最高に盛り上がったところで、お別れをどうぞ。
二人は夜の屋根の上で並んで座っている。前方には遠くリヴァイアサンがライトで照らし出されていた。新しく解放された区画の調査のためだろう。
「お別れ会、ありがとうな。こんなに楽しかったのは初めてだ」
ぼそり、とユーゴが呟く。カスミは涙をこらえて笑った。
「忘れられなくなった?」
「ああ、忘れられないな」
ユーゴの表情はわからない。猫のままだからだ。
「……ねぇ、最後にひとつだけ、お願い聞いてくれる?」
「なんだ?」
「人の姿で、抱きしめてくれない?」
「……硬いぞ」
「いいのよ、早く」
ユーゴは一瞬ためらうそぶりを見せた後、男の姿に変身した。人型の戦闘形態のため、四肢と胴は黒い装甲で覆われている。肌の色が見えるのは覆われていない顔の部分だけだ。
じっと、カスミはその顔を見つめた。
「顔は似てないのね」
「……誰に?」
「父さんに」
「そりゃ、そうだろう」
「でも、目の色はやっぱり同じ」
「そうか」
「ん……」
カスミが急かす様に腕を広げて、顎を上げる。
ユーゴは一瞬止まった後、そうっとカスミを抱き寄せた。
「ほんとだ、硬いね」
「……すまんな」
この腕が昔のように血の通った人間のものだったら良かったのに、とユーゴはぼんやりと思った。
成長処理:
心に取り戻した家族の絆(パワー4)
→ 修復された家族の絆(パワー5)
中々の腕の家庭料理(パワー4)
→ プロ並みの家庭料理(パワー5)
中々のおもてなし技能(パワー4)
→ 中々のおもてなし技能(パワー5)
ベテランフリーランス(パワー5)
→ エース級フリーランス(パワー6)
◇
(12)その後のあなたと居候を描こう 難易3(1日) この判定に失敗しても進む。
以下の設定申請をおこないます。
・町は新区画の開発で好景気に沸いている
・おかげで会社の業績も上向いており、養父やカスミの仕事も忙しい
・その一方で玉璽を手に入れたマフィアのボスの方はきな臭くなっている
・現政権がこの町で革命の動きがあるのではないかと調査員をひそかに送ってきている
・その関係で母親とカスミにも何かとばっちりがあるのではないかと養父は心配している
・それで、信頼できる人間(猫)に護衛を依頼することにした
・手配書? 姿を変えればいいんじゃないかな?
行動宣言:姿を調整して白猫に変わったユーゴが、養父に雇われてカスミの護衛のために戻ってくる。
一時成功要素:
(一時)きな臭くなってきた現政権とマフィア:家族にとばっちりが来ると困るよね
(一時)好景気で養父の懐も温かくなった:護衛を雇う費用は調整費込みで出せるよ
成功要素:
居候:人型戦闘形態への変身能力(パワー6):変身能力を調整すると外見の変更が色々できるよ。お金はかかるけどね
居候:エース級フリーランス(パワー6):依頼なら行かないわけにはいかないな?
あなた:修復された家族の絆(パワー5):お義父さんったら…本当にありがとう
ダイス:4、4、5で要1ヒット
MASTER◆結城由羅 > 3D6 → 4 + 5 + 3 = 12 (1/4-03:12:23)
2ヒット!
無事に舞台は整った。
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好景気に湧く町で忙しく働くカスミ。だが、時折寂しそうに空を見上げることがある。あの人はあの宇宙のどこかで元気に暮らしているだろうか……。
そんな日々のある日、カスミは養父に呼び出される。
「マフィアと現政権との間がきな臭くなっているから護衛を付けることにしたよ。そう、君も良く知ってる彼だ」
そういう養父の後ろから、白いふさふさした毛の猫が現れる。
え、どこの猫?
「俺だ」
その声には聞き覚えがあった。
「え。色も形も違うよ???」
「金さえ積めば調整してくれるところがあってな…」
「必要経費として出させてもらったよ」
へらっとした笑顔で話す養父に力が抜ける。
「もう、会えないかと思ってた」
「……仕事があればそりゃ来るさ」
「そっかー……そりゃそうだよねー……ええっと、よろしくね」
「ああ、よろしくな……」
カスミとユーゴの新しい日々が始まる。
◇
かくてゲーム終了だ。お疲れ様。
お疲れ様でした!