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T18編成メモ
ここは世界忍者国の燃料工場敷地内。
蝉の声がまだ聞こえる残暑の中、屈強な男たちがテントで大休憩をしていると
帽子を被った一人の女性がちょっと大きめのジャグを持って現れた。
現在、燃料工場では移築の為の解体作業に入っている。
これは燃料を少しでも増産するための効率化の一環として行われる、【理解・解体・再構築】の三段階の2段階目に当たる。
女性の姿に気がついた新人の屈強な男が、女性に声をかける。
「ようよう姉ちゃん、ここは解体中で立ち入り禁止だぜ?もし、誰かに会いに来たんだったら俺が相手に…」
下世話な事を言おうとした時に、女性は男の顔を見あげてニッコリと笑って空いていた片手で男の手を握る。
「お、話がわかるねえちゃ…っ!!ぐはっ!」
男の視界はいつのまにか女性の顔から地面へと変わっていた。これを第三者からみれば、男の身体が一回転して地面に伏せられることがわかるであろう。
周りでみていた仲間がおぉ〜という声でヤンヤヤンヤと囃したてる。
「な、何しやがる!このアマ!」
真っ赤な顔で怒り狂う男を女性はチラッと見て片手で抑えつけてると、ジョグを置いて帽子をとった。
「余の顔、見忘れたか!…なんちってなんちって♪」
「げげっ…その顔は…藩王さま…っ!」
男の顔がサッと青くなっていくのが、周りで煽っている仲間からもわかった。しかし、それすらも楽しんでいるようだった。
「仕事に熱心になるのはいいけど、女の子を口説く時はもう少し紳士的になったほうがいいかな」
ニカっといい笑顔で、抑えつけるのをほどくと男が立つの手伝って再び帽子をかぶると、周りで働いてる男たちに声をかける
「はーい、みんなお疲れ様!栄養満点のベマーラジュース(スポーツドリンク風)差し入れにもってきたよー!」
おぉ〜という声とともに休憩中の男たちが藩王のもとへと集まってくる。由羅は配置されていたテーブルの上にジャグを置くと紙コップを用意して集まった男たちに配っていった。
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男たちが汗ばんだ作業着を脱いで半裸状態でジュースを飲んでいるのを、眼福とばかりに由羅が見ていると作業小屋から中年の男が紙の束をもって由羅の傍へとやってきた。
「どうも、藩王さま。いつも差し入れありがとうございます。新しい作業員が失礼なことをして申し訳ありませんでした。しかし、お見事な”駆瑠流(くるる)”でしたね」
そういいながら、頭をさげる中年の男。彼の名前は本城といい、DC建設の部長で今回の燃料工場の解体を指揮していた。彼が話していた駆瑠流とは、忍法の体術一つであり関節を決めて投げ飛ばす忍法である。
「いやいや、こういう作業してるんだからこういうこともあるって。私的には楽しいからいいけどね。あの人には気にしないでって言っておいて」
視線をたくましい男たちへと流しつつ、本城の話を聞いていると左手を求めるように伸ばして
「この間はこの間で、ケンカの仲裁に”蹴露呂”(けろろ)で軽く双方とも吹っ飛ばしていたじゃないですか。あぁ…えっと、これが解体の時に判った各部品の磨耗率と交換時の効率のリストになります。現在、机上ではありますが、かなりの能率UPが見込めますね」
本城が紙の束を由羅へと渡すと、簡単に自分の感想を口にした。この男は、人狼領地出身で燃料工場の設計にも携わった家系の出だ。それがさらに世界忍者国の良質な金属を得ることでよい部品が効率化できることを口にしていた。
「ふむ…なるほど、じゃぁとりあえずこの資料は貰っていくね。差し入れも丁度無くなったみたいだし、また覗きくるね。」
チラッと資料を流し目すれば立ちあがり、もう一度汗を吹く屈強な男たちを眺めてニヤニヤすると本城に軽く手を振って解体現場を後にするのだった…。
ちなみに、わざわざ屈強な男たちが見れるのを選んで視察を行ってるという噂ではあるが…信じるかどうかは聞き手次第と言われている。
【記事内容】
◆新規12枠着用アイドレス、提出用テンプレート(全藩国必須)
10:世界忍者国
藩国イグドラシルURL:http://richmam.xtr.jp/neokingdom/?%A5%A4%A5%B0%A5%C9%A5%E9%A5%B7%A5%EB
藩国12枠着用アイドレス表URL:http://richmam.xtr.jp/neokingdom/?%A5%A2%A5%A4%A5%C9%A5%EC%A5%B9
(人:忍者猫:忍者犬 全て上記のURLに掲載しております。)
トウモロコシ畑(施設)用の枝
「さて、次の仕事はっと・・・って、おや?」
藩王としての仕事をこなしながら由羅が王宮の廊下を歩いていると、開きっ放しになっている部屋があった。気になりチラッと顔を覗かせてみると中では一組の男女が机の上の何かを見ながら話し合っているのがみえる。
「ねぇ、君たち何してるのかなぁ〜?もしかして、ラブラブとか?」
わけのわからない下世話な事をいいながらも、興味を持って二人に話しかけると部屋の中に入っていく。
「え、は・・・藩王様!そ、そんなじゃありませんよ!」
「あ、こんにちは藩王様。えっと、新燃料工場のパイプラインの配管図を眺めていました」
男女の反応の違いにくすくすと笑いつつも、二人の顔を眺めながら名前を思い出す。たしか、可銀の下で働いている技術者で今回は設計に携わっている二人であった。
「ほ〜新しい配管図かぁ〜。どう、効率よくなりそう?」
由羅が顔を覗きこんで配管図を眺めると、先ほどから真っ赤な顔をしていた女性があわてて髪を整えながらも図に指をさして説明をしはじめていく。
「えっと、最初は難航していたんですが久堂摂政からアドバイザーを紹介していただきまして。そのおかげで前のよりも効率のいい配管が可能になりました。大体配管だけで5%は効率が上がる計算になります」
「へぇーアドバイザーねぇ・・・初めて聞いた気がするYO」
「そうなんですか?先ほども二人でこの図をみて指導いただきまして。赤と緑のオーバーオールの兄弟の方なんですが・・・」
さすがに藩王が知らないのを不思議そうにリアクションをしながら男が二人組みの容姿を説明してみせる。すると、由羅は唖然としながらも、男の方に確認をするかのように自分の指を鼻の下においてみて。
「………もしかして、二人とも髭はやしてた?ちょび髭ぽいの」
「はい、はやしてました。やっぱりお知り合いだったんですか?」
「ま、まぁね…(いいのかなぁ…あの二人なんか連れてきて…)」
微妙な表情をさせながらも、図面の説明をうけると時計をチラッと眺めて
「おっと、もうこんな時間か。じゃぁ、後は頼むよ二人とも」
そういって二人の肩をたたくと、女の方に近づいて耳打ちするように囁いて
「お邪魔虫は退散するねぅ。ちゃんとゲットしないと後悔するねぅよ。ガンバってね」
藩王よりの耳打ちに顔をさらに真っ赤にさせて湯気まで噴き出す女性にクスクスと笑ってしまいながら、次の仕事に向かうために部屋を出て行くのであった。
世界忍者国の数多い弱点のひとつに燃料の消費があげられる。
現状において、戦闘に参加できる人数は14人を数え、共和国内でもそこそこのランクと言えよう。
其の上での、主な戦闘アイドレスは世界忍者である。この世界忍者は優秀ではあるのだが、その見返りとしての燃料消費は多い。
そこで、世界忍者国では燃料生産できる燃料工場のほかにも代用燃料という独自の技術を持ち始めた。
「みんな集まってもらったのは他でもない。今回、燃料工場を移築ならびにバージョンアップを仕掛けたいとおもう。」
関係者全員を集めた大会議において、シリアス顔の藩王結城由羅がそう言った。
「陛下、移築・燃料増産するのはわかりましたが主にどういう計画でするのですか?」
会議においてまるで決まっていたかのような質問をする摂政の濃紺。
「うむ、まず燃料工場を代用燃料技術の傍に移築。それにともない、各部品の再吟味と配管のしなおしにより増産の効率化をめざす。現状の20%UP、それが今回の目標なので各自少しでも効率が上がる方法を考えてくれてくれ。あ、ちなみに出来るだけ公害は無しの方向でだ・・・まぁ、公害を起こしてまで国を潤すのは皆の意見にはないと思うが…」
その言葉を聴いた何人かは、腕を組んで唸っていた。現状においても結構厳しい中で操業している。これを20%となると難しいものとわかっているからだ。
「とりあえず、予定地は海の傍にして海水を取り入れた水冷式の装置を追加する。そして、今の技術において部品作成でどこまで効率化ができるか部品作成の者と相談してほしい。」
ここから、燃料工場の増産にともなう移築計画が開始された。効率化の再計算を行うと、予想以上の回答がでてきた。
それは、燃料工場設立時では人狼領地の技術のみで作られたために現在の技術で使われる素材に対して約50%もの硬さに差がでたのだ。50%もの差が出るという事は、其の分部品を軽くしたり消耗部品においては長期間長持ちすることができる。
そして、全体をその素材で補えば代用燃料の技術にも発展性が見えるというものだった。
SIDE S
「…………呼んだ?神崎君…」
桂林怜夜が、おもわず声に出して呟くと近くで作業していた弓尾透が不思議そうにしていて
「どうかしましたか?団長。神崎くんだったら、人狼の面子に連れて行かれたじゃないですか。眠らされて…しかも簀巻にされて」
「あ、そうですよね…聞こえるはずないですよね…。いや、いつもの『どうしてこうなったー!』ってのが聞こえたような気がするんですよ。気の所為よね、気の所為…かなぁ…」
此処は世界忍者国特設会場。ここでは、世界忍者たちに忍者刀を配布するためにやはりイベントが開催されていた。ここで人狼傭兵と違うのは、お祭りというよりは研修会みたいなものになっている点であろう。
話にでていた神崎は本当ならこちらのサイドで忍者刀を配布する予定だったのだが、輸送用ヘリに乗ろうとした瞬間に話しかけていたくぅの手の内にあった注射器によって眠らされ人狼サイドのヘリに運ばれていった。
その一部始終を後ろから並んでヘリに乗り込もうとしていた怜夜は『なんかどっかの飛行機嫌いの軍曹さんみたい…止めようかなぁ…まぁ、面白そうだし…ま、いっか。いいですよね』と判断して今に至る。ちなみに、その彼は現在忍チャイナの格好でライブ中なのだが、彼女たちがそれを知るのはもっと後のお話。
「しかし…今回の忍者刀の配布って、研修会も兼ねてるから助かりますね。最近、『新しい世界忍法ができたのでみてください!』って投書が目安箱に多くてどうしようかなと思ってたんですよ」
世界忍法…それは、世界忍者が使う忍法である。通常の忍法もあるのだが世界忍者が使うので世界忍法と名付けられている。世界忍法の特徴は、古来より世界忍者に伝わる世界忍法に自分でアレンジを加えることができるという点である。なので、世界忍法とつけられる忍法の数はかなり多い。
基礎となる古来よりの世界忍法は、表の体術52系・裏の忍術48系そして、古来より文章化されていない口伝と言われる秘伝8系の計108なのだが、それにアレンジを加えた個人忍法が存在するのだ。
新しい世界忍法と認定されるには、世界忍者のハードルは高く設定されている。
・世界忍者として有益なもの
・忍法による資源消費が節約できるものが望ましい
・世界忍者国の信念に背かないもの
...etc
「まぁ、今回の忍者刀の配布である程度減るとは思うんですけどねー。ほら、あそこで練習してるのを新規登録しようとしてた人もいると思うんですよー」
そう言って怜夜が広場の方をみると、愛する旦那であるロイ・ケイリンが新しい忍者刀をもった世界忍者たちに使用方法の伝授を行っていた。背後には大きな壁が用意されているので、『釣り刀の法』を教えようとしているのであろう。
「この忍法で大事なのは紐でござる。紐の長さを間違えると足場として使っても引き上げられなくなるでござるから。ちなみに、拙者はこの忍法を使ってハニーの元に毎日通っているでござるよ」
「「はーーーい(くすくす)」」
そんな説明を聞いた瞬間の怜夜の動きはそれは早かった。弾丸を超えるスピードでロイの後ろへと回るといつの間にか持っていたハリセンがロイの頭を全力でひっぱたく!
「だれがハニーですか!だれが!」
その時、誰もが認める夫婦漫才(ただし、奥さんは否定)を始める二人の様子を遠くのフェンスから面白がって見る人物がいた。
「おー始まった始まった。やっぱりあの二人はこうじゃないとねー」
フェンスに寄りかかるように眺めているのは、本来ならば執務室で決裁を行っているはずの藩王結城由羅その人であった。キャッキャと喜びながら遠くの様子を眺めている由羅にある人物が気づくと由羅に声をかけてきた。
「藩王さま…たしか、決裁中じゃなかったんですか?あの部屋中にある書類の…」
「あぁ、徒理流さんか。あれ…あれは終わらせてきたよ?」
「…へ?終わらせてきたって…あの量をですか!?」
配布された忍者刀を腰に差した徒理流が声をあげて驚くのも無理はなかった。国内護民官用の決裁書を持っていく時にチラッと眺めただけでも普通だったら一日かかる量である。そんな量をあれから数時間で終わるとは到底信じられなかった。
「うん、だって〜ボケもツッコミもオモチャもいないんだもの。一人じゃやってられないから、ちょっと集中してこなしてきた」
「す、すごいですね…(ボケもツッコミもオモチャも…団長のことなんだろうなぁ…)」
「まぁ、集中すれば直ぐにできる量だったしね。ただし、5分集中したら1時間くらい集中できないんだけどねー」
「へぇ…(まるでどっかのヒーローみたいだなぁ…)あ、そうそう聞きたかったことあるんですけど」
そう言いながら徒理流が忍者刀を持ち出すと、柄の部分を見せるようにして
「ここの柄の所、なんか仕掛けしてないですか?説明書には書いてなかったんですけど、なんか仕掛けしてあるのが見てとれるんですが…」
「お、さすが徒理流さん。いいところに目をつけたねぅ。これは裏技ってほどじゃないけど、説明書にはワザと書いてないんだよね。極限状態でわかるみたいな仕掛けにしてるのよ」
そういいながら由羅が徒理流の持っていた忍者刀を持つと、柄の部分をカチャカチャと弄りだすと柄の部分が外れて中の物が由羅の手に握られる。それを見た徒理流は『あっ!』と【驚きの】声をあげた。
「これこれ、全員のにこれを入れてあるのよね。ちなみに祈願はもちろん生きて帰ってくること」
由羅の手に握られていたのは小さなお守りであった。このお守りが全ての忍者刀の柄の中にあると徒理流に説明すると、さらにお守りの中を開けて小さな粒のようなものを見せてみる。
「中に入っているのは乾燥させたベマーラの種。苦いけど栄養があるのよね。まぁ、非常食かわりかな…。世界忍者も人狼傭兵もみんな欠けることなく生き残って欲しいのよ。たとえ【世界のおわり】が近づいているとしても…」
そう説明する由羅の顔は国を背負う藩王ではなく、一人の女の顔だったと後に徒理流は語っている。
/*/
なお、忍者刀には番号を振っているのは先に説明したが、この番号の一ケタ台は世界忍者国に関わっているACEへの友誼の印として藩王自らの手によって譲渡されている。装備に関しては此処の自由なので、あくまで名誉的扱いなものも存在する。
シリアルナンバー:保有者
0000:御神体への奉納
0001:結城由羅
0002:くろじゃー
0003:佐々木哲哉
0004:大神重信
0005:ロイ・ケイリン
0006:桂林怜夜
0007:エミリオ・スターチス
0008:須田直樹
0009:優羽玄乃丈
0010:玖珂光太郎
以下略
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